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DX先進企業への変革に向けた要因の調査レポート
多くの日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を重要アジェンダと捉え、さまざまな施策に取り組んでいますが、その成果は二極化が進んでいるようです。PwCコンサルティングでは成果を分ける要因を明らかにするため、2022年5月よりDXに関する2つの調査を行いました。
2022-11-09
多くの日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を重要アジェンダと捉え、さまざまな施策に取り組んでいますが、PwCでも企業の方と対話する中で、DXにより成果を発揮している企業と、思うように成果が出せずに停滞している企業に二極化が進んでいると感じています。
また、DXに成功した企業の中には期待を上回る成果を出している先進的な企業も見られることから、PwCコンサルティングではその成果を分ける要因を明らかにするため、2022年5月よりDXに関する2つの調査を行いました。
本レポートでは、その調査結果をもとに日本企業におけるDXの現状や、DXによる成果を実現する上で重要な要因について解説します。なお、PwCコンサルティングが実施した調査のそれぞれの目的および対象は以下のとおりです。
「企業に対する調査」から得られた「DXの取り組み状況」や「取り組み成果」を踏まえ、私たちは企業を「DX先進企業」「DX純先進企業」「DX後進企業」の3つに分類し、分析を行いました。
DX先進企業:AI・IoTなどの最新テクノロジーを活用した業務・製造プロセスのデジタル化、または新規事業やビジネスモデルの変革に取り組んでおり、期待を上回る成果が出ている企業(14.2%)
DX準先進企業:AI・IoTなどの最新テクノロジーを活用した業務・製造プロセスのデジタル化、または新規事業やビジネスモデルの変革に取り組んでおり、期待通りの成果が出ている企業(34.1%)
DX後進企業:上記以外の企業(51.7%)
デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業そのものの変革に取り組み、成果を創出した企業は約半数であり、DXに成功した企業(DX先進企業・DX準先進企業)と停滞している企業(DX後進企業)の二極化が生じていると言えます(図表1)。
14.2%の企業は期待を上回る成果を実現しているため、何がその要因となっているのか、回答結果を基に分析しました。
組織および人材に関する取り組みのうち、「DX先進企業」「DX準先進企業」「DX後進企業」で顕著に差が出たのは、以下の5つの要因についてです。
DX推進組織のパターンを確認したところ、DX先進企業においては「既存のIT部門を拡張」する傾向が高いことが分かりました(図表2)。これは、既存組織が有する人材や知見、事業部門との関係性を有効に活用してDXを推進できたためと推察されます。ただし、経営資源の保有状況により、適切な組織形態が異なることに留意する必要があります。
DX推進リーダーの出身を確認したところ、DXの成果が出ている企業ほど外部から採用している割合が高いことが分かりました(図表3)。
変革を実現するためには、DX推進リーダーには事業とDX(IT)に係る知見だけでなく、既存の組織・文化に捉われず、柔軟な発想で変革を推進した経験が求められると推察されます。
DX人材をどのような手段で確保しているか尋ねたところ、DX先進企業においては、既存のIT部門を拡張する割合が高いこともあり、どの職種も「既存の社員を育成して確保」する傾向が強いことが分かりました(図表4)。
また、DX先進企業はビジネス系人材について既存人材を育成する割合が特に高く、既存社員が保有する知識や経験を活かすことで、速やかな成果実現につなげていると考えられます。
DX人材の育成状況を尋ねたところ、DX先進企業やDX準先進企業はDX人材への育成の成果を実感できており、DX後進企業では成果を実感できていないことが分かりました(図表5)。
DX人材の採用競争が激化している現状においては、優秀な人材ほど転職しやすいため、計画的に人材を育成するだけでなく、社員に成果を実感してもらうことが重要と言えます。
なお、DX人材に対して、非DX人材をDX人材に育成していく上で重要なテーマについて尋ねたところ、「問題解決」「デザイン思考」「協働・リーダーシップ」が重要であると捉えていることが分かりました(図表6)。
これは、DX人材には特定の技術を実装することよりも、周囲の理解を得ながら問題を解決して成果を挙げることが求められていることを意味しています。
DX人材の定着状況を尋ねたところ、DX先進企業やDX準先進企業はDX人材が定着する傾向が強く、DX後進企業は定着していないことが分かりました(図表7)。
DX人材に対して「DX人材が入社を決定する上で重要と考える施策」と「DX人材が入社後、長くその企業で働いてもらうために重要と考える施策」を尋ねたところ、「明確なDXビジョン・戦略の策定」がDX人材が入社・定着する上で最も重要な施策であることが分かりました。「高待遇の給与体系の導入」や「能力の高い社員の評価・昇進制度」ついては、入社決定の施策としての重要度はそこまで高くありませんでしたが、長く働く上では重要な施策であるとする回答が多く、将来的なキャリアを描ける報酬・制度を用意できるかが、人材定着の観点で極めて重要と言えます(図表8)。
なお、DX人材に支払っている給与レンジを尋ねたところ、DX先進企業は3,000万円以上の給与を提示している企業が全体の28.6%もあることが分かりました。
これは、DX先進企業は極めて高いパフォーマンスを発揮するDX人材については、それに見合った手厚い評価・待遇を用意できていると推察されます(図表9)。
今回の調査結果から、私たちはDXにおける成果実現を分ける5つの要因を導き出しました。DX人材については採用競争が激化している状況にあります。その中でもDXによる成果を実感できている企業においては、DXに係る明確なビジョンや戦略を掲げた上で、既存社員のDX人材への育成と、DX人材の定着に特に力を入れていることが分かりました。
今後、企業がDXによる成果を実現していくには、DXに係る自社のビジョンや戦略をいかに伝えていくのか、自社内だけでは身に着けにくい知識や経験をどのように既存社員に積ませるのか、社員が将来的なキャリアをイメージできるような制度にどのように変革していくのかが非常に重要となるでしょう。自社でやり切ろうとした場合、過去の経緯にとらわれすぎてスピード感が出ないこともあります。そのため、外部のリソースもうまく活用しつつ、自社にノウハウや知見が蓄積できるよう経営が積極的にリードできるかが、DXの成否の鍵を握っていると言えるでしょう。
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