テクノロジー業界のコンサルタントが語る テクノロジー業界の未来トレンド予測から導出する業界課題とその対策

第8回◆クライアントとともにグローバルで急速に変化し続けるエレクトロニクス業界を勝ち抜く

  • 2024-12-17

変化の見通しが難しく戦略が立てにくい

影山:
エレクトロニクス業界内の取り組みについてお聞かせください。

茂又:
これまでの主なテーマは、「製品の高度化」と「生産性の向上」の2点でした。成長するマーケットの中で、エンジニアリングとオペレーションの力を磨き上げる、それを支える人材育成と資金確保を行うという明確な目的のもと、各職制で役割を分担して進めてきました。

影山:
さまざまな課題がありつつも、企業に求められることや、企業として目指すゴールは明確だったわけですね。

茂又:
そう思います。変化を細かく見れば、ローカルデマンド、CASE、ネットワーク、UX改善への対応などその時々で重要な課題がありますが、生活を豊かにするツールの形は過去30年間で大きくは変わっていません。職制で定めるそれぞれの活動に邁進し、与えられた役割を果たせれば企業としては大きく迷うことなく成長することができたのです。

影山:
現在はどのように変わったのでしょうか。

茂又:
外部環境を見ると、現在のビジネス環境は大きく3つの変化に直面しています。1つ目は世界の分断化にみられる地政学的な変化、2つ目は人口動態の変化とテクノロジーの進化による社会構造の変化、そして3つ目は気候変動に代表される環境問題です。これらの変化により、ビジネス環境は非連続で不確実性が高い状態に変わりました。その影響によって、企業として目標が定めにくくなっています。PwCが世界のCEOを対象として行ったサーベイ(第27回世界CEO意識調査)でも、6割を超す日本のCEOが今のビジネスモデルのままでは10年後の自社の存在が危ぶまれると答えています。

影山:
それくらい不確実性が高い社会なのですね。その中を生き残っていくためにはどのような意識の変革が求められますか。

茂又:
従来から継続してきたエンジニアリングとオペレーションの力を磨き続けつつ、企業として提供する価値やコアコンピタンスは何かを定め、必要に応じて事業方針のピボットを試みる柔軟性を許容していくことが肝要になるはずです。レジリエンスや短期的な収益性の向上に力を入れるだけでは、もはや十分ではありません。企業は、生き残りと成長に向けた変革を進める必要があるのです。

影山:
エレクトロニクス業界内の各社はその重要性を認識しているのでしょうか。

茂又:
はい。業界全体の傾向として新しいアイデアや成長に資する施策を進めています。例えば、「Race to Rebalance」の考え方で、サプライチェーンのリバランスを目的として、新たなサプライヤーを開拓したり、事業拠点を見直したり、グローバルでの人材獲得に力を入れている企業があります。ただし、不確実性が高くなるほど、未来に向けて覚悟を持って進めることが難しくなります。そこで迷いが生じることによって変革のスピードや深さが不十分になってしまっているケースもあります。

専門性を結集する伴走支援が強み

(左から)茂又 弘訓、影山 葉彩

影山:
不確実性が高い社会と大きな変化のトレンドの中で、PwCコンサルティングはエレクトロニクス業界に向けてどのような価値を提供できますか。

茂又:
私たちはグローバルで通用する新しいビジネスモデルの研究を続け、これからの勝ち筋となる可能性が高い6つのモデルを提唱しています。このフレームワークを使ってクライアントのリーダーと密に連携し、ビジネスモデルの再発明(Business Model Reinvention)を支援しています。Business Model Reinventionは、価値の創造と提供を通じて、収益性と成長性を高める戦略を根本的に変えることを指します。例えば、クライアントの戦略を実現するMinimum Viable Product(MVP)を開発し、それをスケールさせていくことでBusiness Model Reinventionを実現するのが方法の1つです。

影山:
勝ち筋はどのような研究を根拠として考え出しているのですか。

茂又:
私たちの企業研究は、テクノロジー活用、マネタイズ、マーケットリーチ、製品やサービス特性のアイデアを出発点としています。これらを踏まえて、事業戦略、オペレーションモデル、ファイナンシングモデル、組織モデルなどの戦術の立案、試行、展開、定着を伴走支援しています。

影山:
伴走支援の過程では、さまざまな専門知識も必要です。その点で、PwC JapanグループやPwCグローバルネットワークは、エレクトロニクス業界以外の支援実績も多く、監査や税務などを専門とするメンバーファームが多いことも強みですね。

茂又:
そのとおりです。クライアントの課題が複雑化している社会では、常に新しい解決策を創出する必要があります。そのためにはエレクトロニクス業界に特化した専門性やメソドロジーのみならず、テクノロジー、思索的未来デザイン、M&A、税務、法務などの専門家を有機的にテーラリングする必要があります。私たちは、法人や国・地域の枠を超え、メンバーやメンバーファームが持つ知見と機能を掛け合わせ、横断的にコラボレーションするxLoS(クロスロス)と呼ぶ活動を重視して課題解決に取り組んでいます。PwCの集合知と外部情報を統合知に変えて、ファクトとシナリオに基づく経営の判断と変革をクライアントと一緒に描いていくことは私たちの強みの1つです。

影山:
今後の業界の変化と、PwCコンサルティングの支援について教えてください。

茂又:
エレクトロニクス業界では、事業再編やM&A、アライアンスを通じたエコシステム再編が第1の変化として進んでいます。第2に、欧米企業に加え、資本力をレバレッジした中国や韓国企業の台頭、インドも含むグローバルサウスからの新興国企業の参入により、グローバル競争が一層激化しています。そして第3に、これらの変化に対応するため、経営課題の明確化とスピーディーな実行が求められています。私はこれらの変化を捉え、クライアントとともに実践的な解決策を見いだす変革の支援を行っていきます。

影山:
不確実性の中で勝機を捉えて成長していくエレクトロニクス企業の支援はTMTとしてもメンバーとしても魅力が溢れていますね。本日はありがとうございました。

主要メンバー

茂又 弘訓

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

影山 葉彩

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

Email

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