従来の災害対策にとどまらない事業継続のあり方

サイバーインシデントを想定したIT-BCPはなぜ必要なのか?

  • 2025-03-18

はじめに

企業にとって、事業成長や収益アップと並んで重要になってきているのが、BCP(事業継続計画)です。自然災害やサイバー攻撃といった緊急事態が起きた際、いかに被害を少なく抑え、事業を継続できるかは、企業にとって大きな意味を持ちます。

内閣府が2007年以降、隔年で実施している「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」で2023年までのBCP策定率を見ると、大企業が18.9%から76.4%へ、中堅企業では12.4%から45.5%へと増加しています(下図)。とりわけ東日本大震災が発生した2011年(平成23年)に大きな伸びを見せ、その後も自然災害の激甚化などを受けて、多くの企業が災害対策としてのBCPに取り組んでいることが分かります。

図表1:大企業と中堅企業のBCP策定率の推移

出典:内閣府「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/chosa_240529.pdf

一方で、サイバーインシデントを想定したBCPについては十分な備えができていないという現状もあります。業務のIT化やデジタル化が進む中、ひとたびサイバー攻撃を受けてシステムダウンしてしまうと、業務が長期的にストップしたり、個人情報が流出したりするなどの大きな損害を被る可能性は十分にあります。これらのことから、近年、BCPにおいてサイバーインシデントを視野に入れたIT-BCPの重要性が増しています。

IT-BCPにおいては従来の災害対策が重要であることはもちろんですが、そこからさらに一歩進め、上記で触れたサイバーインシデントも視野に入れながら、システムリスクを回避するためのIT-BCPについてどのように考えておくべきかを本コラムで解説します。

おわりに

ここまで見てきたように、サイバーインシデントに的確に備える対応策は、ビジネス環境やアーキテクチャの変化、テクノロジーの進化など、さまざまな要因を踏まえてしっかり見直すことが重要です。IT-BCPに基づく最終判断は、事業継続や経営そのものにも深く関係してくることから、事業の責任者・経営層が行うことになります。IT-BCPを策定しておくことで、被害発生時のリスクを適切な範囲に抑え、事前に準備しておくことで対応策の検討が可能になります。

PwCでは、サイバーセキュリティに関するグローバルな知見とともに、システムの実装実績を見据えてさまざまなシステムリスクを想定したIT-BCPの支援をしています。

サイバーインシデントのリスクは今後も決して無くなることはありません。いざというときに被害をできる限り小さく抑え事業の継続を図るためにも、まずはIT-BCPの見直しやアップデートの重要性を認識し、できることから実行に移していただくことを提案します。

インサイト/ニュース

20 results
Loading...
Loading...

執筆者

小菅 侑子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

田中 健太郎

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

本ページに関するお問い合わせ