これからのメディカルアフェアーズを考える

MAが組織を率いる時代

  • 2024-01-11

MA部門の変革を促す要因

Medical Affairs in the driver’s seat MA部門の変革を促す要因

1. 複雑化する新たな治療法

加速するバイオテクノロジーや医療分野でのイノベーションにより、細胞治療や遺伝子治療のような新たなモダリティが誕生しています。その結果、HCPや患者などすべてのステークホルダーに、複雑な作用機序、対象となる疾患や患者について説明する必要があります。また、新たな治療法は伝達情報の変化だけでなく、新しい治療の捉え方やケアの提供方法も生み出しています。

MAの意義:新たな治療法の本格的な導入には統制の取れた組織横断的な協力が必要であり、MA部門は組織内の各部署を結びつけるために大きな役割を果たします。

2. エビデンスに基づく差別化の必要性

治療法の選択肢が増えると、医師や患者による治療法の意思決定に時間を要するようになり、規制当局における審査は厳しくなります。これらに対応するため、製薬企業は、さまざまな医療関係者のニーズに合わせたエビデンスを創出する戦略を練り、実行する必要があります。さらに、共同研究モデルや革新的な臨床試験デザインなど、より革新的なエビデンスとその生成方法が求められています。

MAの意義:MA部門は臨床開発やトランスレーショナルメディシンと密に連携することで、これらの分野をリードします。

3. 変化するステークホルダーの期待

2020年にStrategy&がドイツで実施した医師調査によると、製薬企業との長期的関係を治療選択における重大な差別化要因として挙げた医師はわずか28%に過ぎず、従来の市場参入モデルが通用しなくなりつつあることが明らかになりました。さらに、デジタルコミュニケーションの機会が膨大に膨らむ一方で、より多くの科学的・医学的情報を求める医師が増えています。これらの医師側の変化に加え、営業部隊によるHCPに対するアクセスが年々制約されることで、製薬企業はHCPに対するエンゲージメントを見直し、質の高い医療情報に焦点を当てる必要に迫られています。また業界を俯瞰的に見ると、さまざまなステークホルダーが連携することにより、薬剤選択の意思決定が個人に依存せず、医師会や患者団体などにより多くの機会が与えられるような環境に変化しています。

MAの意義:MA部門はステークホルダーエンゲージメントの新時代において、主導的な役割を担う立場にあります。

4. デジタルトランスフォーメーションと豊富なデータ

社内外の情報源から利用可能なデータが急増していることで、MA部門は新しいツールを使用し、今までよりターゲットを絞って社外ステークホルダーを巻き込むことができるようになっています。例えば、保険請求、IoT機器、電子医療記録(EMR)、外部出版物、内部調査、RWDなどからのデータをリアルタイムに分析することで、MA活動を見直し、その結果を以前よりも目に見える形で最大化することができます。このような効率的なデータループに加え、デジタルプラットフォームのような新しい場を活用することで、ステークホルダーに対するエンゲージメントを向上できます。ソーシャルメディアの拡大など、新たなデジタル活用が、ステークホルダーと新たな方法で交流するインフルエンサーの出現につながっているのです。

MAの意義:国によって多少の差はありますが、今後データセットの一層の統合や部門が真に連携したオムニチャネル戦略の立案にMA部門は不可欠です。

5. ヘルスケアの変革

私たちの健康に関する考え、管理方法、経験は根本的に変化しています。“Future of Health”(2021)や “From healthcare to life care”(2023)の記事でも示すように、生物学的な理解の深まりと、利用可能なデジタルプラットフォームやその他のトレンドが相まって、2030年までには、ピープルドリブン、予防、個別化、デジタル化、そして日常生活との一体化を実現するヘルスケア環境がもたらされることが予想されます。

MAの意義:新しい規制、組織、ビジネスモデルがこの進化を促進していく中、MA部門は製薬企業を新しいヘルスケアの時代に導く立場にあります。

これらすべてのトレンドが、製薬業界を変えようとしています。今こそ、MA部門が製薬企業の戦略的な道筋を示すチャンスです。MA部門を導入するだけでなく、将来を見据えてMA組織の能力を最適化することが今後の成長の鍵となります。

※本コンテンツは、Medical Affairs in the driver's seatを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

執筆者

Thalita Marinho

Partner, Strategy& UK

髙山 量子

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

船渡 甲太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

前田 里菜

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

川口 健太

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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