Social Impact Initiative 社会を変える旅に出る ―社内外で仲間を集め、コレクティブインパクトを創出していく―

第11回 無関心層を巻き込むための方法

  • 2024-03-28

誰もが最初は無関心層から始まる

企業の担当部署や有志により組成されたボトムアップ組織の人々が社会課題の解決に取り組む上で最も頭を悩ませることの1つに、それらの活動に一切関心を示さない「無関心層」の存在があります。

「人の関心事はそれぞれ異なる」という前提に立つと、無関心層も一定数いるはずであり、「社会課題の解決に気を向けることは、誰かが誰かに強要することではない」と、頭の中で理解はできるでしょう。しかし、実際には無関心層は相当なボリュームを占めており、「その気持ちを動かすことができれば、もっと大きなことができるのに」という歯がゆい気持ちや、「こんなに必死な私たちにしらけているのだろう」という恥ずかしさが混じった何とも言えない気持ちが芽生えてくるのも自然です。

しかし実際によく考えてみると、誰もが最初は無関心だったはずです。正確に言えば「気付いていなかった」、あるいは「知らなかった」はずです。そこに何らかのきっかけがあり、事実に気付き、理解し、考えて行動に移すに至っているのです。

無関心であることも本人の自由であるとして、そのような人たちを「関係のない人たち」とみなすのではなく、「何かに気付くきっかけぐらいは与えられるのではないか」と発想の転換をしてみてはいかがでしょうか。

従来のチェンジマネジメント策との違い

組織や人に変革を起こし、成功に導く「チェンジマネジント」は、企業や組織が時代に合わせて成長し続けるために、社員全員が変革に適応できるように促すような方法論であり、上述の無関心層にもこのチェンジマネジメントの手法が活用できる考えています。

ただ、チェンジマネジメントの手法をそのまま採用するだけでは、社会価値創出の機運を高める変革を起こしていくことは難しいでしょう。なぜなら、従来のチェンジマネジメントの手法が対象としているのは、大きくは経済的価値の最大化を目的とすることが多く、「チェンジ」が売上や収益の向上につながるという点がわかりやすく、達成状況が見えやすいという特徴があるからです。それらに参加することは、社員が果たすべき責任とも捉えられ、参加するかしないかを自らが選択するようなものではなく、経営層からのトップダウンの力が働いていることも特徴です。

一方で、社会課題の解決を目指す取り組みはどうでしょうか。まず、いまその要素がなくても、個も企業も成り立っているでしょう。加えて、人それぞれの興味のあるなしに差があります。経営層についても、企業活動により社会課題を解決することや、社会価値を創出することの重要性には一定の理解を示しているものの、その力の入れ具合はそれぞれの意見があり、経営層が一枚岩ではないことも多々あります。以上の理由から、従来のマネジメント手法をそのまま使っても、あまり上手くいかない考えられます。

ソーシャルチェンジのコンポーネント

実際に社内でソーシャルチェンジを進めるためには、そのために必要な人材像を作ることが重要だと述べました。次はそれぞれのステップに導くための施策を考えていきます。

理想は、社内で有志が集まって、自然発生的に活動を始め、そこに仲間が集まってくるという流れだと思います。しかし、会社や組織にはルールがたくさんあり、そう簡単には進まないでしょう。そのような時には、効果的なソーシャルチェンジ施策を検討する時や、その施策を進める際に、以下の要素を織り込んでいくことをおすすめします。

  • オープン&フラット:思ったことや考えたことを、躊躇せず言える雰囲気があること。また上司部下の関係から離れて、誰もが社会のイチ構成員であり、それらの前では対等であるという空気を作ること
  • エモーション:心を揺さぶられたことや、感情を伴う喜怒哀楽を抑え込まずに表に出すこと。合理的なロジックが伴っていないことを許容すること
  • リレーションシップ:1人で全てを考えようとしないこと。自分が分からないことも誰かが知っているかもしれないと思い、一緒に考えようとする姿勢を持つこと
  • クリエイティビティ:常識にとらわれず、新しい気持ちで見聞きし、何か効果的な案がないかを考えてみること。発散思考を恐れないこと
  • ナラティブ:自分なりの見解を持つこと。そしてそれを誰かに語ること
  • アクション:「何かできることがないか」と考え、小さな行動でも起こせないかを考えてみること

執筆者

下條 美智子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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間世田 豪

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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石川 希

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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多田 祐太

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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