
「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第89回:ユーザーの課題・ニーズ起点のスマートシティサービスの考え方
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
2020-08-11
人口構造の変化による社会基盤崩壊の危機は、特に人口流出や過疎化が顕著になる地方都市においてより深刻化の度合いが高まっています。地域活性化を主な目的として2000年代初頭に各地で発行された地域通貨も、発行・運営コストがかさみ経済価値の流動性や持続性を維持できず、その大半は5年を待たずに廃止されているのが実態です。
一方で、近年のデジタル技術の進展による発行・運営コストの低減や地方創生への機運の高まりを背景に、スマートシティにおけるキャッシュレスをより促進するための手段として改めて地域通貨(デジタル通貨)が注目されています。
地域通貨が持続的な地域経済の支えとなるには、
の二点が求められます。
「利用者」に対しては、これまでのポイント還元や割引などを中心とした利得性の訴求から、医療や教育も含む利用シーンの拡大による利便性の向上、決済データを活用した高齢利用者の見守りサービスによる安心感の醸成といった非経済的利得性への転換が求められます。
「事業者」に対しては、加盟する地域事業者そのものも高齢化や後継者不足が進む現状に鑑み、導入・運用コストの低減や入金の早期化だけでなく、事業者間決済(B2B)の導入や決算および申告サポート、事業・人材マッチングといった事業活動の生産性向上や持続性維持といった側面からの検討も必要となります。
「発行および管理者」に対しては、これらの仕組みを持続的に維持していくためには運営負担の軽減が前提となることから、ブロックチェーンに代表されるデジタル技術の活用が期待されており、金融機関やフィンテック企業を中心に実証実験が進んでいます。
持続的な循環を維持・発展させていくには、逆説的ではありますが地域に閉じない外部からの人材や資金を呼び込み続けていくことも不可欠です。各都市が持つ特色や魅力を生かし、ふるさと納税の返礼としての地域通貨の交付による地域経済への参画促進や、地域通貨利用の還元ポイントによるまちづくり事業へのファンディングといった、利用者の参画意義をより広め、そして強めていくことで、一過性の消費で留まらせない地域通貨を通じた都市と人を線でつなぐ交流、関係を築いていくことが必要ではないでしょうか。
世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、キャッシュレス決済のみならず通貨のあり方そのものも大きく変わろうとしています。国内においても、これまでは消極的な姿勢が目立ったデジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)について、スマートシティや地方創生の観点からも機運が高まりつつあります。
地方が抱える課題はそれぞれ異なり、地域通貨のあり方にも一つだけの正解はありません。住民の声に耳を傾け、どうありたいかを中長期的な視点で捉えたうえで地域経済の活性化を図っていくことが望まれます。
※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
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