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2018-09-26
「ワークライフバランス」は、ミレニアル世代にとって極めて重要な要素です。PwCが実施したアンケートによると、男女共に97%が「重要である」と回答しています。女性が求めるワークライフバランスは、出産や育児との両立と見なされがちですが、ミレニアル世代の女性の大半が未婚かつ子供がいないにもかかわらず、「ワークライフバランス」と「柔軟な働き方」を求める傾向が強く現れています。今やワークライフバランスの問題を、出産や育児などのライフイベントを前提に捉えるのは、時代遅れと言ってもよいでしょう。
このような意識変化は企業にとって重要視せざるを得ないもので、組織文化にかつてない大きな変化をもたらす原動力となる可能性があります。そもそも企業がワークライフバランスを実現できる環境にあれば、ライフイベントによるキャリアの断念や家事の役割分担など、女性が抱える問題も解消されることでしょう。また、ワークライフバランスの導入が進むことで、将来的には共働き家庭がさらに増えると見込まれています。
昨今ニュースなどで取り上げられる「働き方改革」は、前述した女性が働きやすい職場環境づくりに加え、残業時間の短縮や生産性の向上に目が向けられています。しかし、これらは働き方改革を考える上で、ごく一部の要素に過ぎません。実際には、組織が目指すビジョン・戦略をゴールに据えた改革が求められています。具体的な施策としては、大きく4つの側面からのアプローチがあり(図1)、これらに総合的に取り組んでこそ、本質的な改革を成し遂げることができます。
「テクノロジーと設備」では、パブリックスペースなどのオフィス環境の変革や、テクノロジーを活用したコミュニケーションの変革が挙げられるでしょう。「ルールと制度」では、子育て支援や兼業、副業など、柔軟性のある人事制度をつくる動きが加速しています。「組織構造と業務プロセス」は、AIやロボティクスに関わる部分で、自動化によって業務内容が変化するため、組織のあり方や業務プロセスの改革も必須です。では、人が担うべき仕事は何か──これが「人材とカルチャー」に関わる部分です。かつての日本企業は終身雇用制・新卒一括採用で、人材の育成も一律の施策で十分でした。しかし今後は、柔軟に個々の社員に対応していく方向に進んでいくでしょう。
【図1】本質的な働き方改革のためには総合的な取り組みが必要
働き方改革で企業が目指すべきビジョンは、大きく三つに分かれると考えられます。一つ目が「生産性の向上」、二つ目が「イノベーション創出」、三つ目が「ダイバーシティ&インクルージョン」です。組織の優先順位によって、ビジョン達成に向けた具体的な施策も変わってきます。
例えば「生産性の向上」を重視するのであれば、意思決定のプロセス改善や会議体の見直しに加え、デジタルコミュニケーションの強化などが優先すべき施策です。「イノベーション創出」であれば、外部提携先との協働プロジェクトや異業種からの人材採用、またオープンスペースなど柔軟なワークスタイルも有効です。「ダイバーシティ&インクルージョン」では、ワークライフバランス支援の制度や属性の異なる人材採用施策、多様な雇用形態の整備などが求められます。以上のように、ただやみくもに「働き方改革」を推進するのではなく、将来的なビジョンを見据え、それを達成する手段として戦略的に組み立てていくことが重要です。
【図2】組織が目指すビジョンによって施策の優先順位が変わる
第4回は、未来の働き方がどう変わるのかを4つのシナリオに沿って整理した「2030年の組織運営─4つのワールド・オブ・ワークの特性」を取り上げます。働き方に影響を及ぼすグローバルな要因に基づいたシナリオは、企業あるいは個人としてのビジョンや課題に気づきを与えてくれます。
佐々木 亮輔
PwCコンサルティング合同会社 パートナー
15年以上にわたり日系グローバル企業の本社と海外拠点において日本人および外国人経営幹部を巻き込む変革コンサルティングに従事。本社機能の再編、地域統括会社の機能強化、バックオフィス機能の組織再編と業務改革、海外営業組織の再編と能力強化、M&A(DD/PMI)、海外経営幹部の選抜と育成、チェンジマネジメント、組織文化改革など国内外のさまざまな変革プロジェクトの経験を持つ。シンガポールとニューヨークでの駐在など海外経験が豊富で、日本だけでなく、アジアや欧米のベストプラクティスに精通している。タレントマネジメントやチェンジマネジメントに関する講演や寄稿も多数。
※法人名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。