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2016-10-21
ここ数年、大企業によるCVC*ファンド設立が活発化しており、大企業によるベンチャー企業への投資が活況を呈している。その目的としては、ベンチャー企業への出資を通じた新規事業の育成や、ベンチャー企業との協業によるコア事業の強化といった、事業シナジーを掲げているものが多い。
各社とも積極的に投資を行っている一方で、投資後のベンチャー企業との協業促進という観点では、まだまだ手探りで取り組みを続けている大企業が多く、十分な成果を出せているところは少ないのが実態ではないだろうか。
当社では、CVCファンドを運用する大企業に対して、そのコンセプト設計から実際の運用実務のサポートまで、幅広いサービスを提供しており、筆者もこれまでに複数のCVCファンドの運用を支援してきた。その経験を通じて、CVCファンドは大企業にとって非常に有効なツールであると感じているが、一方で、成果を出すには一定の運用ノウハウが必要であるとも感じている。しかし、比較的新しい取り組みでもあるためか、国内ではCVCファンド運用実務に関する有益な情報が十分に提供されているとは言い難い状況である。
本稿では、大企業がCVCファンドを活用してベンチャー企業との協業を推進していく上で押さえておくべき5つの視点を提示する。本稿が、大企業によるCVCファンドの成功事例を積み上げていく上で、その一助となれば幸いである。
* CVC:Corporate Venture Capital
CVC(Corporate Venture Capital)とは、端的にいうと、事業会社が社外のベンチャー企業に対して投資を行う活動のことである(以降では、投資を行う「事業会社」をベンチャー企業との対比のために「大企業」と呼ぶ)。
図表1に示すように、大企業が資金を拠出し、自社と事業シナジーが見込めそうなベンチャー企業に出資を行う形態をとる。資金の出し手は通常1社であり(数社で共同出資することもまれにある)、CVCファンドの運用は自社の投資部門、または投資子会社で行うことが多いが、外部のベンチャーキャピタル(VC)に運用を委託することもある。
代表的な例としては、インテルのCVC部門であるIntel Capitalや、Google Venturesなどがあるが、IT業界以外でも、ヘルスケア業界ではNovartis Venture Fund、エンターテイメント業界ではDisneyのSteamboat Venturesなどが積極的に投資を行っている。
一方、KPCB (Kleiner Perkins Caufield Byers)やSequoia Capitalといった伝統的なベンチャーキャピタルが設立するファンド(VCファンド)は、複数の機関投資家・事業会社・富裕層(個人)などから資金を集め、投資領域は広範囲に設定することが多い。なかには投資領域を限定するファンドも存在するが、主目的はあくまでも財務的な(金銭的な)リターンを追求することである。
それに対して、CVCファンドの多くは事業シナジーが見込めそうなベンチャー企業に対して投資を行っており、そのアプローチは通常のベンチャーキャピタルとは一線を画していると言えるだろう。
【図表1】通常のベンチャーキャピタル・ファンドとCVCファンドの違い
日本においては、2000年代のベンチャー・ブーム時に、大手電機メーカーを中心にCVCファンド設立の動きが広がりをみせた。しかし、残念ながら、その多くは撤退や縮小することになってしまった。当時は、大企業が大手ベンチャーキャピタルにCVCファンドの運用を委託する形態が一般的であったが、その多くは金融機関系ベンチャーキャピタルであり、大企業との協業アレンジや新規事業育成に関するスキル・ノウハウが不足していたことが、十分な成果を残せなかった要因と言われている。一方、大企業側でも、ベンチャー企業との協業促進に適した人材が不足しており、十分な体制を作れていなかったことも要因の一つと言えるであろう。
