
「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第89回:ユーザーの課題・ニーズ起点のスマートシティサービスの考え方
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
2022-11-01
日本におけるスマートシティの取り組みは、実証実験のステージから実装のフェーズへと移りつつあります。その中で国は2022年3月、日本のスマートシティの先端を走る「スーパーシティ型国家戦略特区」に2つの自治体を指定し、特区における規制・制度の緩和を含むスマートシティ開発の推進に着手しました。実装フェーズにおいては、テクノロジーを実証することに留まらず、地域の課題解決に貢献し、持続可能であること(サステナブルスマートシティの実現)を検証することが必要となってきます。
その観点を踏まえれば、「環境に配慮したインフラストラクチャー」は持続可能なスマートシティの重要な要素の1つであり、CO₂排出量を大幅に削減し得るスマートシティモビリティサービスの導入は必須と言えます。
PwCでは、CASEの技術を実装したサービスを「スマートモビリティサービス」と定義し、同サービスを導入することによってCO₂排出量の低減に貢献できると考えています。今後着実に増加していくスマートモビリティサービスは、CO₂排出量に対して「➀乗用車台数の低減によるバリューチェーン上のCO2削減」「②電動車中心のモビリティサービスによる車両走行時のCO2削減」という2つの大きな要素において貢献すると考えられます。
スマートモビリティサービスの浸透による影響を、乗用車または商用車によるヒトの移動、商用車によるモノの移動の3つのカテゴリに分類して検討したのが図1です。
図1:スマートモビリティサービス導入によるCO₂排出量の低減
結果、乗用車のWtWは大幅に減少するため、トータルとしては減少すると考えます。
今後、レンタカー、タクシー、路線バス、トラック配送などの既存サービスに対して、スマートモビリティサービスが加速度的に置き換えられる、もしくはアドオンされていくと想定しています。スマートモビリティサービスとしては、電動車両を中心としたカーシェア、ロボタクシー、自動運転シャトルなどが現実のものとなり、トラック配送分野では、求貨・求車マッチング、無人隊列走行、自動走行ロボット配送等が将来的に実装され、普及していくでしょう(主要サービス一覧は図2参照)。
その中でも、特に自動運転技術を活用したロボタクシー、自動運転シャトル、無人隊列走行、自動走行ロボット配送といったサービスは、ルートと移動距離の最適化により、CO₂排出量低減への貢献度が高いサービスになります。
図2:スマートモビリティサービスの主要サービス一覧
スマートモビリティサービスとして、個々のサービスが実装されること自体がCO₂排出量の低減に寄与します。それに加え、最終的にはSmartCityにおけるモビリティマネジメントプラットフォーム(MaaSプラットフォームと呼称する場合もある)上のサービスにも組み込まれ、複数サービスのデータ共有・分析が行われることにより、需給に応じた稼働率の最適化が図れ、さらなるCO₂排出量削減への貢献が期待できます。加えて、 Smarrt Cityで実装される各事業者の多様なサービスごとのCO₂排出量を算出し、分析・効率化を図ることでさらなるCO₂低減への対応が可能となります。
持続可能なスマートシティの実現に向けては、MaaSをスマートシティの一要素として組み込み、モビリティの観点だけでなく、街全体として統合管理されたシステムによる対応を推進していくことが求められます。
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
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