「スマートシティで描く都市の未来」コラム

スマートシティから建設2024年問題を考える

  • 2024-01-24

建設の2024年問題とは

建設業界は2024年問題という重要な課題に直面しています。これは、2018年から順次施行されている「働き方改革関連法」において、建設業界は残業時間の上限規制の適用に猶予がありましたが、2024年3月末をもってこの猶予が廃止されるのに伴い、時間外労働時間が年360時間に制限されることにより生じる諸問題の総称です※1。建設業界では従来、慣習的に長時間労働と4週4休以下の勤務が常態化し、近年は過酷な労働環境による人材不足、それに関連して人件費の高騰が顕著であり、建設プロジェクトが従前の見立てどおりの期間で完了しない、品質が低下している、予算が不足するといった問題が相次いで発生しています。これらの状況全てが含まれる「2024年問題」※2は、従来の建設プロセスや技術の限界、プロジェクト管理の課題から生じているのです。

デジタルが提供する解決策

このような背景から、国土交通省は2023年5月に「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」※3を公表し、建設業に対して働き方改革への取り組みを促しています。なかでもICTツールの活用は大きな柱であり、デジタル技術を活用して都市インフラや施設運営を最適化するというスマートシティの考え方を計画段階から持つことで、生産性の向上、経営の効率化、長時間労働の是正の実現が期待されています。

生成AIによるさらなる発展

国土交通省は2020年4月に「2023年までに小規模工事を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用する」ことを決定しました※4。しかしながら、実際の設計段階における普及は限定的であり、複数の要素が関わる大規模な計画においてBIM/CIMを活用するにあたっては、多くの課題が残されている状況です※5

そこで期待されるのが、生成AIによる情報の抽出と補完により膨大なデータを高速かつ精密に分析し、最適な意思決定を支援することです。作業スケジュールの最適化、資材の最適な配置、予算の適正管理など、さまざまな側面で建設プロジェクトを効率化することが期待されています。設計段階からデジタルツインを導入すれば、建設プロジェクトを仮想的にモデル化し、プロジェクトの進捗、コスト、資材の想定などリアルタイムで把握できるため、計画のズレに伴う調整が容易になります。また、運用前にデータを収集し、設備の故障予知や作業員の安全管理を行うなど、運用時の問題を事前に把握することで、円滑なプロジェクト運営に貢献することが期待されます。

図表 生成AIを用いた設計イメージ

スマートシティとして、変化に追従しうる建設

スマートシティではさまざまな都市問題を解決するために、インフラやモビリティなど実証実験を通じたアプローチを行います。竣工して終わりではなく、その後も継続して建設的アプローチが続けられるようなプロジェクト運営が求められるのです。そこでデジタルツインやシミュレーションを駆使することで試作中の技術や発展性に追従し、進化に対応しうるスマートシティの実現が期待されます。例えば、開発段階の技術を建築計画に導入するための必要スペースやルートをどの程度採用するかを設計段階から想定することで、将来的な作業を省力化することが可能となります。

未来の都市はスマートで持続可能なものへ

建設業界の2024年問題は大きな課題ではありますが、デジタル技術を活用するスマートシティのコンセプトを計画段階から導入することで、この問題を乗り越えられる可能性が広がります。デジタル技術の進化と建設業界の革新が結びつくことで、未来の都市はより効率的で持続可能なものに変わるでしょう。建設業界がこの変革に積極的に取り組むことで、私たちの生活環境が向上し、持続性のある、より質の高い都市生活が実現されることが期待されます。

※1:厚生労働省「働き方改革関連法等について」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kankouju/kai/chihou_suishin/kuni/mhlw.pdf

※2:国土交通省「建設業における働き方改革」
https://www.mlit.go.jp/common/001189945.pdf

※3:国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr1_000001_00050.html

※4:国土交通省「令和5年度BIM/CIM原則適用について」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001510002.pdf

※5:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/gaiyou.pdf

執筆者

奥野 和弘

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

三沢 裕加

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

Email

「スマートシティで描く都市の未来」コラム

20 results
Loading...

「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第89回:ユーザーの課題・ニーズ起点のスマートシティサービスの考え方

スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。

「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第86回:フレキシビリティを軸に据えたスマートシティが切り開く都市の未来

未来の都市を想定する際には、フレキシビリティを備えた建築計画を事前に策定しておくことが重要です。スマートシティにおける建築物は持続可能であることが求められており、そのためには新たな技術や設備に迅速に適用できることが不可欠です。

Loading...

本ページに関するお問い合わせ