それから約10年がたち、図表2に示すように、国内では2011年頃から再びCVCファンドの設立が活発化している。まずはIT企業や通信企業での設立が活発化し、その後、メディア企業や製造業、サービス業など、その動きは徐々に広がりを見せつつある。2000年代の取り組みでは大手ベンチャーキャピタルにCVCファンドの運用を委託する企業が多かったが、近年の取り組みでは、大企業が自らCVCファンドを運用するなど、より主体的に取り組むようになっている。結果として、投資先のベンチャー企業との協業のプレスリリースが発表される事例や、投資先ベンチャー企業を最終的に買収して自社サービスに組み込む事例が出てくるなど、成功事例も徐々に増えつつある。
しかし、一部の大企業では成果が出つつある一方で、CVCファンドを立ち上げはしたものの、まだまだ模索中という大企業の方が多いというのが、筆者としての実感であり、本稿を執筆するに至った理由でもある。
【図表2】国内での主なCVCファンドの設立状況(2010年以降)
ここでは、CVCファンドを活用してベンチャー企業との協業を推進していく上で押さえておくべき視点を提示したい。筆者は、これまでのCVCファンド運用サポートの経験から、CVCファンドを運用する大企業が成果を出すためには、以下の5つの視点を持って、自問自答を繰り返しながら運用していくことが肝要だと考えている。
(1) 目的は明確になっているか
(2) しっかりとした体制で臨めているか
(3) 投資先経営者との信頼関係を構築できているか
(4) 目標達成までのストーリーを持てているか
(5) マーケットサイクルを意識できているか
以降では、上記のそれぞれについて説明をしていきたい。
大企業がCVCファンドを設立する目的は何であろうか?これは、簡単なようで、実は難しい問いである。多くのCVCファンド関係者は「ベンチャー企業のアイデアを活用して新規事業を創出する」「ベンチャー企業との協業によりコア事業を強化する」といった事業シナジー追求を目的として掲げていると思うが、可能であれば、そこからさらに一段深掘りし、考えを深めてみることをお勧めしたい。
どのような新規事業を立ち上げたいのか?事業シナジーとして、具体的に何を期待するのか?対象となる事業領域はどこか、プロダクト/サービスに投資をするのか、要素技術への投資もOKなのか、人材獲得目的の投資もありなのか?それらを考えたときに、設立間もない(社員数人)のベンチャーも対象となるのか、事業が十分に回っているミドルステージ以降のベンチャー企業を対象とするのか?財務リターンはどの程度必要なのか?IPO(新規株式公開)レベルの高いリターンを狙うのか、(事業シナジーが主目的なので)ファンド全体で収支トントンでも良いのか?
「目的」の議論を深めることによって、上記のようなさまざまな問いに対して答えることができるようになり、結果として、投資対象のイメージがより具体化するのである。なぜこのようなことを勧めているかというと、投資対象のイメージが曖昧なまま取り組みを行うと、投資実務を行っている現場では、投資そのものが目的化してしまい、投資実績の案件数は積み上がるが、そもそも何をするためのCVCファンドだったのかわからないようなポートフォリオとなってしまう危険性があるからである。
これは、CVCファンド担当者の評価体系とも関係しているかもしれない。ファンドの多くは、運用期間が7~10年、そのうち投資期間は最初の3~5年、残りは投資回収(EXIT)の期間と設定されるため、最初の数年間は、CVCファンド担当者は投資件数で評価されることになる。結果として、現場担当者には、1つでも多くの投資案件を積み上げたいとのインセンティブが働くのである。そのため、本来の目的に合わない投資を避けるためにも、CVCファンド設立の目的を明確にし、しっかりとした投資対象イメージを関係者で共有することが重要となるのである。
次に、少し目線を変えて、CVCファンドの目的である事業シナジーと、ファンドとしての財務リターンの関係についても考えてみたい。CVCファンドが事業シナジーを主目的とすることは既に述べたとおりであるが、では、財務リターンはどの程度求められているのであろうか?
