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2023-02-16
DX認定制度の開始から約2年が経ち、主に国内上場企業による認知・認定取得が進むなか、国内企業のさらなるDX加速化のために、2022年9月30日にデジタルガバナンス・コード2.0に改訂されました。国内企業においては、DX戦略立案・ガバナンス整備の手引きとして、デジタルガバナンス・コードとDX認定制度を活用し、DXへの着手およびさらなる加速化につなげている企業が増えてきています。企業価値の向上に資するDXを推進していくには、DXそのものを目的とせず、DXに係るガバナンス・リスクマネジメントの必要性を理解し、形骸化しないための態勢を運用することが求められます。
本稿では、デジタルガバナンス・コード2.0への改訂を受けて、昨今のDX認定制度の動向と課題を踏まえたDX認定の活用ポイントを考察します。
なお、文中における意見に関する記述は全て筆者の私見であることをあらかじめ申し添えます。
デジタルガバナンス・コード2.0は「(1)基本的事項」、「(2)望ましい方向性」、「(3)取組例」から構成され、今回の改訂により、「(1)基本的事項」がDX認定の認定基準となり、「(2)望ましい方向性」、「(3)取組例」がDX銘柄の評価・選定基準として定められました(図表1)。
「(1)基本的事項」では、「2-1. 組織づくり・ 人材・企業 文化に関する方策」について、デジタル人材の育成・確保に係る事項が認定基準に追加されました(図表2)。
図表1:デジタルガバナンス・コード2.0の主な変更の外観
出典:「デジタルガバナンス・コード改訂のポイント」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2-point.pdf
図表2:デジタルガバナンス・コードの改訂箇所
出典:「DX認定制度概要~認定基準改訂及び申請のポイント~」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dxnintei-point.pdf
国内企業の最重要課題の1つと考えられる人材が、DX戦略策定の段階で具体的に考慮すべき事項として追加されたことは、DX戦略の実効性の確保につながるものと期待できます。DXにおける人材育成・確保では、特に、デジタル人材に適した人事制度・人材育成の仕組みの構築に課題があると考えられ、そのような場合には、その成功・失敗の教訓を活かしていくことがポイントになります。認定基準を満たすための人材育成・確保のKPIでは、以下のような指標を開示する企業が多く見られます。
DX推進に取り組む企業においては、DX認定制度の開始以前と比較して、DX戦略の立て方と戦略上押さえるべき基本要素の理解が進んだ印象があります。これは、DX認定制度によって、DX戦略の他社事例が公開されたことと、デジタルガバナンス・コードとDX認定制度に係るガイドラインやQAなどが整備されたことが要因だと考えられます。2022年12月時点で548社が認定を取得しており、この認定事業者のDX認定申請書とともに、その根拠となるDX戦略が、IPAの「DX推進ポータル」に開示されています。認定取得を目指す企業は、開示されている他社の戦略を参考に、自社のDX戦略の策定に活かすことが効果的です。DX戦略の策定においては、どのようなDXの取り組みを、どのようなDX推進・管理態勢によって、いかに既存ビジネスを変革するのかといった一貫性を持たせた戦略のナラティブを可視化していくことが肝要です。
DX認定制度では、その活用が進み、国内企業のDX戦略の質が上がった一方で、認定取得を主目的とした実効性が不明瞭なDX戦略も客観的に見受けられるようになりました。認定基準では、DXの実効性を担保する為の管理態勢の整備が求められておらず、認定更新時の基準でも、DX施策の運用実態の開示を求められていないことが原因の一つではないかと考えられます。DXの実行には、推進・管理態勢の整備と継続的なPDCA運用が重要ですが、現状、その観点は認定基準には明確に含まれていません。
また、認定取得から2年後の認定更新時に、DX戦略およびKPIの整備状況のみならず、進捗状況といった運用実態を公表することも重要だと考えられます。DX認定は当初、DXの普及を一つの目的としていた為、DX推進の準備が出来ている状態を審査基準としていました。しかしながら、DX戦略の運用実態の開示と、DX推進に係る取り組みの整備・運用状況を分析、評価することで、ステークホルダーが客観的にDX戦略の進捗を確認でき、本質的に中長期的な価値の向上につながるものと期待できます。今後、DX認定制度がアップデートされる中で論点になってくるところと推察しています。
DX戦略を具体的に推進していくには、デジタルガバナンスを整備・運用していくことがポイントです。デジタルガバナンスでは、DX戦略・実行計画やDX管理態勢の適切性を確保するために、経営管理者がリーダーシップを発揮しながらDXに係る支援・統制機能を担い、ステークホルダーとの対話・開示を行いながら、DXに係る実態とリスク・機会をモニタリング・評価し、方向づけすることが重要です。デジタルガバナンスを整備するうえで捉えるべき論点は、IIAの3ラインモデルを参考に整理していくことができます(図表3)。
デジタルガバナンス・コードでは、DX推進体制の構築やDX推進に係る課題の棚卸など、執行に係る管理態勢(1線機能)の認定基準が設けられています。一方で、DX推進に係るガバナンス・リスクマネジメントなど、支援・牽制に係る管理態勢(2線・3線機能)については、認定基準に明確には含まれていないことに留意が必要です。執行に係る推進・管理態勢(DX専任組織や委員会等)の整備のみでは、不確実性の高い外部・内部環境を的確に捉え、DX推進を機動的に統制・管理しながら、ステークホルダーが期待する方向にDXをナビゲートする機能が不足する可能性があります。その結果、管理態勢の形骸化・陳腐化が発生し、DX実現が中断または遅延するリスクがあります。実際に、DX認定取得のためにDX専任組織や委員会を設置したものの、活動実態が伴わず組織体が陳腐化している企業も見受けられます。2線・3線機能を含む組織全体での包括的なDX管理態勢を構築・運用することで、DXの実効性を高めていくことも重要と言えます。
図表3:IIAの「3ラインモデル」の各機関の役割における捉えるべき論点
出典:「IIAの3ラインモデル」(日本内部監査協会)
https://www.iiajapan.com/leg/pdf/data/iia/2020.07_1_Three-Lines-Model-Updated-Japanese.pdf
ここまで、デジタルガバナンス・コード2.0への改訂の観点から、DX認定制度の動向と課題を踏まえたDX認定の活用ポイントを考察してきました。昨今、デジタルガバナンス・コードやDX認定制度が挙げられるように、企業がDXを進めるための土壌が国によって整備されています。しかし、企業が成長する為には、それらの認定基準等に甘んじることなく、外部環境、内部環境の変化を分析し、デジタルガバナンスを実行する必要があると考えています。
今後は、国と企業の両輪でデジタルガバナンスのアップデートを推進する風土を醸成することが、DXを推進していく上でより重要になると考えます。