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近年、パーパスを掲げ、パーパス経営に取り組む企業が増えてきています。まさにパーパスが「流行」している状態と言えるでしょう。約20年間、組織・人材に関するコンサルティング業界に身を置くPwCコンサルティングの吉永裕助が、PwCが発刊するstrategy+business誌に掲載された「The purpose of “purpose”」という記事を題材に、ビジネスにおける流行に共通する「落とし穴」について解説します。
PwCコンサルティング
吉永 裕助
2019年8月19日、米国の主要企業が名を連ねる財界ロビー団体のビジネスラウンドテーブルが「企業の目的に関する声明」を出しました。本稿で紹介する記事の執筆者であるAdam Bryant氏は、「パーパスドリブン企業」というフレーズが、「戦略」や「前進」の地位を脅かすほどビジネスシーンのいたるところに出没するようになったと述べています。そして確かに日本においても、「パーパス」を掲げ「パーパス経営」に力を入れる企業が増えてきています。
組織・人財に関するコンサルティング業界で長く活動していると、現在の「パーパス」がそうであるように、多くの企業が同様のテーマにこぞって取り組むという「流行」に触れる機会が多々あります。ほかに流行になったテーマの例として、「グローバル」「デジタル」「エンゲージメント」などが挙げられるでしょう。
流行するテーマには、その内容に関わらず、共通した落とし穴があると感じています。その落とし穴とは、「目的の欠如」や「目的の共有の希薄さ」です。そこにはさまざまな要因があると思いますが、流行することにより、関係者が「取り組んで当たり前」という意識を持ったり、「取り組む目的は分かっているだろう」と思い込んだりするため、目的意識が希薄化してしまうのだと思います。
「御社が、〇〇〇〇(流行テーマ)に取り組む意義、目的はどのようなものですか」という質問をクライアントにした際に、明確な回答が返ってこないことや、クライアント内の関係者間の認識が一致していない状況に直面することも少なくありません。そのテーマに取り組むことが目的になってしまい、「なぜ取り組むのか」という本質的な目的が認識されていない、または共通認識として醸成されていないのです。
では、パーパスの目的とはどのようなものでしょうか。
Adam Bryant氏は、「ビジョンが企業固有のものと感じられること、支持すべき現実的なデータや詳細情報があること、企業自体より大きなものに直接貢献しているという意識を全ての従業員が持てること、それが『パーパス』の目的なのです」と述べています。
また、Adam Bryant氏は、「パーパスの再検討には時間と労力がかかります。多くの企業は課題に向き合わず、行動の裏付けなしに『パーパス』という言葉だけを使っています。自社が世界を良くする、あるいは同様の表現を口にするだけでは何の意味もありません」とも、述べています。
Adam Bryant氏が述べているパーパスの目的を実現するには、掲げるパーパスの内容そのものだけでなく、企業とステークホルダーとの対話が重要であることは言うまでもありません。企業がパーパスを実現するためには、パーパスそのものだけでなく、パーパスに取り組む意義、目的についてもステークホルダーと継続して対話していくことが重要です。
さて、あなたの企業にとって、パーパスに取り組む意義、目的はどのようなものでしょうか。あなたが考えている取り組む意義や目的と、同僚が考えているそれは同じでしょうか。
著者:Adam Bryant
2021年12月1日
2021年の流行語は「パーパス」。ただし、パーパスに意味を持たせるには厳密な検討が必要かもしれません。
2020年が危機の連続(新型コロナウイルス感染症、ジョージ・フロイド抗議運動など)により、企業の回復力と混乱を乗り切る能力が問われる年だったとすれば、2021年は「パーパス」の年と言えるでしょう。企業はパーパスステートメントを盛大に掲げ、「パーパスドリブン企業」というフレーズが、「戦略」や「前進」の地位を脅かすほどビジネスシーンの至るところで散見されました。
「パーパス」の大流行には、多くの理由があります。株主の利益ではなく関係者の利益を優先する資本主義へと時代が移行する中、従業員は自分の仕事と雇用主に何らかの大義名分があることを望んでいます。コロナ禍によって多くの人が働く「理由」を考えるようになり、それに対する不満が「大退職時代」の一因となりました。企業は貴重な人材を獲得するため、単に投資家のためのお金を稼ぐことより、高尚なビジョンや理念をアピールするようになったのです。
Adam Bryantは、経営者の能力開発とメンタリングサービスを提供するExCo Groupのシニアマネージングディレクター。次作の著書『The Leap to Leader: How Ambitious Managers Make the Jump to Leadership(仮題:リーダーへの飛躍:意欲的な管理職が経営幹部になるには)』が2023年7月、Harvard Business Review Pressより出版されました。
※strategy+businessに転載された記事は、必ずしもPwCネットワークに属する企業の見解を代弁するものではありません。発行物、製品、サービスのレビューや引用は、それらの宣伝や推奨ではありません。strategy+businessは、PwCネットワークに属する特定の企業が発行しています。strategy+business誌が発行する英語の原文からの翻訳はPwCコンサルティング 組織人事コンサルティングチームが取りまとめたものです。