2008年にアメリカ国立標準技術研究所が実施した調査によると、図表3に示すように、実に70%のCVCファンドが事業シナジーと財務リターンの両方を求めていると回答している。これは、筆者が国内でCVCファンド関係者と接してきたときの感触に近く、国内でも同様の傾向にあると思われる。
このように「両方を求める」というところが実はくせ者であり、CVCファンド設立の「目的」が曖昧であると、CVCファンドにおける投資の意思決定においても判断がぶれてしまうのである。目的や投資先のイメージが曖昧なままだと、個別案件への投資可否を決定する投資委員会において「技術は良いけどもうからなさそう」「もうかりそうだけど事業シナジーが弱い」といった議論が毎回繰り返され、案件ごとに場当たり的な意思決定が下されていく(またはどの案件も意思決定できない)危険性があるのである。
そのような事態を避け、一貫性のある意思決定を行う上で、CVCファンド設立の目的や投資対象イメージを具体化することは非常に重要なポイントとなる。ただし、ベンチャー投資に不慣れな場合などは、具体的な投資候補案件を検討する前にCVCファンド設立の目的や投資対象イメージをしっかりと議論するのは難しいかもしれない。そのような場合は、最初から完成型を目指すのではなく、まずは暫定的に目的と投資対象イメージを設定し、実際の投資案件の検討を行いながら、徐々にブラッシュアップしていくといったアプローチも有効である。
【図表3】CVCファンドの狙い(2008年の米国での調査)
ベンチャー投資を行う社内体制と聞くと、投資業務経験者による少数精鋭の組織をイメージされるかもしれない。単純に投資するだけであれば、それでも良いかもしれない。例えば、投資後のベンチャー企業への関与は最低限にとどめておき、投資した会社の中から順調に成長する会社を見極めていき、期待通りに成長した会社を最終的に買収して子会社化し、それをもって「新規事業開発」とするアプローチであれば、少数精鋭のチームでも問題ない。
一方、投資後はベンチャー企業との事業シナジーを追求するアプローチを目指すのであれば、社内の体制をもっと充実させる必要がある。当たり前の話であるが、投資すれば事業シナジーが生まれるわけではなく、ベンチャー企業の経営者と協業の構想・計画策定から実行まで一緒になって推進するには、1案件について専任の担当者が必要となるであろう。協業が軌道に乗ってくれば、さらに人数を増やし、最終的には投資部門から独立した組織に発展することを想定しながらリソースを投入する必要があるのである。
また、もう一つ重要な視点として、ベンチャー企業との協業推進担当者をバックアップする体制も必要である。協業推進者は、事業シナジー創出におけるプロジェクト・マネージャーであり、ベンチャー経営者との窓口になるだけでなく、協業を推進するために、必要に応じて社内の関連事業部門への働きかけを行う。具体的には、ベンチャー経営者とともに具体的な協業内容のアイデアを議論し、協業案としてまとめる。次に、その協業案の実現のために、関連する事業部門にその案を説明しに行き、その気になってもらい、協業を実行するための担当者をアサインしてもらうのである(要するに事業部門への売り込みである)。その後は、ベンチャー経営者と事業部の担当者の双方の具体的なアクションを決め、プロジェクトを推進していく。
しかし、図表4に示すように、ベンチャー経営者、協業推進担当者、事業部門担当者、大企業経営陣にはそれぞれの思惑があるため、協業推進担当者はベンチャー経営者とのコミュニケーションに加え、社内の調整に大きな労力を割く必要が出てくる。筆者の経験では、社内調整の方に圧倒的に時間と手間を使うことになることがほとんどである。その際に、役員クラスなどの経営陣によるバックアップなどが無いと、事業部門からの協力を得ていくのは容易でなく、協業推進担当者が途中でくじけ、心が折れてしまうことにもなりかねない。そのうち、ベンチャー経営者にも「話が違う」「出資を受けていろいろ口出しされるけど、全然協力してくれない」という思いが生まれてくるリスクがあり、結果としてベンチャー経営者の協力を得るのが困難な状況に陥りかねない。
このような事態に陥ることを避け、事業シナジー追及を加速させていきたいのであれば、経営陣によるバックアップ体制も含め、関連する事業部門も巻き込んだしっかりとした体制を構築して取り組む必要がある。投資は進んでいるものの、事業シナジー創出にうまくつながっていないとお悩みの大企業の方は、まずは体制面で課題が無いかを検討いただくことをお勧めしたい。
