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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大は、サプライチェーンに甚大な影響を及ぼしました。特にサプライチェーンのグローバル化が進んでいる電機メーカー、半導体メーカーといったハイテク産業では、世界的なパンデミックの発生に際しては直接的・間接的に、また長期的に影響を受けることが懸念されます。
「アフターコロナ」「ウィズコロナ」といった単語が一般化しつつある中、今回を機会と捉え、「コロナ時代」の要件に基づいてサプライチェーン全体を評価し、施策の実行を通じてビジネストランスフォーメーションを実現するという、未来に向けた対応を取ることが企業には求められています。不確実性が高い時代に必要とされるサプライチェーンの在り方を定義し、効果的なサプライチェーンマネジメント実現に向けた施策を考えます。
今回のCOVID-19のグローバル規模での感染拡大により、サプライチェーンの寸断、崩壊が見られたほか、需給、調達、生産、物流、販売・アフターサービスなど、各機能それぞれで事業継続が困難となる事象が発生しました。今後来る可能性がある第2波、第3波の発生時にも、同様の影響が発生することが想定されます。サプライチェーンの各機能で見られた影響の例を以下に記します。
COVID-19発生後の世界では、企業は働き方を変えることを余儀なくされることが予想されます。感染拡大の世界同時性や事態の収束にかかる時間の長さなど、従来の自然災害やサイバー攻撃といった有事と比較すると、対処するべき課題の多さや解決に至るまでの道のりは大きく異なります。企業はもはや、COVID-19と上手く付き合いながらビジネスを推進していくことは避けられないでしょう。
こうした時代においては、サプライチェーンの在り方も変わってくると考えられます。具体的には、5つの要素が要件として求められると考えています。5つの要件とは、1.バリューチェーンシナリオプランニング、2.レジリエンス(強靭性)、3.アジリティ(敏捷性)、4.デジタル(非接触化/省人化)、5.ソリディティ(硬質性)です。以下に各内容を記します。
サプライチェーン上の潜在的なリスクを想定した、複数のシナリオの継続的な策定と準備、発動と実行、見直しをサイクルとして行う取り組み。あるべきサプライチェーンの姿を考える上での根幹をなす。
有事の際の影響を最小限に留め、ビジネスの継続性を高めるための各種代替候補の確保、余剰・冗長性の担保など。
最新の情報をもとにしたサプライヤー・生産拠点・物流経路の地域単位、国単位での切り替えなど、状況の変化に伴うビジネスニーズへの迅速な対応。
デジタル技術を活用することによる自動化とリモート対応を通した、サプライチェーンオペレーション上の非接触業務、省人化対応の推進。
COVID-19対応とバランスを取りながら、サプライチェーンエクセレンスを向上させるためのオペレーションの標準化や高度化、コスト削減の果実を刈り取っていく対応。
不確実性がさらに高まることが予想される時代にあっては、刻々と変わる情勢に的確に対応するための準備(バリューチェーンシナリオプランニング、レジリエンス)と、いざ事が発生した際の素早い対応(アジリティ)、テクノロジーを活用した効率化と省力化(デジタル)、そして状況を的確に見極めながら、サプライチェーン全体のパフォーマンスを日々向上させていく努力(ソリディティ)が、企業に求められると言えるでしょう。
とはいえ、サプライチェーン全体を一から作り直すことは現実的とは言えないでしょう。特に重要な機能を見極め、企業ごとに優先すべき対応を決める必要があります。筆者は、既存のサプライチェーンの見直しとデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が、対応の方向性として重要と考えています。図表3に、サプライチェーンに求められる5つの要件を満たすための取り組みの例を、機能ごとに紹介します。
中でも具体的な例として、サプライチェーンを再考する上で重要となる「シナリオ策定」(シナリオプランニング)と「コマンドコックピットの設置」(レジリエンス)を紹介します。
シナリオプランニングの際には、これまで作成してきた際に活用していた従来の観点をあらためて検討し直す必要があります。従前のサプライチェーンリスクは自然災害やサイバー攻撃などを想定していたため、影響度は大きいが影響を受ける期間は短いと言えました。しかし今回のCOVID-19の場合、影響度は莫大ではないものの影響を受ける期間が長いという特徴があります。従属的に発生したリモート対応をはじめ、ワークスタイルの変化や企業としての社会的責任に伴う対応も、シナリオの要素に含める必要があるでしょう。
COVID-19が感染拡大する状況においては、従来から必要とされていたサプライチェーンのコントロールタワー(サプライチェーン全体を俯瞰的に管理する役割)の機能に加えて、リスクマネジメントやシナリオプランニングにおける権限も含めた強力な機能を集約した「コマンドコックピット」が有効です。この新たな機能に最新情報を集約し、状況を判断しながらグローバル全体でのサプライヤー、生産拠点、物流経路のダイナミックな切り替えを実行していく体制を組むことで、状況ごとに最適化したSCMの実現が近づくと考えます。
COVID-19による予測不能な状況においては、サプライチェーンには圧倒的なスピードと柔軟性(変化対応力)が必要となります。従来のような、サプライチェーンのプレイヤー間での情報のやり取りを上流から下流、下流から上流に数珠つなぎで手渡しする、いわゆる縦型構造のサプライチェーンでは、その情報が末端に到達するまでに、数週間から1ヶ月を要してしまいます。情勢が日々刻々と変わるコロナ時代においては、情報の劣化と後手の対応を招くことになり、到底立ち回ることはできません。
個社でサプライチェーンの改革を進めるには限界を迎えていると感じる企業が少なくない中、デジタル技術の進展を背景に、構造そのものを見直し、さまざまな企業と協調しながらリアルタイムかつシームレスに情報連携を行うことで情報流通の高速化と、自律的・予見的行動によるサプライチェーン全体のスピードアップと柔軟性の向上を目指す、いわゆる『ネットワーク型サプライチェーン』が不可欠となっています。
前述の通り、COVID-19は企業の働き方を大きく変えようとしています。サプライチェーンの変革も必要とされるでしょう。そうした中にあっては、まずは現状を把握することが大切です。PwCは、既存のサプライチェーンのどこに課題が潜んでいるのかを認識するためのアセスメントを提供しています。定量面と定性面からアセスメントを行い、コロナ時代のSCMに必要な5つの要件ごとに強み・弱みを抽出し、今後どの領域でどのような対応が必要なのかを特定します。第2波、第3波が到来しても的確に対応できるよう、施策の検討やビジネストランスフォーメーションに向けた準備にぜひお役立てください。