インドにおける個人所得税制

2014-04-01

インドにおける個人所得税の申告期限が近づいてきました。日本では1月1日から12月31日までの期間に対する所得について、翌3月15日までに申告書を提出することになっていますが、インドの個人所得税制では4月1日から3月31日までの期間について、翌7月末までに申告書を提出することになっています。一般のサラリーマンを例にとると、日本で適用される税率は10%から20%程度と思われます。一方、インドでは100万ルピーを超える収入には30%の税率が課せられるので、税負担も大きくなります。また、日本では所得からさまざまな控除が可能ですが、インドでは日本人駐在員に適用される所得控除がほとんどなく、その意味でも税負担は日本の2倍以上になるのが一般的です。

個人所得税のことは会社がやってくれるので、皆さんの関心は薄いと思われますが、何か税務上問題が生じた場合には、個人が税務調査の対象とりますので注意が必要です。特に日本人は、会社によっては車や家やホームリーブなどのさまざまなベネフィットが供与されており、給与水準は一般にインド人よりはるかに高いケースが多く、税務調査の対象になる可能性も高いと考えられます。また、インドの個人所得税制は毎年のように変更があり、取り扱いが明確化されていない項目などもあるため、訴訟になっている案件もあります。このため、個人所得税を会社に任せている場合であっても、会社または会計事務所が作成している申告書から、申告すべき所得の漏れがないかなど提出前に一度確認されることをお勧めします。

まず、日本人駐在員の申告書の作成に際しては、居住者ステータスを確認する必要があります。この居住ステータスによりインドで課税される所得の範囲が異なってきますので、その判定は非常に重要です。4月1日から3月31日までの間のインドの滞在期間が182日以上の場合、または60日以上インドに滞在しており、かつ過去4年間の滞在期間が365日以上であるの場合は居住者、それ以外の場合は非居住者となります。居住者は過去の滞在日数に基づき通常の居住者と非通常の居住者に分かれます。詳細はPwCインドで発行するインド投資ガイドに記載していますが、駐在3年目から4年目になると通常の居住者になる可能性があります。非通常の居住者であれば、インドで発生した所得のみが課税対象になるのに対し、通常の居住者の場合は全世界所得に課税されます。具体的には、非通常の居住者となる日本人駐在員の場合には、給与とインドの預金利息が通常インドでの課税対象所得となります。一方、通常の居住者となる日本人駐在員は全世界所得が課税されるため、これらに加えて日本で持ち家を賃貸して得た所得や、金融資産で得た所得など日本で発生した所得もインドで課税対象となります。また、通常の居住者に該当すると申告書に海外資産の明細を記載することが求められますので合わせて留意が必要です。そのほかに、会社が個人に車を貸与している場合は車の排気量に応じて課税対象になったり、家を貸与している場合は、実際金額か給与の一定金額のいずれか低い金額が課税対象となります。そのほかのベネフィットは会社の制度によってさまざまですが、課税対象になるかどうか慎重な判断が求められます。一方、日本で厚生年金や健康保険などの社会保険を支払っている場合は、インドの所得から控除できる可能性があります。税金が少なくなるので、社会保険が控除対象になっているか一度確認してみることをお勧めします。

主要メンバー

尻引 善博

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}