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PwCコンサルティング、「Android Opera TOKYO」に特別協賛 革新的でインクルーシブな芸術活動を支援(2024年5月20日)
PwCコンサルティング合同会社は、音楽家 渋谷慶一郎氏が手掛けるアンドロイド・オペラ公演「Android Opera TOKYO」に特別協賛します。
2023-11-24
昨今、多文化共生やインクルージョン&ダイバーシティ等、多様な人々が生きやすく尊重し合える社会をどのように構築するかが、日本の大きな課題となっています。少子高齢化によって労働人口が減少する中で、多様な人々が働きやすい社会をつくることは、当事者だけでなく、職場環境を構成している全ての人が考えるべき重要なテーマであり、働きやすい環境構築による人材の定着は企業の安定的な成長に必要です。またSDGsの観点からも多文化共生の実現は持続可能な社会を目指すために必須の要素であり、企業の社会的責任(CSR)として取り組むべき課題と言えます。
日本政府は、「多文化共生」を「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義しています(総務省,2006「多文化共生の推進に関する研究会報告書~地域における多文化共生の推進に向けて~」)。
では、企業における「多文化共生」として、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
本稿では、多文化共生をとりまく多様な人々のうち、「日本で働く外国籍・外国にルーツや関わりがある人」に焦点を当て、現状の社会システムでは不可視化されやすい働きにくさや、その問題点を明らかにするとともに、今後一人一人がどのような行動をとるべきかについて考察します(本コラムはアイオワ大学の宮内栄氏と共同執筆しました)。
日本で生まれ育ち、日本の文化に深く馴染みがある人と、外国籍・外国に長く生活しルーツや関わりがある人では、価値観が完全に一致するケースばかりではありません。文化的な差異があった場合の対応を、山脇・上野の論*1から引用した移民政策の概念「Assimilationism、Multiculturalism、Interculturalism」より説明します(図表1)。
*1 山脇啓造・上野貴彦,2022.『多様性×まちづくり インターカルチュラル・シティ――欧州・日本・韓国・豪州の実践から』明石書店
Assimilationism(同化主義)は、移民が受入国に同化することを求める移民政策のスタンスです。社会の一体性が優先され、移民の文化保持は奨励されません。
Multiculturalism(多文化主義)は、移民と受入コミュニティの違いは奨励・保護されます。ただし差異の過度な強調により、それぞれが集団ごとに分断され、アイデンティティが交わる余地がない側面があります。
Interculturalism(間文化主義)は、Multiculturalismから一歩進んだ共生社会の在り方を模索するスタンスです。違いが奨励・保護される点は同様で、相互理解や共感を生み出す政策・活動を奨励する点が異なります。欧州では、それまでのMulticulturalismの政策によって移民の主流社会からの疎外が進み2000年代前半に衝突を引き起こしたことへの反省から、多様性を尊重する新たなアプローチとして注目されています。
上記の概念に沿うと、日本の企業における「多文化共生」の現状は、どのような状態といえるのでしょうか。企業が「多文化共生」を推進するにあたり、実際に日本で働く外国籍・外国にルーツや関わりがある人々が何に困っているのかを明確化する必要があります。
そこで、私たちは次のような調査・分析を実施しました。
調査対象は外国に関わりがあると自己認識しているワーカー(外国籍の人や外国にルーツを持つ人、留学や就業で長期間外国にいた人、外国人学校の出身者など)と定義しました。調査会社を利用し、ランダムに抽出した日本で働いている労働者に対して「外国に関わりがあると自己認識しているかどうか」というスクリーニング質問を実施することで、母集団1,500人を設定し、日本で働く中で困っていることや働きやすい環境等について下記の質問を実施しました。
【質問項目】
日本で働く中で、「働きにくい」「困った」と感じている人は38%おり、その傾向について整理しました。
ジェンダーでは女性50%強、男性40%強で、本トピックへの関心は女性がより高く、問題を感じていると回答した年齢の内訳は20代21%、30代33%、40代27%、50代15%、60代4%となっています。役職別では、マネージャー以上27%、非マネージャー(=マネージャー未満)60%と、総じて、若手・中堅社員が問題を感じている傾向にあります。
所属組織としては外資系企業36%、日系企業40%、中小規模企業(300人以下)38%、大規模企業(301人以上)50%と、おおよそ40~50%の割合で、性質によって大きく差はありませんでした。
日本で働く中で困っている事項として、最も多かった項目が「外国人に対するバイアスや偏見」、次に「文化的差異の衝突」や「習慣・社会制度等の前提・暗黙知」でした(図表2)。また、困っている事項について、それぞれ半数以上が「周囲の人は気付いていない」と感じると回答しています。
使用言語の内訳を見ると、日本語をあまり使わない層と比較して、日本語が母語である人や日本語を業務で使用している人の方が問題を抱えていると回答した割合が高かったことから、言語ではない部分が「困りごと」に起因していることが想定されます(下記「問題を感じている回答者の属性」参照)。
「困っている事項について、周囲の人は気付いている」と回答した人の中で、困りごとをシェアできるコミュニティは「家庭」が最も多く、次いで「外国ルーツ系の社外コミュニティ」の順番となっています(図表3)。困りごとは社外に共有されている割合が高く、社内では何に困っているのかあまり共有されていないことから、企業内の課題が可視化されず、解決のための施策も打ちづらくなっていることが考えられます。
また、会社で、困りごと対策のための施策を行っている割合は25%以下である一方、会社が実施している施策については80%が「効果がある」と回答しました。社内に何に困っているかの実情が共有されないことがネックとなり、適切な施策がとられていない可能性があります。まずは社内に困りごとが共有できるような制度や仕組みの策定、組織風土の醸成が求められます。
