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2021-11-16
内閣府のスマートシティに関するウェブサイト(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html)において、スマートシティは「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメントの高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場」と定義されています。
このことからも、スマートシティを考える際にはSociety 5.0について正しく理解しておく必要があります。スマートシティのデジタル技術については、内閣府のスマートシティリファレンスアーキテクチャなどが参考になりますが、本コラムではSociety 5.0の目指す世界と照らし合わせながら、スマートシティ関連デジタル技術の中で見落とされがちなものをいくつか取り上げて紹介します。
Society 5.0は第5期科学技術基本計画の中で提唱された、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く5番目の社会を意味しています。
Society 5.0が目指すのは、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる「人間中心の社会」です。また、その実現へ向けては以下の3つのポイントが挙げられています。
出典:内閣府ホームページ(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/)
フィジカル空間からのデータの取得には、センサーやIPカメラなどのIoT機器が活躍します。IoT機器から提供されるデータの中には、何らかの事象を検知したときにだけ送られてくるものもあれば、継続的に送り続けられるものもあります。後者のデータは量も膨大になりがちで、それ単体では意味を成さないものも多くあります。
こうしたデータをむやみに蓄積することは、データ基盤を肥大化させ、そのデータを伝送するネットワークにも負荷を掛けてしまいます。そのため、エッジコンピューティングのような仕組みを使い、データのクレンジングやコンソリデーションなどの処理や分析を行い、意味のあるデータのみを蓄積していくことが重要です。
サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた体験の提供手段として、ロボティクスや自動走行車がしばしば取り上げられます。しかし自動走行車などのハードウェアによるフィジカル空間への物理的なフィードバックは、その安全性の確保など乗り越えるべきハードルがあります。
一方、フィジカル空間へのより敷居の低いフィードバック方法として、プロジェクションマッピングやデジタルサイネージなどを利用した情報提供が考えられます。こうした技術を利用することで、スマートフォンなどのデジタルデバイスを所有しない人たちとも、広くデジタル技術を使ったコミュニケーションが可能になります。
「必要なモノやサービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供」する、つまり高度にパーソナライズされた体験の提供は、人間中心の社会を実現するうえで重要な前提条件となります。
高度なパーソナライゼーションを行うためには、ひとりひとりを深く理解する必要があります。そのためには、人々に関する情報を全方位的に分析する必要がありますが、その際に重要なのが個人情報の保護およびプライバシーへの配慮です。
スマートシティの場合、データの収集や利用にあたり、多数の行政機関、企業、団体が関与し、組織をまたいで多くのデータがやり取りされることが想定されます。こうしたデータの流通には、該当する個人からの同意の取得は欠かせません。それもサービス利用規約やプライバシーポリシーに同意を求めるような単純なものではなく、自分自身のどのようなデータを収集し、誰にその利用を許可するのかを当人がいつでもコントロールできる状態であることが望ましいため、高度な同意管理基盤が必要となります。
スマートシティの取り組みがしばしば実証実験にとどまったり、頓挫したりするのはとても残念なことです。スマートシティの取り組みの多くは、私たちが生活していくうえでの不便さや不自由さの解消、あるいはもっと大きな社会課題の解決を目指してスタートしているはずです。それが実用化にまで至らないのは、その取り組みを持続可能なものとするために、どのように関係者を取り込むのか、どのようなインセンティブを提供するのかの設計が不十分なままに見切り発車してしまっていることが原因の一つであると考えられます。
企業の場合には、収益確保やコスト削減は分かりやすいインセンティブとなります。前項で検討した「パーソナライズされた体験の提供」を例にとると、重要なのは人々を深く理解するために有用なデータが流通することです。ここで、データ提供者がデータ利用者から収益を上げるために利用できる簡単な仕組みが標準的に提供されていれば、データを提供しようと考える企業が増え、多くの有用なデータが集まり、結果として私たちは経済合理性の伴ったより質の高い生活を享受できるはずです。
ネットゼロスマートシティの実現のように、より大きな社会課題の解決を考える場合、そこに経済合理性をもたせるためには、視座を上げてよりマクロな視点から考える必要があります。
自然資源が豊かな地方の自治体には、十分な財源がないケースが多く見受けられます。こうした状況下では、例えば環境省が提唱している地域循環共生圏のような考え方に基づいて、地方にある自治体と都市部にある自治体が連携してネットゼロを実現していくという可能性が容易に想像できます。
出典:内閣府ホームページ環境省「第五次環境基本計画の概要と地域循環共生圏の概要」(https://www.env.go.jp/seisaku/list/kyoseiken/pdf/kyoseiken_01.pdf)
こうした前提に立った場合、都市OS間のデータ連携はもちろんですが、もう一歩踏み込んで都市OSの仮想化やコンテナ化ついても検討する価値があります。
都市OSがコンテナ化されていれば、比較的財源に余裕のある都市部の自治体が都市OSを構築し、それをマルチテナントサービスとして稼動させ、それを自然資源には恵まれているものの財源が限られた地方の自治体に提供し、対価としてカーボンクレジットの提供を受けるといったシナリオが成り立ちます。
Society 5.0は特定のシナリオに限定されたものではなく、Society 5.0の文脈の中で語ることのできるシナリオはいくつもあります。言い換えれば、その先行的な実現の場であるスマートシティが取り組めるテーマは無数にあります。そして、自治体によって優先的に取り組むべきテーマは異なります。
特定のテーマに取り組む際に、そのテーマに最適化され過ぎた視点でデジタル技術を検討すると、次のテーマに取り組もうとした際に手戻りが発生する可能性があります。優先的に解決すべき課題に取り組みつつも、全体像を俯瞰することを忘れずに、視座を上げ下げしながら、最適なデジタル技術を選定していくことが重要です。