SIGWATCH Ltd. Robert Blood氏対談

グローバルNGOから学ぶ日本企業のサステナビリティマネジメント推進

  • 2024-12-23

複雑化する社会の中で、中長期的な将来社会の変化を予測することはますます難しくなっています。そのような中、グローバルNGOの活動は将来の社会課題を理解するための「アーリーウォーニング」として注目されています。NGOなどのアクティビストはサステナビリティの問題を提起し、現在および将来の課題を特定する重要な役割を果たしています。

PwC Japan有限責任監査法人(以下、PwC Japan監査法人)が現在公開中のオンデマンドセミナー「グローバルNGOから学ぶ日本企業のサステナビリティマネジメント推進」(現在は公開終了)では、長年グローバルNGOの動向をリサーチし、それに関するアドバイスを提供しているSIGWATCH社の創設者兼チェアマンであるRobert Blood氏が、「国際NGO 今日のアクティビズムへの理解と対応」と題して講演を行っています。

また、PwC Japan監査法人のサステナビリティ・アドバイザリー部長パートナーの田原英俊がBlood 氏に対し、日本企業がサステナビリティマネジメントを推進する上でのグローバルNGOとの関わり方について詳しく伺っています。

本稿では、Blood氏の講演の要旨と、Blood 氏と田原の対談の内容をお伝えします。

田原英俊、Robert Blood氏

(左から)田原英俊、Robert Blood氏

登壇者

Robert Blood 氏
SIGWATCH LIMITED
Founder Chairman

田原 英俊
PwC Japan有限責任監査法人
サステナビリティ・アドバイザリー部長
パートナー 

Robert Blood氏 講演「Understanding and responding to today's activism ~ 国際NGO 今日のアクティビズムへの理解と対応」

SIGWATCH Ltd, Robert Blood氏

NGOなどのアクティビストは、サステナビリティの問題提起において重要な役割を果たします。彼らはメディアの関心を引き、市民やステークホルダーと先導して、企業や政府に問題対応を迫ります。彼らの考えを理解することで、企業や政治家が今後直面する課題を把握することができます。

私たちの長年のデータと経験から、NGOは効果的かつ複雑な方法でキャンペーンを展開していることが分かります。彼らは連合を築いて活動し、ステークホルダーを取り込んで企業に圧力をかけます。経験豊富なNGOが好んで使う戦術は、「標的企業」の孤立化です。NGOだけでなく全てのステークホルダーが批判者となり、標的企業を四面楚歌の状態にするのです。その結果、多くの企業は圧力に逆らうことができなくなります。

現在のトレンドを見てみましょう。最近特に目立つNGOの戦術は、農業関連の投資家を標的にすることです。

2019年から2020年にかけては、石油・ガス関連の投資家へのNGOからの圧力が大幅に増加しました。石炭関連に対する圧力も同様のレベルでしたが、COP26での世界的な脱石炭に向けた合意により、2021年末には減少し始めました。そして、NGOはキャンペーンの対象を石炭関連から農業関連に移しました。現在、急浮上している問題は農業です。農業は森林減少や土地利用の変化など、気候変動に大きな影響を与えています。そのため、投資家は今、農業問題に対して石炭問題以上の強い圧力を感じています。

近年の最も重要な変化は、いわゆる「sustainability lite」への攻撃です。これは、企業がサステナビリティを真剣に実行するのではなく、単なるスローガンとして採用するトレンドに対するもので、NGOはこれを「グリーンウォッシュ」と批判しています。

主導的なNGOは米国のさまざまな団体と協力し、「グリーンウォッシュ」という用語を広め、企業や業界を非難する活動を行いました。その結果、グリーンウォッシュに対する規制が制定され、新しい実務指針が生まれました。このキャンペーンの成果は、容認されるサステナビリティ基準を引き上げたことです。グリーンウォッシュが問題になる前は、主張が嘘でない限り「サステナブル」と言えました。現在では、サステナビリティの主張が正直であるか、達成可能かどうかが問われています。

最後に、NGOとの対話についてお話しします。

まず、アクティビストの話を聞く際は、徹底的に耳を傾けることが重要です。彼らの意見を聞くことで、新たなサステナビリティリスクに先手を打つことができます。次に、メディアで目立つ大規模なNGOが必ずしも最も影響力を持つとは限らないことを覚えておいてください。最後に、市場でトップに立つ企業は、NGOが提起するサステナビリティ問題に率先して取り組むべきです。業界にとって重要な問題に対して、自社の知名度と影響力を活用することで、アクティビストから大きな信頼を得ることができます。

主要メンバー

田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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