
「スマートシティで描く都市の未来」コラム 第89回:ユーザーの課題・ニーズ起点のスマートシティサービスの考え方
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
スマートシティではICTなどの新技術や官民各種のデータを有効に活用したマネジメントが各分野において行われるため、そのマネジメントはデータドリブンであることが重要です。データドリブンとは、収集したデータを分析し得られたインサイトに基づき意思決定し、アクションを起こすことです。
まず、スマートシティにおいてデータドリブンマネジメントがもたらす効果を、(1)スマートシティ推進主体、(2)産官学のスマートシティサービスの提供者、(3)スマートシティサービスの利用者(受益者)の観点から解説します。
スマートシティの推進主体がデータドリブンであり、オープン性も併せ持てば、意思決定の根拠を明確にして透明性を高めることになり、ステークホルダーとの共通認識を醸成する効果が期待されます。都市が抱える複雑な課題に対応していくには、推進主体を含めたステークホルダー同士の連携が不可欠であり、事実に基づく客観的なデータとその分析結果を共有し、共通認識を持って全体最適を実現していくことが重要です。
さまざまなセンサーやデバイスから大量のデータが生成されるスマートシティにおいては、産官学のスマートシティサービスの提供者がデータドリブンであれば、経験や勘だけでは見落とされてしまうインサイトを導き出すことにより意思決定の精度が向上し、より的確かつ効果的な施策の実施を可能とする効果が期待されます。また、データをリアルタイムに把握して高速にPDCAを回すことで、迅速な対応による課題解決と継続的な改善が可能になると考えられます。
住民を含むスマートシティサービスを利用する全ての個人、法人、行政において、スマートシティがデータドリブンマネジメントのもと推進・運営され、データが可視化された上でオープンに提供されれば、サービス利用者がスマートシティの運営に参加しやすくなることが期待されます。サービス利用者の声や意見がデータとして収集され、スマートシティの意思決定に反映されることで、より包括的かつ民主的な都市の発展が期待されます。
次に、スマートシティがデータドリブンマネジメントを実践していくにあたって必要な(1)戦略、(2)組織文化・人材、(3)環境の基盤について、それぞれの取り組みにおける意思決定という観点から解説します。
意思決定の主体には、スマートシティ全体の方向性や戦略を決定する推進主体の他、その戦略の実行に協力し、支援する産官学のスマートシティサービスの提供者も含まれます。スマートシティにおいて全体最適化を図るには、ビジョンを構築し、推進主体と各サービス提供者が共通認識を持ち、戦略策定や施策実施に係る意思決定の判断軸としてKPIを設定して、方向付けを行う必要があります。KPIの設定にあたっては、バリュードライバーをツリー構造に分解して、共通の目標につながる形で各主体や各階層の意思決定に適したKPIを定め、意思決定に必要なデータを定義することが重要です。
KPIが設定されたとしても、これに基づくPDCAサイクルがしっかりと回されなくては十分とは言えません。KPIが組織に浸透し、PDCAサイクルが回されていくには、データドリブンな組織文化の醸成が不可欠であり、それにはビジネスとデジタルの双方を理解するデジタル人材を担当として配置することが効果的です。デジタル人材を中心にクイックウィンでデータドリブンの効用を示しながら巻き込む人員を拡大すると同時に、デジタルに係る啓発や教育も行い、組織のデジタルケイパビリティを強化していくことが求められます。
推進主体とサービス提供主体が同じデータに基づいて意思決定ができるよう、各分野にまたがるさまざまなデータを収集・蓄積し、連携させるためのデータプラットフォームを整備する必要があります。加えて、データプラットフォームのデータの加工・可視化が可能で、推進主体やサービス提供者の担当者自らが探索や分析を実行できるデジタルマネジメントダッシュボードを構築することが重要であり、それによってタイムリーにデータドリブンな意思決定が可能になります
こうした戦略、組織文化、人材、環境の基盤を備えたデータドリブンマネジメントにより、スマートシティの推進主体および各スマートシティサービス提供者は、タイムリーに深度の深い情報の共通認識を行い、正しい情報に基づく意思決定を実現することが可能になると考えられます。また、サービス利用者においては、スマートシティがデータドリブンに推進・運営されることで、スマートシティの意思決定に参加しやすくなることが期待されます。
スマートシティサービスは国内で多くのプロジェクトが進められており「スマートシティ官民連携プラットフォーム」でも2024年6月時点で286件の掲載が確認できます。多くの実証実験が実施されてきたその次のステップとして、実装化が大きな課題となっています。本コラムでは実装化を進める上で、キーとなりうる考え方を紹介します。
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