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企業におけるデータ活用の重要性が増していくなかで、生成AIの急速な進化・発展の影響もあり、ビジネスシーンにおけるデータ活用の裾野がますます広がっています。
こうした状況を受けて、データ活用やデータガバナンスを推進する役割を担うCDO(チーフ・データ・オフィサー)を設置する企業が増えており、この流れは今後も加速すると思われます。
PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)でデータトランスフォーメーション(※1)をリードするパートナーの高橋功、マネージャーの澤村章雄が株式会社セールスフォース・ジャパンTableau事業統括部のディレクターを務める嶋ピーター氏をお招きし、CDOの実態把握アンケート結果(※2)をもとに、日本企業のCDOが今後進むべき方向性について語り合いました。
※1:データドリブン経営への変革支援を構想策定から一貫して支援するPwCコンサルティングのソリューション
※2:PwCコンサルティングとセールスフォース・ジャパンTableau事業統括部が2023年4月に各企業のエグゼクティブクラスに対して合同実施したCDO調査(n=400)
対談者
PwCコンサルティング合同会社
パートナー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
Technology Advisory Service
高橋 功
株式会社セールスフォース・ジャパン
Tableau事業統括 ビジネス・バリュー・サービス
ディレクター
嶋 ピーター 氏
(ファシリテーター)
PwCコンサルティング合同会社
マネージャー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
Technology Advisory Service
澤村 章雄
澤村:
セールスフォース・ジャパンTableau統轄事業部とPwCコンサルティングが合同実施したアンケートによると、CDOあるいはそれに相当する役割を設置している企業は国内でも50%を超えています。また、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)と兼務し、IT部門に所属していることが多いようです。欧米では専任であったり、CEO直下であったりするケースも多いのですが、この結果についてどのようにお考えですか。
高橋:
日本でもCDOが重要であるとの認識がかなり広がっており、欧米に追い付いてきたように思います。日本でCIOとの兼任が多いのは、システム視点でデータを管理してきたIT部門が役割を拡げる形でCDOを設置するケースが多いことが理由ではないでしょうか。かたや海外において専任やCEO直下が多いというのは、欧米では意思決定がトップダウンで行われることが多く、データの質や活用に対するトップ意識の違いがあるとも考えられます。今後はCDOの経営貢献の視点から、国内でも専任になっていく流れもあると見ています。
嶋:
兼務やIT部門所属の回答が多いのは、日本でのCDOというものの捉え方が幅広く、曖昧であることも理由の1つと考えています。データというのはそもそもコンピュータ用語ですが、ビジネス的には情報を意味します。だとするとCIOで良いはずなのに、なぜCIOやCTOがすでにいる企業がわざわざCDOという役割を設置しているのかというと、海外では「データはみんなで使えなければいけない」「データを集めた方がより価値が出る」という問題意識が強いのです。そのため、情報が社内のどこにあって、その情報をいかに活用できるかを考える明確な役割としてCDOが独立して存在しているのだと思います。
高橋:
そうですね。日本でのCDOは直面しているサイロ化の解決など、目先の課題解決に捉われている部分があるかもしれません。そうなるとどうしてもインフラやテクノロジー基盤の話に注力しがちになってしまいます。今後は、文化を含めた改革や、データと連動した、あるいはデータで高度化していくビジネスを設計することがCDOには求められていくでしょう。
澤村:
CDOの経験業務領域を聞くと、ITだけではなく、営業やマーケティングなどの業務部門出身の方も一定数いるようです。CDOにはデータをビジネスにつなぐ構想力も必要であることを考えると、バックグラウンドがITだけではないのも頷けます。また、生え抜きと外部招へいの割合はほぼ半々でした。お二人はCDO人材に必要な素養・スキルはどのようなものだと思いますか。
嶋:
発信力、変革力が必要だと思っています。さまざまな部門と連携してデータを見られる、活用できる環境と社内カルチャーの変革をコーディネートしていく必要があります。それにはビジネス・IT、フロント・バックオフィスなどさまざまな部門をつなぎ、組織全体をデータ駆動型の意思決定組織に導いていく、オーケストラで言うところの“指揮者”のような動きが必要になってきます。
高橋:
組織のカルチャー変革はCDOだけで進められるわけではないので、業務領域の各リーダーやマーケティングのCMO、あるいは経営企画部門、さらにテクノロジーを見てくれるCTOやCIOとつながる、ハブになれる人材は重宝されると思います。ただし重宝されるだけで権限がない状態では何も変えられない。外部の考え方を取り入れないといけないという課題意識から、最近は外部から招へいするケースも増えていますが、本当に大事なポジションにはなかなか配置しづらく、国内ではCEOをサポートする立場にとどまっているのが多くの現実的なレベルと思います。
嶋:
それでは続かないですよね。人事権や予算の権限を持たせないで「入ってください」「うちの会社を変えてください」という状況では、せっかく招き入れた優秀なリーダー人材が辞めていってしまう原因にもなり得ます。
