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2024年度の診療報酬改定にて、地域包括医療病棟の新設が発表されました。本稿では、地域包括医療病棟の概要、導入における検討事項、メリットについて解説します。
2024年度診療報酬改定にて、「地域包括医療病棟入院料」が新設されました。新入院料の創設は、2014年度の「地域包括ケア病棟入院料」以来10年ぶりとなります。これは今回の診療報酬改定のテーマの1つでもある、高齢者救急をはじめとする地域医療の推進に向けて、救急受入、早期退院に向けたリハビリテーション、栄養管理、在宅復帰支援などの機能を包括的に提供する病棟を評価するものになります。急性期と回復期の双方の機能を持つような施設基準で、地域包括ケア病棟入院料よりも高い点数が設定されました。
2022年度の診療報酬改定を含め、重症度、医療・看護必要度の要件厳格化や新型コロナウイルス感染症による特例措置の終了に伴い、特に急性期において入院料の維持が困難になる医療機関が増加しています。単価が右肩下がりとなる急性期病棟から、入院期間中は原則一定の単価で推移する地域包括医療病棟への転換は、医療法人にとって収益の回復が期待でき、対象病床への転換が期待されています。
診療報酬改定の答申より、新設の基本的な考え方は以下のとおり記されています。
地域で救急患者等を受け入れる病棟の評価 |
第1 基本的な考え方 高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者に対する適切な入院医療を推進する観点から、高齢者の救急患者等に対して、一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することについて、新たな評価を行う。 |
(診療報酬改定 答申Ⅱ-2より抜粋)
高齢化が進むにつれ、特に軽度から中等度の高齢者救急患者が増加しています(図表1)。しかし、急性期病棟に搬送された場合、介護力・リハビリ力に弱い急性期病院では安静臥床が主流となり、その結果としてADLの低下や新規施設入所につながってしまうという課題が生じていました。急性期病棟への入院が要介護度悪化を引き起こす1つの要因となっていたのです(図表2)。
この課題を解決するため、地域包括医療病棟においては、救急搬送およびリハビリへの対応が可能であり、入退院支援・在宅復帰支援まで実施できるような、急性期一般・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟の間に位置するような役割が期待されています。
地域包括医療病棟の点数は、地域包括ケア病棟入院料1の2,831点(2024年の診療報酬改訂後の点数)よりも219点高い、3,050点となっています。入院14日までは初期加算150点がさらに追加され、3,200点となります。また、地域包括ケア病棟と異なり、包括範囲にリハビリテーションが含まれていないため、実施分のリハビリテーションの算定が可能となります。地域包括医療病棟にて算定される入院料、加算、包括範囲外で算定できるものは下記となります。
施設基準は、急性期一般入院料と地域包括ケア病棟の要素を融合し、リハビリテーションの要件が加わった内容となっています(図表3)。特徴としては大きく下記3点が挙げられます。
施設基準では、急性期充実体制加算や専門病院入院基本料を取得していない医療機関と定義されており、専門医療や高度な急性期医療を中心とする医療機関は対象に含まれません。その上で、地域で急性期疾患などの患者に包括的な入院医療・救急医療を行うために必要な体制を整備していることが条件になります。つまり、急性期を担う中小病院が想定されています。
重症度、医療・看護必要度は地域包括ケアより高く、急性期一般よりも低い基準が設定され、看護体制も看護配置10対1となっており、地域包括ケアの13対1よりも重篤な患者に対応できる環境が求められています。
軽度から中等度の高齢者救急患者の受け入れが主な目的となっており、退院後の在宅復帰が重要視されています。よって在宅復帰率は8割以上、平均在院日数は21日と、急性期一般と同水準で定められています。この高い在宅復帰を可能とするため、PT、OTまたはST2名以上の配置および、専任・常勤の管理栄養士1名以上の配置が施設要件となっています。さらに脳血管疾患などリハビリテーション料および運動器リハビリテーション料の取得医療機関であること、入退院支援加算1を取得すること、入院早期からのリハビリに必要な構造設備を有すること、病棟に入院中の患者に対してADLなどの維持・向上および栄養管理などに資する必要な体制を整備することも要件に含まれています。
積極的に高齢者の救急患者を受け入れることが求められており、受け入れ患者のうち、自院の一般病棟からの転棟割合は5%未満であること、入院患者のうち緊急搬送患者の割合が16%以上(必要度Ⅰ)または15%以上(必要度Ⅱ)であることが実績として求められます。
算定要件および施設基準より、地域医療包括病棟への移行が考えられるケースは次の3つがあります。
後期高齢者の緊急入院が多く、機能分化が求められている場合には、院内の一部の病棟の看護配置を「7対1」から「10対1」に緩和し、地域包括病棟に転換するケースが考えられます。ただし急性期充実体制加算および総合入院体制加算は取得していない場合で、救急医療の実績が十分である状態に限られます。
救急医療の実績を満たしており、リハビリ職や栄養関係職種の確保およびADLに関する実績評価が十分である場合は、看護配置も現状維持のままで、全病棟もしくは院内の一部の病棟を転換することが考えられます。
地域包括ケア病棟は、すでに在宅復帰機能は十分にあるため、救急搬送の受入が可能であり、救急医療の実績を満たしている場合に病棟転換が考えられます。既に看護配置加算(「10対1」相当)を取得している病院であれば、看護配置は現状のままで移行が可能になります。
移行後の入院期間における日当点の詳細については図表4をご参照ください。急性期一般と比較すると、入院から6-7日目に包括点数が上振れる想定となります。下記日当点の想定に地域包括医療病棟ではさらにリハビリテーションの算定が加わるため、平均在院日数21日が基準となる地域包括医療病棟への移行により、患者あたりの平均日当点は上昇する可能性があります。
病院の環境や状況によって検討ポイントは異なりますので、検討される際はぜひご相談ください。
厚生労働省保健局医療課 令和6年度診療報酬改訂の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00012.html
厚生労働省 答申
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00247.html
厚生労働省 令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001121291.pdf
診断群分類(DPC)電子点数表より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198757_00004.html
中央社会保険医療協議会 総会(第522回)議事次第 令和4年6月1日
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000945193.pdf