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2022-05-17
メタバース空間ですでに行われるさまざまなビジネス。その種類は、大別すると以下の2つに分けられます。
メタバースビジネスの概要を紹介した「【前編】既存のメタバース空間でビジネスを行う場合と、インフラやツールを提供する場合」に続き、後編ではメタバースプラットフォームビジネスを取り上げます。またメタバースビジネスとメタバースプラットフォームビジネスに参入するに当たって押さえておくべきリスクと、ビジネスの成否を分ける要因についても考えます。
既存のメタバース空間を使用する以外にも、メタバースに関するビジネスは存在します。例えば仮想現実(VR)用ヘッドセットをリースしたり、メタバース空間そのものを構築・提供したりといったことが挙げられます。広義には、仮想通貨の発行やマーケット運営も含んでよいでしょう。多くのメタバース空間では独自の仮想通貨を発行しているため、メタバースとは切っても切り離せない関係です。また投資収益を目当てにメタバース空間で活動する人のために、不動産売買をはじめとするメタバース関連金融商品の取り扱いも増加するでしょう。以下に主な例を紹介します。
メタバース空間を構築し、提供する事業を指します。構築のみ請け負う場合や、運用を請け負う場合も想定されます。多くはメタバース空間独自のコインの発行も兼ねることになり、通貨発行からの収益を見込むことができます。前編で触れたデジタルツイン専用のプラットフォームが登場する可能性もあるでしょう。
メタバースを利用するには、空間に没入するための各種デバイスが必要です。VRヘッドセットの販売やリースなど、デバイスを企業や個人に提供するビジネスが今後拡大すると考えられます。
メタバース空間で入手したアイテムやコインを売買できるマーケットの運営ビジネスを指します。オンラインゲームやスマートフォン用アプリですでに活況を呈しているリアルマネートレーディングの発展形とも言えるでしょう。
話が少しそれますが、米国コロラド州知事が、同州の税金支払いに暗号通貨を受け入れると発表しました*1。メタバース空間で得た収入を現実の世界での支払いに利用するという未来は、そう遠くないのかもしれません。
今後メタバース関連のビジネスが拡大することは、情報ニーズが高まることを意味します。つまり、メタバース空間上のコインの価格やデジタルアセットの売り出し状況などを、即時に提供するサービスが重宝される可能性があるのです。特に不動産価格は激しく変動することが予想されるため、情報ニーズは特に高いでしょう。メタバース空間では次々と新しい事業が始まるので、それらを網羅した情報も必要になります。
メタバースは新しい領域であり、今後さまざまな分野にどのような影響を与えるかは未知数ではありますが、企業にとって重要なビジネスチャンスであることに変わりはありません。参入を検討する企業はまず、参入する上でのハードルとリスクを押さえておくべき必要があります。簡単ではありますが、現時点で見えている主な情報を共有します。
一般的に参入障壁は低いと考えられます。メタバース空間を提供する側も多くの事業者の参入を促進しようと考えていますので、安価にビジネスを開始することができるようになるでしょう。ただし、参入障壁が低いということは、競争が激しくなることをも意味します。たくさんの事業者が参入する中で、自社のサービスを選んでもらうための差別化は必須でしょう。
現在のメタバースは、管理者のいない経済基盤に支えられているものが少なくありません。管理者が明確でない仮想通貨の使用によって自社に想定外の経済危機が及ぶ可能性もあるため、法規制の動向のモニタリングやメタバース空間の管理者の信用調査などは、常に留意しておくべき事柄でしょう。
メタバースプラットフォームビジネスに限った話ではありませんが、インフラやツールを整備するには初期投資が相当額かかり、運用・管理のための人材採用・育成へのコストも多額となることが少なくありません。さらに留意すべきは、この分野に関しては先行している強力な事業者が存在していることです。デバイス提供なら大手テクノロジー企業が、金融商品なら金融各社が仮想通貨をETF商品化して扱い始めています。これが軌道に乗れば、メタバースのコインもETFになる可能性が高くなり、既存の金融インフラと顧客を持つ金融各社の優位性は明らかです。どのような事業を扱うにせよ、参入を検討する場合は事前の計画策定とリスク評価が不可欠でしょう。
また参入後は、法規制への対応を常に念頭に置く必要があります。一般的に新しい事業領域の成長に法規制はなかなか追いつくことができませんが、事件や政策の変更によって規制が急に厳しくなることは往々にしてあります。
ユーザーを囲い込み、情報を収集して、ユーザーにとっても自社にとっても望ましい行動へと導く――。これが、今までのインターネットビジネスの成功要因でした。では、メタバース関連ビジネスの成功要因とは何でしょうか。利便性のよさと言う人もいれば、魅力的なコンテンツと言う人もいます。さまざまな意見がありますが、要するにまだ分かっていませんし、予想することは困難でしょう。先行するメタバース事業者のどこかが法則を発見して、マーケットの覇者となって初めてはっきりするというのが筆者の見立てです。
とはいえ、手をこまねいて待っているわけにはいきません。変化の激しい時代にビジネスチャンスをつかむには、積極的な情報収集とアクションが必要です。インターネットビジネスが広がりを見せつつあった2000年代前半、Meta(旧facebook)はどちらかというと後発で参入した部類に入ります。それが今日の成功を導いたのは、実名登録というユニークさによって莫大なユーザーを抱えることができたからでしょう。自社ならではの強みを明確にしつつ、率先して事業基盤を整える。こうした姿勢が、目の前のビジネスチャンスを生かすことにつながるのではないでしょうか。状況は刻々と変わります。今後も本インサイトを通じて、最新のチャンスの萌芽を伝えてまいります。
*1 2022年2月24日、https://twitter.com/GovofCO/status/1496545511469367306