スマートシティの社会実装における「人間中心」の取り組みの実現に向けて

2023-05-02

スマートシティの社会実装に関する取り組みが各地で進められています。その中で、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現するためには、「人間中心(ヒューマンセントリック)」に進めることが不可欠であるとされています。「人間中心」の取り組みを実現するためには、その地域の将来のビジョンを示し、地元住民や地元企業を巻き込み、一緒に街づくりを行うことが重要です。

スマートシティの社会実装に関する取り組みが各地で進む中で、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現するためには、「人間中心(ヒューマンセントリック)」に進めることが不可欠であるとされています。

また、政府が「新しい資本主義」実現に向けた成長戦略、そして、デジタル社会の実現に向けた重要な柱に位置づけている「デジタル田園都市国家構想」においても、「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されず、全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」として、「人間中心のデジタル社会」を理想像としています。

スマートシティの社会実装における「人間中心」の取り組みを実現するためには、その地域の将来のビジョンを示し、地元住民や地元企業を巻き込み、一緒に街づくりを行うことが重要です。

特に「人間中心のデジタル社会」を掲げる「デジタル田園都市国家構想」の社会実装に向けた取り組みにおいては、地元住民を十分に巻き込めていないケースが多く、地域に根付いた取り組みを目指すうえで大きな課題となっております。

「デジタル田園都市国家構想」の社会実装において求められる「人間中心」の取り組みを実現するためには、重要なポイントとしては(1)参画事業者選定における事前の絞り込み、(2)住民の実態把握、(3)住民ニーズに沿った効果的な施策の展開の3つが挙げられます。

1. 参画事業者選定における事前の絞り込み

行政が対応できるリソースに比べて参画事業者数が多い場合には、各社との契約や個別の打ち合わせ対応に追われ、本来やるべき業務の遂行に支障が出る可能性があります。リソースを最大限有効に活用するためには事業者数を絞り込む必要があります。また、その絞り込みにあたっては、住民のニーズを理解し、サービスをローカライズできる余地がある事業者を選出することが重要となります。

2. 住民の実態把握(地域での生活の様子や地域課題に対する解像度の向上)

事業者の中には、プロダクトアウト思考で、既存のパッケージを売って終わりというスタンスの事業者も多く見られます。原因はいくつかあり、「住民と接点がない」「横展開性を重視している」「企業のケイパビリティやリソースが不足している」といった問題が考えられます。参画事業者にはマーケットイン思考が求められ、地域特性や住民のニーズを理解し、サービスを各地域にローカライズしてもらう必要があります。

そのためには、行政が持っている情報(業務で得られる情報や住民アンケート結果など)を提供するだけではなく、住民と対話ができる環境を作り、ニーズを理解してもらうことが重要です。具体的には、日頃より住民と深く関わっている中間支援組織との連携や、事業者の地域イベントへの参加および開催、住民の各種会議への参加などが考えられます。

3. 住民ニーズに沿った効果的な施策の展開

通院や買い物といった生活に必要な移動手段としての自動運転車サービスや、健康寿命を延伸するヘルスケアサービスを地域で展開しても、住民にあまり利用されていないケースが散見されます。これはデジタルを利用する目的が国や行政目線であり、住民の目線ではないことに起因しています。住民目線の目的としては、「家族や仲間と会って話をしたい」「おいしいものを食べたい」「誰かの役に立ちたい」など、より人間の欲求の本質に近いものが多くなります。これらの住民のニーズを理解し、効果的な施策に落とし込む必要があります。

現在、スマートシティの社会実装に向けて、数多くの取り組みが進めています。これら3つのポイントに留意した施策を立案し、実行する中で改善に取り組むことが、地域の住民に寄り添った「人間中心」の街づくりを実現するためには重要となります。

執筆者

長塩 和宏

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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