{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.title}}
{{item.text}}
テクノロジーが急速に発展し、複雑な環境変化を引き起こしている昨今、リスクに迅速に対応しうるデジタルガバナンス態勢の整備および継続的な運用の重要性はいつになく高まっています。一方、事業やビジネスの変革を逃さない“攻めのデジタル戦略”を実現するためにも、デジタルガバナンスの強化が企業にとっての重要課題のひとつとして浮上しています。本対談では、この領域での支援に豊富な経験を有するTechnology & Digital Consultingチームのディレクター本田弦と、アソシエイト五十嵐ゆうまが、デジタルガバナンスの本質やPwCコンサルティングの取り組みについて語り合いました。
対談者
PwCコンサルティング合同会社
Technology & Digital Consulting/Technology Advisory Service
ディレクター
本田 弦
PwCコンサルティング合同会社
Technology & Digital Consulting
アソシエイト
五十嵐 ゆうま
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
(左から)五十嵐 ゆうま、本田 弦
五十嵐:
本日はTechnology & Digital Consulting(以下、TDC)のディレクター本田弦さんに、「テクノロジー活用を促進するためのデジタルガバナンス/デジタル戦略の重要性」というテーマでお話を聞きたいと思います。
まず、言葉の定義から始めさせてください。一般的にデジタルガバナンスは「情報資産を最適な方法で管理するために、プロセスやポリシーを整備すること」と定義されています。本田さんはどのように解釈・定義されていますか。
本田:
ガバナンスという言葉は「統治」「支配」「管理」などと訳されます。ビジネスシーンで多用される「コーポレートガバナンス」においてもその要件としての「監査」をイメージされる方が多く、ルールや制度で組織を管理、監視するイメージがあるのではないかと思います。
デジタルガバナンスという言葉にも「コントロールする」「ルールを設ける」などの意味合いが含まれます。ただ私はより広い意味合いで解釈することが正しいと考えており、「デジタルを組織として正しく、機動性を持って健全に活用できるようにすること。またそのための態勢や機能を確保すること」と定義しています。
今や企業が経営戦略や事業戦略を実現するためには、デジタルテクノロジーの存在は不可欠です。そしてデジタルの力を有効活用するためには、自己評価・客観的評価を行う体制を構築するとともに、日々強化・改善していくことが重要です。デジタルガバナンスとは、その評価・改善・強化のサイクルを回せるようにすることであると考えています。
五十嵐:
本田さんの定義に当てはめれば、守りのイメージが強い「デジタルガバナンスの強化」という文脈においても、攻めの要素が含まれることになりそうですね。
本田:
はい。例えばコーポレートガバナンスには、組織の管理・統制以外にも、企業活動の透明性を高めてより良い方向に進めるという目的があります。デジタルガバナンスに関しても同様であり、やってはいけないことをルールで縛るだけでなく、組織および所属メンバーが安心して健全にデジタルを活用できるようすることに本来の目的があります。
デジタルガバナンスを進める活動には、デジタルを有効活用する環境づくりや、デジタル技術の活用に対するインセンティブ設計なども含まれます。
またデジタルツールの進化や外部要因の変化が著しい昨今のビジネス環境において、戦略の立案と見直しを円滑化するガバナンス体制を構築することは、事業の硬直化を防ぐことにも寄与します。それらのメリットを加味すれば、守りの要素だけではなく、攻めの要素も多分に含まれていると思います。
PwCコンサルティング合同会社 Technology & Digital Consulting/Technology Advisory Service ディレクター 本田 弦
五十嵐:
デジタルガバナンスを遂行する上で重要な要素についてはどう考えますか。企業が注力すべきポイントについて教えてください。
本田:
