「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第89回:ユーザーの課題・ニーズ起点のスマートシティサービスの考え方
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
2020-12-01
2020年3月、日本で第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが始まりました。5Gの大きな特徴は、「大容量」「低遅延」「多数接続」の3点で、5Gの商用利用として最も有望視されるユースケースの1つがスマートシティです。スマートシティの発展は人流解析や導線分析といった人やビル、モノ、サービスに関連するデータ利活用を前提としており、データを収集するためのインフラとして、大量のデータを無数のセンサーからリアルタイムに収集する5G技術は重要な要素になります。
5G普及に伴うスマートシティの発展により、ビル・エネルギー管理システム(BEMS)/ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)、マイクログリッド、スマートグリッドといったエネルギーソリューション、自動運転を活用した交通、移動、物流などのモビリティサービス、その他にも医療・介護、安心・安全、観光、教育、環境など多様な産業の発展が期待されています。
移動体通信における5Gと合わせて注目されている技術が、特定のエリア・周波数帯を利用した高速通信を実現する「ローカル5G」です。このローカル5G技術は、スマートファクトリーやスタジアムでの映像配信といった特定エリアにおける大容量・高速通信を必要とする場面における活用が期待されており、地域内に特化した通信が求められるスマートシティとの相性が良いと考えられています。
ローカル5Gの大きな特徴としては、大手の通信キャリアに限らず、地方のケーブルテレビ事業者や自治体、医療機関、スタジアム運営者や大規模農家といった、各領域のプレーヤー自身が、自営設備としてインフラを保有、自らサービスを設計・提供することができる点が挙げられます。特に、5Gと異なり特定のエリアにおける通信サービスの為、高いセキュリティを求められるミッションクリティカルな分野での活用が期待されています。実際に、日本と同様に製造業が重要な産業であるドイツにおいては、工場の自動化(=スマートファクトリー)構築の為にローカル5G技術の導入が推進されています。
日本における移動体通信サービスの発展は、1979年の1G(自動車電話)、1993年の2G(PDC方式)、2001年の3G(W-CDMA方式)、2010年の4G(LTE)、2020年の5Gというように、およそ10年サイクルで新しい通信方式が商用化されています。この流れに沿って考えると、日本国内のスマートシティビジネスが盛り上がっていく2030年ごろには、新たに6Gの導入が予想されます。実際に、2030年を目途に6Gの商用化を目標に技術開発を進めていくことを表明している国内大手通信会社もあります。
スマートシティにおけるデータ収集・分析の重要性は前述のとおりですが、6Gの本格導入により、画像、位置情報、動画といった5Gでも収集されていた情報に加えて、例えば3Dホログラム映像のような立体的な視覚情報、ビル内における人の動きを連続的に収集する高精細・高精度の情報など、ありとあらゆるデータをきめ細やかなレベルで収集・分析することが可能になっていくことが考えられます。
2030年代にはこのようなデータと自治体のオープンデータ、購買情報、位置情報などを連携させて、より安心・安全で、賑わいのあるまちづくりが実現されていくことが期待されています。
※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
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