スキルベースによる組織変革/Skill based organization

データドリブンのマネジメント再構築とエンゲージメント向上

  • 2024-03-12

1.人材マネジメントの抜本的な再構築の必要性

ビジネス環境が急激に変化しているなか、経営や事業に寄与するHR領域についてもスピード感をより意識し、抜本的な変革が必要なタイミングとなってきています。PwCはHR領域の変革を「ビジネス構造の急速な変化」「人口動向の変化・多様化」「AI・テクノロジーによる業務改革」「働き方改革の推進」の4つの視点からとらえ、企業の競争力(事業持続性)の維持に必要となる人材マネジメントの抜本的な再構築が必要であると考えています。

また、雇用者と労働者の双方にとって、スキルファーストによる解決策(人事的施策)が最も効果を期待できるアプローチであると言えます。この人事的施策は労働市場が現在抱えるさまざまな課題や問題を解決する糸口となることから、グローバルでも広く取り組まれており、経営・事業の両サイドへ多大なインパクトを及ぼし始めています。

人材マネジメントの抜本的再構築を推進していく上でPwCが最も重視しているのは、各従業員の「スキルマネジメント」と「データを活用したマネジメント推進」です。PwCの調査によると、各CEOが考えるビジネス成長への主な懸念事項は「人材の調達」であり、HR領域における今後の課題は「データ活用による意思決定」や、各従業員の「スキル不足の把握」だということが明確になっています。PwCではこのような各企業(CEO)が考えるビジネスにおける懸念とHR領域への課題を重視しており、データに基づいた(データドリブン)各従業員のスキルマネジメントが、人材マネジメントの再構築を抜本的に推進する上での重要なプラットフォームになると考えています。

2.PwCが考える人材マネジメントの再構築とその要諦

定義(体系化)したスキルを活用し、人材マネジメント再構築を推進するには、以下のとおり3つのステップが必要だと考えています。

まずは、現状を把握することにあります。具体的には、外部環境(労働市場変化など)と内部環境(事業戦略など)を踏まえ、ビジネスの遂行に必要な人材ポートフォリオを策定すること、つまりは、必要となるスキルとそれに伴う人材パターンを明確(分類)にすることです(Step1:分析)。

加えて、策定した人材ポートフォリオ(スキルベースによる人材パターン)をもとに、ビジネスサイドの将来動向を踏まえて必要となる要員計画(人材における量・質の将来変動)を明確にすることが必要です(Step2:計画)。

最後に、策定した人員計画に対する現有社員のスキル・人材パターンとのギャップを抽出し、必要な人事施策を展開・実践していくことです(Step3:実行モニタリング)。

これまで述べてきた一連のStepを効果的に遂行するためには、スキルを中心とした各種情報(データ)を、可能な限り統一的なデジタルプラットフォームで管理・運用していくことも忘れてはいけません。これは全体の整合性を維持し、効果的・効率的にスピード感を持ち、人材ポートフォリオに基づいた人員計画を遂行するための施策を展開するために重要です。例えば、スキルベースで各部門に最適な人員をスピード感を持って配置することも(データドリブンにより最適配置)、統一的なデジタルプラットフォームを構築することで可能となります。

人材マネジメントの再構築において、統一的なデジタルプラットフォームを構築することの必要性は前述のとおりです。これを再構築するにあたってもう1つ重要な要素は、管理・活用するスキル定義にあります。スキル定義を行う上で3つのポイントを以下のとおり述べたいと思います。

  1. スキル定義の粒度と体系化
    粒度が粗すぎる場合、収集したスキルを活用する際の判断に誤差が生じる可能性があります。一方、粒度が細かすぎる場合、あまりにピンポイントな情報となり、人材配置などの情報として意思決定に利用しづらく、管理面の負荷も上がってしまいます。そのため、活用のシーンを踏まえて粒度を定めることが肝要です。
    経営層・人事部門・ビジネス(現場)など、それぞれで活用するスキルレベルを体系化し、全体整合性・実効性を担保したスキルの定義を行い、レベルごとの活用シーンを定めることが必須となります。定めた活用シーンを参考に、現時点で見えている(必要となる)各スキルのレベル(枠)を設定することから始めることが必要となります。
  2. スキル標準と個別要件の見極め
    ITスキル標準など、活用しやすいスキル標準がある一方で、世の中のスキル標準のみにとらわれず、企業戦略を踏まえたうえで自社固有で定義すべきスキルを整理し、戦略に即したスキルの活用を前提とした定義が必要です。実際に活用するスキルの全てを定義することは非常にハードルが高いため、必須と判断されるスキルに限定して、活用を始めることも必要です。
  3. 中長期視点と継続的改善を考慮
    現状必要なスキルを定義するだけでなく、未来へ向けた投資の観点から中長期的な企業戦略を踏まえ、先々を見越したスキル定義の検討も必要です。組織が求めるスキルの適性モデルは内部・外部環境の変化に応じて更新が必須であり、現時点のスキル定義を完璧にするのではなく、人材配置や育成、評価など、スキルを活用するシーンを踏まえて、最低限の定義ができたタイミングで運用を開始し、継続的に改善を進めることが重要です。

繰り返しとなりますが、スキル定義とその活用は、ハードルが非常に高く、開始までに時間を要します。そして、経営・事業のスピードと可能な限り平仄を合わせた活用・施策の実践が必要です。仕組みや運用の全てができあがらなくとも、トライアンドエラーを繰り返し、施策そのものの品質を継続的に向上可能なアプローチが必要となります。

3.テクノロジーと従業員エンゲージメント向上

ここまでは、人材マネジメントの再構築を企業の観点から解説してきました。一方で、各従業員の会社に対するエンゲージメントがビジネスと深く関わっているということは各企業(経営陣)にとって周知の事実であり、HR領域の変革を推進するにあたっても、従業員エンゲージメントの向上が重要なファクターであると考えられています。PwCとしても、各企業に対するHR領域の変革を支援するに際し、従業員エンゲージメント向上を重視したアプローチを採っています。

具体的には、ライフイベントを含め、各従業員と会社との接点で発生し得る従業員の課題や問題点(ペインポイント)を明確にします。その上で、その解消策として最適なテクノロジープラットフォームを実装し、活用してもらうことでペインポイントの解消、それに伴う従業員のエンゲージメント向上(維持)を継続的に実現させるソリューションを展開しています。

例えば、従業員が自分自身の情報をすぐに参照・更新できるようなシステム動線、一つひとつの画面の使いやすさ(ユーザビリティ)、従業員ならではの視点に配慮し、最適なソリューションの選定および実装と、その活用プロセスを明確にすることが必要であると考えます。

4.最後に(実現に向けて)

本稿では、人材マネジメントの再構築に向けて「スキルマネジメント」と「データを活用したマネジメント推進」の必要性、そしてその実行・実践にあたってのポイントを述べてきました。改めて伝えたいのは、こういった改革を推進していくためには、企業と従業員の双方の視点から物事を捉えることが重要であるというということです。また、スキル定義のポイントでも述べてきたように、改革を一足飛びに実現・推進することは非常にハードルが高いということを認識すべきです。各企業とそこに所属している従業員のコンディジョンを十分理解し、トライアンドエラーを繰り返しながら、ビジネスサイドへのインパクトを踏まえてスピード感を持って成果を出すことを忘れてはならないと考えています。

執筆者

出崎 弘史

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

西川 節之

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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