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2021-10-19
経済産業省は、「オフサイト型コーポレート電力購入契約(Power Purchase Agreement、以下PPA)」により他社から電力を融通・購入できるスキームを認める方向で検討を進めています。「オフサイト型コーポレートPPA」とは遠隔地の電源(発電会社)と電力需要家(企業や自治体などの法人)が直接PPAを締結する契約形態です。国内では発電会社は通常電力小売会社とPPAを締結しており、現在の日本の電気事業法では、オフサイト型コーポレートPPAは、「密接な関係を有する者」としか認められていません。一方で、コーポレートPPAによる再生可能エネルギー(以下、再エネ)調達は、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブであるRE100において「追加性(再エネ投資促進効果)有」として推奨されています。そのため、欧米ではRE100や、温室効果ガス排出削減目標であるSBT(Science Based Targets)の認定済み企業を中心に、コーポレートPPAを採用するケースが増えています。なお、国内で現在認められているPPAは、オンサイト型コーポレートPPA(図1の①)と、需要家と密接な関係を有する者(つまり自社または自社グループ)が保有する発電所から電力融通・購入するオフサイト型コーポレートPPA(図1の②と③)です。
図1 需要家の遠隔地などからの再エネ電気の直接調達(電気事業法上の整理)
(出典:経済産業省「需要家による再エネ活用推進のための環境整備」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/030_08_00.pdfより転載、アクセス日2021年10月1日)
経済産業省は、オフサイト型コーポレートPPAによる他社融通スキーム(図1の④)には以下のような課題があると整理しています。
<オフサイト型PPA(グループ外融通)の主な課題>
自己託送スキームによる供給は、現行の再エネ特措法上、再エネ賦課金の支払いの対象外となる。このため、消費者など、このスキームを活用しない需要家の負担が高まるなど、公平性の確保の観点からの課題がある。
メガソーラー等による通常の再エネの小売供給と同様のビジネスモデルであるにもかかわらず、再エネ賦課金の対象から外れることを目的として、このスキームを活用することは、公正競争の観点からの課題がある。
オフサイト型PPAによる他社融通スキームでは、需要家と再エネ発電事業者との間に契約行為が発生することから、需要家保護の観点からの課題がある。
(出典:経済産業省「需要家による再エネ活用推進のための環境整備」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/030_08_00.pdfより抜粋し転載、アクセス日2021年10月1日)
経済産業省はこうした課題に対する対応策を整理・検討しつつ、他社の電源だとしても「FIT(Feed-in Tariff)又はFIP(Feed-in Premium)制度の適用を受けない電源による電気の取引であること」「需要家の要請により、当該需要家の需要に応ずるための専用電源として新設する脱炭素電源による電気の取引であること」などの要件を満たすものについては、電気事業法に規定する「密接な関係性を有する」との定義に該当するものとして新たに拡大解釈することで、「オフサイト型コーポレートPPAによる他社融通スキーム」を自己託送制度の一形態に含める方向性で検討を進めています。
オフサイト型コーポレートPPAの締結が広く可能となることで、発電事業者と電力需要家の2者間の協議・交渉により、再エネの発電および調達が可能となります。その結果、遊休地や工場の屋根、未利用バイオマスなど地域の未利用資産・資源を活用した再エネ導入の可能性が高まると思います。
スマートシティ開発においても、以下のような事業や取り組みを複層的に組み合わせることで地域の温室効果ガス排出量をゼロに近づけるのみならず、地域産業振興にもつながることが期待されます。
図2 コーポレートPPAを活用したスマートシティのイメージ(例)
1 V2XとはVehicle to Everythingの略称で、電気自動車と建物や電力系統間を通信技術で繋ぎ、電力をさまざまなものの間で融通する技術の総称です。
総人口と労働力の減少、高齢化の進行が予測される昨今の日本において、「スマートシティ」の取り組みが注目されています。PwCはSociety5.0時代の社会課題の解決に向け、クライアントである行政とその先に暮らす住民の価値創出を、ワンストップで支援します。
SDGs達成/環境・社会課題解決を通じた持続的成長を包括的に支援します。
PwC Japanグループでは、再生可能エネルギーや脱炭素経営、会計、税務などの専門知識を有するプロフェッショナルが「カーボンニュートラルソリューショングループ」として組織を横断して活動しています。