【入山章栄氏と考える】サステナビリティと企業成長を両立させる方法

多くの企業が、SDGsなどサステナビリティに対する取り組みを強化している。一方で、これらの取り組みの目的や影響に対して、真の理解にいたっていない企業やビジネスパーソンも多いとされている。
 自社の取り組みは、以下の五つの誤解でとどまっていないだろうか。振り返ってみてほしい。

外部へのアピール材料にとどまらないサステナビリティ課題への取り組みとは何なのか。本業を成長させ利益を創出しながら環境・社会価値を高めていくことは可能なのか──。 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授と、著書『SXの時代 究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』を上梓したPwC Japanグループの坂野俊哉氏、磯貝友紀氏が、サステナビリティを軸にした企業戦略について鼎談した。

※本稿はNewsPicksに掲載された記事を転載したものです。
※役職などは掲載当時のものです。

(執筆:森田悦子 編集:奈良岡崇子 撮影:尾藤能暢 デザイン:小鈴キリカ)

Column

事例1 メルカリ

循環型社会を実現し、メーカーのSXに貢献

不用品をスマホで売買できるフリマアプリのメルカリは、地球資源が大切に使われる循環型社会の実現を目指し、代表取締役CEOの山田進太郎氏によって創業された。まずは「不用品をお金に換えられる」「簡単に出品できる」「安く買える」といったメリットを消費者に訴求したことで、月間ユーザー数1,800万人というスケール化に成功している。

メルカリの普及は、人々の普段の買い物に対し「不要になった時にメルカリで売れる高品質なモノ」という判断基準が加わるなど、人々の消費行動も変えてきた。二次流通市場の拡大はメーカーや一次流通との対立を生むようにも見えるが、山田氏は、「メーカーの大量生産・大量消費型のビジネスモデルを、できるだけ長く使える高品質な製品を必要な分
だけつくるというサステナブルなビジネスモデルに転換し、発展を後押ししていきたい」と話す。具体的には、メルカリでどんなものが高値で取引されるかといった二次流通のデータをメーカーに提供し、需要予測や生産計画の最適化、循環を前提とした製品開発に役立てようという取り組みなどがある。また、商品を梱包する資材の増加や配送工程でのCO2排出量の増加といった新たに生まれる課題に対応するためのプロジェクトにも取り組んでいる。

事例2 サントリー

サステナビリティでは競合と共創する

サントリーは創業以来、事業によって得た利益は、「事業への再投資」 「得意先・取引先へのサービス」に加え、「社会への貢献」にも役立てるという「利益三分主義」を貫いてきた。主要製品の原材料であり企業活動の源泉である水資源を将来にわたり守るための「天然水の森」活動を2003年にスタートし、「国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水の涵養」という目標を2019年に1年前倒しで達成するなど、さまざまな領域で先進的な取り組みを継続している。2020年6月には、競合や異業種含む12社と共同出資で、使用済みプラスチックの再資源化事業に取り組む新会社「アールプラスジャパン」を設立。2021年5月時点で出資企業は25社に拡大した。競争ではなく共創でリサイクルによる再生循環の道を切り開こうとしている。

社長の新浪剛史氏は「ペットボトルを回収するルールなども、業界のリーディングカンパニーが協力して仕組みを作れば業界に浸透していく。競合とは戦う領域と、力を合わせる領域を明確にしていくべき」と指摘する。日本では、サステナビリティに関してプレミアムを払ってもいいと考える「グリーンコンシューマー」が欧米ほど多くないことについても、「業界で協力することで環境対応のコストを下げ、入手可能な価格設定にしていく間にグリーンコンシューマーは増えていくだろう」と話す。

事例3 三菱UFJフィナンシャル・グループ 

業務ありき、の発想を逆転

三菱UFJフィナンシャル・グループは2020年5月に、サステナビリティの推進強化と責任の明確化を目的にチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)を任命した。グループ内のSX経営支援機能のハブとなるサステナブルビジネス室では、顧客企業のESG戦略に沿った目標を設定し、達成状況に応じて金利が変動する融資商品が成約件数を伸ばしている。

また、投資判断においても、財務リターンに加えて環境社会インパクトを加味した「サステナブルビジネス投資戦略」に基づき、先進的なファンド2本への投資を実行。さらに、事業収益性のみならず雇用創出や貧困の解消など社会的インパクトを評価した海外企業への出資を行った。

取締役代表執行役社長グループCEOの亀澤宏規氏は、サステナビリティ経営の考え方として、「これまでと順番を逆にする」と説明する。「顧客へ行った 融資が環境や社会にどう影響するかを後から考えていた従来の発想を転換し、まずそれぞれの 事業領域において直面している社会課題は何かを考え、それに対して各事業本部が持つソリューションやネットワークを生かしてどう解決に導くか、という順番で考えるようにしています」。

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SXの時代

主要メンバー

磯貝 友紀

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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