【図表4】事業シナジー追及時に留意すべき各自の思惑
CVCファンドからの出資は、最初の段階ではマイナー投資になることが多いであろう(出資比率が高くなる場合は、CVCファンドではなく大企業本体からの出資となることが多い)。マイナー出資である場合、株主であるとは言っても、ベンチャー企業への影響力というのは、それほど大きくはない。株主なので話は聞いてくれると思うが、その程度なのである。もし役員を派遣する権利を得ていたとしても、多数決では簡単に寄り切られてしまうのである。
つまり何が言いたいかというと、ベンチャー企業と事業シナジーを追求していくには、(当たり前の話ではあるが)ベンチャー経営者との信頼関係を構築し、ベンチャー企業側にもメリットのある提案をしていかないと協業は進まないということである。そのためには、大企業側の協業推進担当者もしっかりと汗をかくなどして、ベンチャー経営者から個人としても信頼を勝ち得る努力をする必要がある。株主として上から目線で接するようなことがあれば、こちらからの提案は、間違いなく丁重にお断りをされることになるだろう。
また、もう一つ別の観点として、協業が非常にうまくいった場合について考えてみたい。そのような場合、大企業側では、協業相手(かつマイナー出資先)であるベンチャー企業の買収を検討したくなるであろう。その際に、ベンチャー経営者との信頼関係を構築できているか否かが、買収の成否を決めるといっても過言ではない。
協業がうまくいき、業績も良くなっているような状況であれば、ベンチャー経営者にはさまざまな選択肢があるものである。新しく別の大企業とも協業を始めることもできるかもしれないし、資金調達で新しい株主を迎えたり、株式公開を目指したりといったことも可能かもしれない。
つまり、ベンチャー経営者との信頼関係が構築できていないと、大企業が買収を考えるころには、ベンチャー企業はむしろ大企業から離れる方法を考えているという状況になってしまいかねないのである。もし、ベンチャー経営者が(自分の持ち株を売却して)お金を得たいと考え買収に応じてくれたとしても、信頼関係が無い状況であれば、買収完了後に、経営者や幹部社員などが相次いで退職するといったことが起こるリスクも出てくるであろう。もちろん、株式売買契約などでそういった事態を回避するための条項を盛り込んだりはするのだが、契約書だけでは現実的には限界があるものである。
そのような状況を避けるためにも、大企業側は、協業推進担当者に任せっきりにするのではなく、経営陣や幹部社員なども動員し、ベンチャー経営者との信頼関係構築に取り組むことを考えていくべきであろう。
ベンチャー企業と大企業の協業を円滑に進める上でもう一つ考えておくべきことは、協業を本格化するタイミングである。ベンチャー企業の一般的な成長過程は、図表5に示すようなものとなる。立ち上げて最初の1~3年(期間は企業により異なる)は、製品・サービスを開発して市場に送り出し、クライアントからのフィードバックを得ながら製品・サービスを進化させたり、ビジネスモデルを確立するためにさまざまな試行錯誤を繰り返したりする時期である。そこで手ごたえを感じたら、成長に向けて投資を行い、勝負をかけるのである。
協業相手がマイナー出資のベンチャー企業の場合、こちらの思惑とは別に、ベンチャー経営者としては、図表5の流れをいかに作っていくかに重きを置いているであろう。大企業の協業推進担当者としても、このような流れを理解しておくことは重要で、現在、協業相手はどの段階にいるのか。自社との協業を進めるタイミングは、今が良いのか、それとも相手が次の段階に到達するのを待って協業を進めるのが良いのか、協業に向けたストーリーを検討するのである。そして、そのストーリーをベンチャー経営者にぶつけ、双方にとってWin‐Winとなる協業までのストーリーを共有するのである。
もし、協業を急ぐよりも、ベンチャー企業が次のステージに到達するのを待った方が良いのであれば、大企業側は、ベンチャー企業側の成長を促すための支援を考えた方が、目的達成への近道かもしれない。ベンチャー企業が成長して企業価値が高まれば、大企業側としても保有する株式の価値が高まるため、株主としてサポートする意味があるであろう。
