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2023-03-20
ここ数年、「ジョブ型」という言葉をメディアでも多く目にするようになりました。日立製作所は2024年度までに国内外の37万人の全従業員に対して、ジョブ型を適用することを予定しています。富士通でも2022年4月に、国内外グループの約9割である11万人にジョブ型を適用することを発表しました。その他、多くの大手日本企業がジョブ型へとシフトしています。
では、なぜ「ジョブ型」がここまで脚光を浴びるようになったのでしょうか。その大きな理由の1つに、人材マネジメントのあり方が変わってきたことが挙げられます。ジョブ型雇用という言葉を使われることがありますが、現在のジョブ型シフトを表すうえでは正確な表現ではありません。なぜなら、雇用自体は各社員の入社時点での雇用契約に基づくものであり、会社が専権的に変えられるものではないからです。
多くの日本企業が変革しようとしているのは、人材マネジメントです。かつての成果主義のように人件費の適正化などのコスト効率を主目的とするのではなく、より戦略的に人材を活用することを主目的としていることです。
ある大手日本企業では、事業戦略に基づく適時・適所・適材の実現を大きな目的の1つとして「ジョブ型」を導入しました。いかに素晴らしい事業戦略であっても、それを支える組織・職務が適切に設計され、タイムリーに人が配置されなければ、絵に描いた餅となります。かつては、そこまでカチッとしたものでなくとも、勤勉さとチームワークで乗り越えてきた部分は多分にあったと言えるでしょう。しかし、世の中の変化のスピードが高まり、競合には日本の大手企業だけではなく、海外企業やベンチャー企業までもが含まれるようになりました。事業戦略の成否は、戦略の優劣だけではなく、スピードや実行力に大きく左右されるようになっています。この大手日本企業では「ジョブ型」を、事業戦略と人材を無駄なく的確に結びつけるための仕組みと位置付けたのです。事業戦略を職務に落とし込み、その職務要件にあった人材をタイムリーに配置することこそが、競争優位性につながるというわけです。昨今のジョブ型導入企業においては、このように事業成長や転換などを後押しするための仕組みと位置付けているケースが確実に増えています。
これまでの日本企業における人材マネジメントはフロー型の人材マネジメントが一般的でした。採用から定年退職までを1つのラインとし、配置や評価・処遇、教育などの施策が分業的に流れていくイメージです。定期人事異動や年次昇格管理、階層別研修などは、典型的なフロー施策と言えるでしょう。いま「ジョブ型」を志向する日本企業が目指しているのは、ストック型の人材マネジメントです。職務(ジョブ)を核として、今この瞬間において、職務にマッチした人材を採用し、配置することです。そして、職務(ジョブ)に応じた評価・処遇・育成を行うことで、現時点での職務パフォーマンスを最大化させるのです(図表)。
図表:人材マネジメントのパターン
これからのジョブ型人材マネジメントはさらに次のステージへと進みつつあります。ある企業では、職務をもとに全社で必要なスキルを棚卸しし、現状の人材に足りないスキルを中心にアップスキルやリスキルのための大規模な投資をはじめています。また、別のある企業では、ピープルアナリティクスを活用し、リアルタイムに職務との適性を判断し、配置転換を機動的に行おうとしています。さらに別の企業では、事業戦略の変更に伴い、求められる職務やスキルを即座に更新し、人材データベースからAIが人材配置のレコメンデーションを出すということにも取り組んでいます。かつてのジョブ型雇用は、職務記述書のメンテナンスなどに代表されるように重くて遅いものでしたが、速くて軽いものへと変わってきています。そして、このジョブ型人材マネジメントこそが、事業戦略の成否の大きなカギとなりつつあるのです。今後もこの「ジョブ型」の流れは止まることはないでしょう。その根底には、単なるブームというだけではなく、人材マネジメントのあり方そのものが大きく変わりつつあることを押さえておく必要があります。