困りごとを抱えている人のうち、日本および現在の会社で働き続けるかどうかには半数以上が「多文化共生の観点での働きやすさは影響する」と回答しました(図表4)。また、働きやすい環境については大多数が「相互にコミュケーションをとりトライアンドエラーでつくっていくような環境(Interculturalism)」、次点で「外国人は外国人、日本人は日本人で干渉をしない環境(Multiculturalism)」と回答しています。
企業の「多文化共生」を定義する際には、一方的な組織の慣習に従ってもらうのではなく、相互に認め合う環境や、それぞれの価値観が独立して守られる環境づくりが重要な観点といえます。では、実際に働いている人の期待に対して、企業は応えることができているのでしょうか。次回は、上記の調査データに加えインタビュー調査を踏まえ、より詳細に、日本企業の現状について紹介します。
1.調査対象者の属性
属性(1,500人中の割合) | |
ジェンダー | 女性 50.0%、男性 47.0%、答えたくない・その他 3.0% |
年齢 | 20代 21.0%、30代 29.0%、40代 25.0%、50代 19.0%、60代 6.0% |
所属組織※該当の選択肢を複数選択可 | 日系企業 45.6%、外資系企業 61.1%、大規模企業(301人~)12.2%、 中小規模企業(~300人)21.5%、大学・研究機関 3.0%、公務員 2.9%、NPO・NGO等 1.2%、その他 17.9% |
役職者 | 非マネージャー 58.5%、マネージャー以上 25.5%、その他 16% |
日本語の使用状況 | 母語 53.3%、母語ではないが業務で問題なく使用している(N1-2程度) 34.6%、母語ではないが日常生活で問題なく使用している(N3-4程度) 9.0%、日本語はあまり使わない 3.1% |
国籍(二重国籍を含む) | 日本 28.99%、韓国 26.07%、中国 19.87%、台湾 6.55%、ブラジル 2.92%、ベトナム 2.07%、アメリカ 1.85%、オーストラリア 1.50%、イギリス 1.07%、アフガニスタン 0.93%、アルゼンチン 0.78%、フィリピン 0.71%、アンドラ・フランス 0.64%、カナダ・アルバニア 0.57%、ドイツ 0.50%、ベルギー 0.28%、アルメニア・ボツワナ・インド・デンマーク・マレーシア 0.21%、アゼルバイジャン・エルサルバドル・エチオピア・モンゴル・パキスタン・タイ 0.14%、アイスランド・ブルネイ・コモロ・コンゴ共和国・クック諸島・クロアチア・キューバ・キプロス・フィジー・フィンランド・ギリシャ・イタリア・リヒテンシュタイン・ヨルダン・モナコ・オランダ・ウルグアイ・ザンビア・チリ・ニュージーランド・ポーランド・ロシア 0.07% |
エスニシティ自己認識 | Asian - Japan 43.9%、Asian - Korea 16.9%、Asian - China 14.9%、Asian - Taiwan 7.0%、Asian - Hong Kong 2.0%、Asian - South East Asia 2.8%、 Asian - South Asia 1.3%、Asian - Central Asia 0.5%、White 1.9%、Black or African American 0.4%、Other 0.9%、答えたくない・分からない 7.6% |
2.問題を感じている回答者の属性
属性(565人中の割合) | |
ジェンダー | 女性 52.0%、男性 46.0%、その他 2.0% |
年齢 | 20代 21.0%、30代 33.0%、40代 27.0%、50代 15%、60代 4% |
所属組織※該当の選択肢を複数選択可 | 日系企業 32.4%、外資系企業 39.1%、大規模企業(301人~)9.9%、 中小規模企業(~300人)14.5%、大学・研究機関間 2.8%、公務員 2.3%、 NPO・NGO等 0.9%、その他 10.2% |
役職者 | 非マネージャー 60%、マネージャー以上 27%、その他 14% |
日本語の使用状況 | 母語 43%、母語ではないが業務で問題なく使用している(N1-2程度) 46%、母語ではないが日常生活で問題なく使用している(N3-4程度) 10%、日本語はあまり使わない 2% |
国籍(二重国籍を含む) | 日本 20.3%、中国 19.3%、韓国 17.6%、台湾 10.7%、ブラジル 3.0%、 ベトナム 2.2%、オーストラリア 2.0%、アメリカ 1.7%、アルゼンチン・アンゴラ・アンドラ・ジンバブエ・フィリピン 1.2%、アフガニスタン・アルジェリア・イギリス・シンガポール 1.0%、アルバニア・ドイツ・フランス 0.8%、カナダ・タイ 0.7%、インド・インドネシア・マレーシア 0.5%、アゼルバイジャン・ネパール・パキスタン・バヌアツ・ペルー・ベルギー・ミャンマー・モンゴル・ロシア 0.3%、アルメニア・イタリア・ウガンダ・エルサルバドル・オランダ・カメルーン・グアテマラ・クロアチア・コンゴ共和国・サウジアラビア・チリ・デンマーク・トルコ・ニュージーランド・バルバドス・ベナン・ポーランド・ボツワナ・ホンジュラス・マケドニア旧ユーゴスラビア共和国・ヨルダン・リヒテンシュタイン・ルーマニア 0.2% |
エスニシティ自己認識 | Asian - Japan 37.0%、Asian - Korea 14.0%、Asian - China 18.0%、Asian - Taiwan 13.0%、Asian - Hong Kong 3.0%、Asian - South East Asia 4.0%、 Asian - South Asia 2.0%、Asian - Central Asia 0%、White 2.0%、Black or African American 1.0%、Other 1.0%、答えたくない・分からない 5.0% |
本コラムはアイオワ大学社会学部 (Department of Sociology, University of Iowa) 博士課程 (Ph.D.Student) 宮内栄氏(Ei Miyauchi)と共同執筆しました。
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