協業推進担当者が真面目であればあるほど、投資をしたからには早期に事業シナジーを実現しなければという意識が働きやすい。しかし、ベンチャー企業側は大企業が思う以上に社内リソース(主に人的リソース)が不足しているものである。まだまだ成長途上で、ビジネスモデルの確立も道半ばで、人的リソース不足の状態であるベンチャー企業に拙速に協業を持ちかけると、双方にとって大きな負担となりうることも十分に理解した上で、より戦略的に協業を行うためのストーリーを関係各位で共有することが、結果として目的達成の近道となるのではないだろうか。
【図表5】ベンチャー企業の成長過程(概念図)
ベンチャー企業への投資は、基本的には未公開企業への投資である。ここで留意していただきたいことは、未公開企業の株価も、マーケットの状況に応じて変動するということである。端的に言うと、日経平均株価が上昇してマーケットが過熱しているときは、ベンチャー企業の株価も割高となっており、日経平均株価が低迷しているときは、ベンチャー企業の株価も割安となっていると考えてよい。
具体的にいうと、1989年12月29日に日経平均の最高値を記録した後、大きく低迷。その後、2000年にITバブルでピークを付け、その後低迷。次のピークは2007年で、その後はサブプライムショック・リーマンショックで大きく低迷。現在は、2012年末から始まったアベノミクス相場で上昇を続けている。このように、7~10年程度のサイクルでアップダウンを繰り返しており、ベンチャー企業の株価も、その影響を大きく受けている。
純粋に投資目線で考えるのであれば、市況が低迷している時期に投資を行い、市況が回復したタイミングで売却(EXIT)すればよいのである。ベンチャーキャピタルが運用するファンドは、米国では、ワインになぞらえて「ビンテージ」という言い方をすることがある。つまり、「1997年物」は1997年に設立されたファンドで、「2010年物」であれば2010年設立という意味である。そして、ファンドのパフォーマンスがビンテージよって大きくばらついているのも事実である。株式市場が低迷した時期に設立されたファンドはパフォーマンスが高い傾向にあり(市況低迷で株価が安い時期に投資をし、市況が回復して株価が高くなったタイミングで売却できる)、好況時に設立されたファンドは苦戦するものが多い(株価が高い時期に投資を行い、売却したいタイミングには市況が悪化してEXITに苦労する)。
しかし、CVCファンドの主目的は、事業シナジーの追求である。株式市場の状況に左右されるのは、本来は望ましいことではない。ここで申し上げたいのは、株式市場の状況に過度に左右されるのは良くないが、一方で、市況を完全に無視するのもリスクがあるということである。
一般論として言えば、株式市場が過熱している状況では、新規投資は抑え目にした方が良いし、低迷している状況であればむしろチャンスと考えるべきであろう。ただし、市況が過熱している状況でも、事業シナジーの観点から投資を検討すべきこともあるであろう。その場合に重要なのは、ベンチャー企業の株価も過熱気味であるという現実を認識したうえで、それでも本当に投資する価値があるのかをしっかりと吟味した上で判断する必要があるということである。過度に市場に左右されず、かといって市況を無視することもなく、むしろ市況をうまく活用するくらいのスタンスで、事業側のニーズとのバランスを取ってCVCファンドを運用していくことが理想的である。
本稿では、筆者のこれまでの経験に基づき、CVCファンドを運用していく上で押さえておくべき視点について説明した。筆者は、大企業によるベンチャー企業への出資・買収による新規事業育成・既存のコア事業強化は有効な手段であると同時に、日本経済の活性化を促す重要な活動であると考えており、今後ますます盛んになってほしいと願っている。
一方で、まだまだCVCファンド運用を手探りで行っていたり、CVCファンドの設立に踏み切れずに躊躇していたりといった大企業も多いと感じている。このような取り組みを活性化するためには、先行企業による成功事例の積み重ねと、その運営ノウハウの蓄積・伝搬によって国内企業の知見を深めていくことが有益であると考えている。本稿が、大企業によるCVCファンドの成功事例を生み出す上で、その一助となれば幸いである。
青木 義則
PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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