米情報システムコントロール協会(ISACA)とITガバナンス協会(ITGI)は、デジタルガバナンスの成熟度を測るフレームワーク「COBIT」を提唱しています。
そのCOBITでは、EDMサイクル(評価:Evaluate、方向付け:Direct、モニタリング:Monitoring)をしっかり回していくことを、デジタルガバナンスの重要な要素に位置づけています。言い換えれば、IT・デジタル関連の活動をしっかり評価しながら、事業戦略の方向性に沿って実行に移すサイクルを繰り返していくことが重要であるという指摘です。
なおEDMサイクルはまず評価から入るのですが、私としては先に方向づけの部分で戦略をしっかり示し、それに沿った形で活動ができているかモニタリングし、評価する順で仕組みを確立させてくことが重要であると考えています。
EDMサイクルを回すための機構や枠組みづくりという大前提が完了した後、デジタルガバナンスを進める段階では、組織の戦略や事業戦略の実現に資するデジタル戦略を策定することに注力すべきでしょう。
その際、単に既存のITサービスの延長ではなく、組織が目指す姿を実現するためのデジタル戦略や、事業に貢献し得る最新デジタルテクノロジーの活用方法を提言することが求められます。さらに、その提言を実効性のある形で実現できる計画にまで落とし込むことも重要なポイントです。
なお、デジタル戦略を策定する際にテクノロジーに固執しすぎると、ツールやシステムを導入することが目的となってしまい、事業とのシナジーは得られにくくなります。逆に提言が事業の方向性と合致していれば、デジタル戦略もおのずと良いものになるでしょう。
五十嵐:
システム導入そのものが目的となってしまい、実現したかった経営戦略がおざなりになるという状況はよく見聞きします。戦略と方向性をマッチさせることがなにより重要であるという指摘は、私自身も改めて意識していきたいと思いました。
次にデジタルガバナンスを推進する際に、企業担当者や意思決定者が意識すべき点について見解があれば教えてください。
本田:
冒頭の定義の話に戻りますが、デジタルガバナンスは問題が起こらないようにするためのルール整備であると同時に、より本質的にはデジタルの力を組織に活かしていくための仕組みづくりです。言葉のイメージに流されず、その本質を理解するだけでも、デジタルガバナンス推進の成果は大きく変わるはずです。
五十嵐:
デジタルガバナンスを推進するためには、その重要性を企業経営層だけでなく従業員やユーザーにも理解してもらう必要があると思います。そのためには、どのような取り組みが有効でしょうか。
本田:
戦略を描くだけでなく、しっかりと計画・実行に落とし込み、システムの効果を事業に対して責任を持って提供していく取り組みが必要でしょう。特に従業員やグループ会社がメリットを早期に享受できるクイックウィンな施策を段階ごとに定義・実行することは、とても有効な取り組みだと思います。短い単位で刈り取れる成果を提供していくことで、戦略に沿った活動を実行することの意義を感じてもらいやすくなるからです。
なおその際、必ずしもガバナンスの重要性を重ねて訴える必要はないと思います。むしろ、戦略と実行・モニタリング・評価・戦略のアップデートというEDMサイクルを着実に回しながら、統治されたデジタルテクノロジーの活用環境をつくることを意識していくべきです。
五十嵐:
人材に対する意見も聞かせてください。生成AIをはじめ、昨今ではデジタルサービスやツールの発展は目まぐるしいものがあります。デジタルガバナンスを推進する人材は、それらデジタル技術への理解が深い人がより好ましいのでしょうか。
本田:
たしかにデジタルツールや最新技術の動向を深く理解している人材がいるに越したことはないでしょう。自身でツールを活用した経験が豊富で実装面にも詳しければ、具体性を持った実行計画を練ることができるからです。
一方、評価などの観点では、ツールを導入したことではなく、その先にある事業にどういう価値やメリットをもたらしたのか、あるいはユーザーにどのような効果が得られたのかを検証しなければなりません。その際には、事業そのものや従業員が行っている活動や業務内容をしっかり理解していることが重要になります。つまり、ビジネスに対する知見が不可欠です。
デジタルガバナンスを推進するプロジェクトにおいては、少なくともリーダーのポジションにいる人材は、ビジネスとテクノロジーの両面を理解していることが望ましいでしょう。