高橋:
文化を変えるのはCDOのミッションであることはもちろんそうですが、やはり協力体制を敷いて、CDOを支えるという経営陣の意識改革もセットで必要になってきますね。
嶋:
外部招へいに関しては、今、地方の自治体もどんどん外から人を雇うことを始めています。そんな中で、外部招へいした人ともともと社内にいた人がペアで動いているところはうまくいっているという意見を伺っています。日本企業は古くからのお作法や誰にどのタイミングで上申するかが分かっていないとスムーズに物事が進まないケースも多く、そういった社内事情をよく分かっている生え抜きの人と密に連携して改革を進めることが、成功のパターンだと思います。
澤村:
CDOを設置している企業とそうでない企業の比較において、設置している企業ではデータ活用戦略の策定、データ基盤の構築および整備、あるいはガバナンス確立やセキュリティ対策が進んでいて、データ活用の準備が整ってきているようです。次の一手として取り組みを成功させる、あるいは成果を生み出すために、CDOは具体的に何に取り組んでいくべきでしょうか。
嶋:
まずデータは溜めるだけのものでなく、動かして価値を出すものであると捉えることが大事だと思います。日本ではストレージや保管場所という話になりがちですが、海外ではいろんなカルチャー、バックグラウンドの人が集まって仕事をするためか、データは共有するものという意識が強く、何かプロジェクトを始めるとなると、標準化から始めます。それもデータベースの標準化ではなく、通信プロトコルなどの情報のやり取りの標準化から始め、データを共有して価値を生み出しやすい土壌をまず整えていくのです。
高橋:
共有するという視点があると、自身が持つデータに対する自主性やオーナーシップも自然と生まれてきます。ドメイン単位のデータ活用は今後さらに加速するはずで、各ドメインが持つデータプロダクト品質の継続的な維持、メンテナンスも求められていきます。メッシュアーキテクチャのような分散管理形態への転換が、ビジネスで成果を生み出すカギとなるのではないでしょうか。
澤村:
別の側面として、情報やデータが一番企業を変えられそうな領域はどこだと思いますか。
嶋:
マーケティング領域で進んでいる、あるいは、進めやすいと思っています。デジタル化が進み、データ分析も活発に行われ、ビジネス価値への効果が分かりやすく、投資しやすいと考えています。特に新しいスタートアップ企業はその傾向が顕著です。そういった自社の中の強みとして、既に存在しているところから変革を進めていけると良いと考えています。さらにマーケティング領域の担当者はGDPRなどの規制への感度も高く、データのプライバシー保護にも意識が向いています。データはお客様のものであるという意識を持ち、保管するだけでなく、組織内の活用において、どのような形で付加情報が付与され、どこにどのような形で保管・活用されているかを追えるように、データトレーサビリティの仕組みをデータガバナンスの中で持つことが必要です。
高橋:
データの活用が進めば、同時に新たなリスクも出てくることになりますので、現場のリテラシー教育を継続しつつ、ガバナンスを進化させることも必要ですね。情報はデータから生まれ、さらに知識として昇華されていくものですが、利用面から言うと、今はデータと情報の境界が曖昧になっていると感じており、データマネジメントもデータだけに着目していてはだめで、本質としては情報も含めたインフォメーションマネジメントに取り組むべきだと思います。
澤村:
次々と新しいテクノロジーが登場する中、CDOはそれにキャッチアップし、取捨選択を判断していく必要があります。生成AIの登場による大きな変化の中でCDOあるいは企業のエグゼクティブ層に期待される役割も刻一刻と変化していくと考えられますが、何から着手し、どのような姿を目指すべきでしょうか。
高橋:
生成AIの活用、特にLLMに関しては既にPoCフェーズを終え、業務品質向上策として実務適用を始めている企業もあります。実業務に組み込む際に求められるのは、リスクだけでなく、品質と最終判断を含むガバナンスの仕組みです。アウトプット品質を決定づけるインプット情報と、ロジックであるプロセスの適切な利用・品質管理、そしてそれらを維持向上させる仕組み作りは利用ユーザの課題にもなりつつあります。こういった仕組みを作り、現場に定着させていく役割がCDOに求められていくでしょう。PwCコンサルティングとしては、新しいサイクルとそれを実行するプログラムを作って終わりではなく、クイックウィンで成果創出をしながら組織に文化を根付かせるパートナーとして、伴走型の支援を提供していきたいと考えています。
嶋:
AI時代においては、画像や音声だけでなく、さまざまな種類のデータを扱います。まさに新たな時代への変革期であり、役割の再定義なども進んでいくはずです。セールスフォースでは、数年前からTableau製品の領域をビジネスインテリジェンス(BI)ではなく、ビジネスサイエンス(BS)と呼んでいます。要するに、科学を使って業務を行えるように、AIも組み込みながら今まで以上にみんなが使えるツールへと製品を進化させているのです。さらに、ツールの導入を支援するだけでなく、組織文化の変革や従業員のリスキル定着をどういう順番で進めれば良いかということに関してはTableau Blueprintなど定着化のためのベストプラクティスを用意しており、CDOが組織内で変革のオーケストレーションを行うための心強いサポーターでありたいと思っています。
高橋:
オーケストレーションの要素の1つですが、CDOには各ドメインの業務をしっかりサポートしてほしいと思います。今後はデータの価値がどんどん上がっていきますから、そういった価値変化を自ら認めて、動いて、発展させていくことがエグゼクティブ層に求められるでしょう。