PwCコンサルティング合同会社 Technology & Digital Consulting アソシエイト 五十嵐 ゆうま
五十嵐:
ここまでデジタルガバナンスに対する理解や、一般的なソリューションについてお伺いしました。次にデジタルガバナンス推進に関するコンサルティング事例を教えていただけますか。
本田:
私たちのチームが関わっている案件は、多かれ少なかれデジタルガバナンスの要素を含んでいます。なかでも個人的に印象的だったのは、会社として大きな変化を迎えようとしていたクライアントのプロジェクトです。
クライアントは、10年以上前につくられたITの規定では大規模な組織再編に耐えられないと考えており、組織全体の規定を抜本的に見直すことを求めていました。
規程というとルールで縛るイメージが強いですが、同プロジェクトでは組織全体で絶対に守るべきルールを見極めると同時に、それまで明文化されていた細かい規定を分類し、その責任の所在を明確にしました。
結果、新規事業開発においてデジタルテクノロジーを積極的に活用するなど、ポジティブな流れが生まれました。組織の方向性に沿ったデジタルガバナンス体系を構築できたことで、改定時の意図が組織にしっかり伝わった実感があります。
なお、デジタルガバナンスの方向性の打ち出し方は戦略に沿うべきだとお伝えしましたが、ルールや規定づくりはその方向性の伝え方のひとつだと思います。規定を見直すことによって方向性が組織に浸透していき、柔軟に変化に対応することができるようになるということを改めて認識しました。
五十嵐:
規定を精査するともに、役割を明確化する。また認識合わせや現場に対して説明を落とし込む作業はとても大変なのではないかと想像します。
本田:
そうですね。文言のひとつひとつや文章の構造・構成の議論に時間をかけることが重要だと思います。また、海外への展開では、日本語の微妙なニュアンスを英語に変換する必要があります。
五十嵐:
本田さんはデジタルガバナンス支援におけるPwCの強みをどのように捉えていますか。
本田:
ITの組織は単体で存在しているわけではなく、デジタルガバナンスも事業の形や組織全体のガバナンスのなかで成立しています。そのため、テクノロジーだけ分かっていても、良いデジタルガバナンスを構築することはできません。前提として組織の規程・ルールを読み解き、現在のポリシーや組織全体のガバナンスを理解することが必要となりますし、特に攻める部分に関してはビジネスや事業の戦略とのアラインが重要です。
PwCにはテクノロジーのみならず、ビジネスやコーポレートガバナンスを支援するチームが複数あります。それらチームの知見を掛け合わせて、全方位的にデジタルガバナンス推進を支援できることがなによりの強みではないでしょうか。
五十嵐:
デジタルガバナンス分野でキャリアを築きたい人材に向けて、本田さんの立場からアドバイスをお願いします。
本田:
まずデジタル技術やデジタルの本質に興味を持つことは、デジタルガバナンス分野でキャリアを築いていくためにとても重要だと思います。そして、デジタルガバナンスは単純なサイクルではあるものの、デジタル技術以外にも関連する要素がたくさんあります。クライアントが抱える課題の原因を発見・解釈・解決していくというスタンスに立ち、各要素の関連づけや分析をしっかり行う能力が求められます。
経験しないと身につかない能力も多いとは思いますが、好奇心と興味を持って考察するスタンスや能力を磨いて欲しいと思います。
五十嵐:
最後にデジタルガバナンスの推進・強化を支援していくにあたり、PwCコンサルティングやチームの展望について聞かせてください。
本田:
デジタルガバナンスはテクノロジーを活用するために不可欠であり、その強化は組織が成長していくためのドライバーになります。TDCは、クライアントのデジタルガバナンスを推進・強化するために必要なケイパビリティを豊富に有しています。
テクノロジーを活用して事業や組織をより良くしていくことがデジタルガバナンスの本質。クライアントのCIOやCDOとより良いデジタルガバナンスについて一緒に構想しながら、実行面でも支援していける存在・組織を目指していきたいです。
五十嵐:
デジタルガバナンスの本質に始まり、その具体的な推進に関わる話はとても参考になりました。本日はありがとうございました。