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2024-06-27
世界各国にグループ拠点を持つ大企業にとって、システムやアプリケーションのロールイン/ロールアウトを行うグローバルITプロジェクトは、全社的なDXを実現するための重要な取り組みの1つです。PwCはクライアントの国内外拠点をまたぐグローバルITプロジェクトに伴走し、システムの構想・開発・導入・展開における課題解決を支援しています。
本対談では、世界各国でプロジェクトをリードしてきたEnterprise Transformation - Technology Allianceチームのディレクター・大野元嗣とアソシエイトの大谷彩乃が、グローバルITプロジェクトの特徴やその進め方、各国の現場でコンサルタントが果たすべき役割について語り合いました。
対談者
PwCコンサルティング合同会社
Enterprise Transformation - Technology Alliance
ディレクター
大野 元嗣
PwCコンサルティング合同会社
Enterprise Transformation - Technology Alliance
アソシエイト
大谷 彩乃
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
(左から)大野 元嗣、大谷 彩乃
大谷:
本日は「グローバルITプロジェクトの進め方」をテーマに、Enterprise Transformation - Technology Allianceチームのディレクター・大野元嗣さんに話を伺います。PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)はクライアントの国内拠点だけでなく、海外拠点向けの支援も行っています。大野さんはさまざまなグローバルITプロジェクトをリードされてきましたが、これまでどのような案件に関わってこられたのでしょうか。
大野:
グローバルITプロジェクトでは主に、日系グローバル企業のアプリケーションやツールのロールイン/ロールアウトを担ってきました。
例えば、クライアントのアジアのある国の拠点を対象にERPやCRMなどの業務パッケージを導入して3カ月程度で数カ国に展開するプロジェクトや、市場にパッケージが存在しない特定業務に特化した業務アプリケーションの構想策定・構築・グローバル展開を数年かけて実施するプロジェクトなどがそこに含まれます。
具体的な役割としては、プロジェクトマネージャーとして、クライアントとともに計画を策定したうえで、PwCの国内外のリソースを組み合わせて体制を構築し、プロジェクト全体の推進を担うことが多いです。
大谷:
さまざまな企業のロールイン/ロールアウトを担ってきたというお話ですが、国内に閉じたプロジェクトと比較して、グローバルITプロジェクトをリードする難しさはどこにあるのでしょうか。
大野:
国内ユーザーと海外ユーザーのビジネスカルチャーや常識が異なる点は、プロジェクトの難易度を高める要因の1つです。傾向としては、日系グローバル企業の国内向けロールイン、アジア拠点へのロールアウトは比較的スムーズに進むことが多いですが、欧米へのロールアウトは難易度が高まり時間がかかる印象です。
大谷:
なぜ欧米へのロールアウトの方が難しいのでしょうか。
大野:
日本と欧米における業務プロセスやシステムの発展度合いや成熟度、またそれらに対する考え方の違いが大きな理由となっています。日系グローバル企業を支援する際、アジア諸国では日本の業務プロセスやシステムの方が発展していると捉えられることが多いです。そのため、日本の方法論や進め方について抵抗感がそれほどありません。
かたや欧米は自国の業務プロセスやシステムに自負を持っており、日本のやり方をそのまま踏襲しようとすると受け入れられないばかりか、ハレーションが生じるケースも少なくありません。また日系グローバル企業であっても、海外拠点の売上比率が高い場合には日本のやり方を受け入れてもらうことが難しくなります。
大谷:
海外拠点の業績が日本よりも良い場合、自国の業務システムやプロセスを優先したいと考えることは自然なことに思えます。そこで日本のやり方を受け入れてもらい、グローバルレベルでシステムやツールを標準化するメリットはどこにあるのでしょうか。
大野:
メリットは大きく2つの観点に分けられます。
まず共通の業務プロセスやシステムを採用することで、グローバルで共通認識を持ったうえでビジネスの展開が可能となります。これはコンサルティングの世界でもよく使用される方法論やフレームワークと通ずるところがあり、ビジネスを共通言語で進める際に有用です。
もう1つは、システムのメンテナンスや運用に関わる側面です。グローバルで利用されているERPやCRMなどの業務パッケージは、グローバルのベストプラクティスをパッケージ機能として具備しています。しかし自社固有の業務に固執するあまり、パッケージの標準機能を大幅にカスタマイズするケースがあります。これは開発コストの負担増に加え、パッケージのバージョンアップ時の制約となり、新機能のメリットを享受できない状況につながります。
なおこの問題は海外展開に限らず、国内展開でも同じことが言えます。全体的な傾向としては、世界各国では「Fit to Standard」という考え方がよく取り入れられています。つまり、業務をシステムの仕様に合わせる企業が多い一方、日本は固有の業務があるとカスタマイズしたがる傾向が強いです。
大谷:
私も大野さんがリードするプロジェクトに参画させていただく機会がありますが、カスタマイズを可能な限り避け、グローバルでの標準化を推奨する背景にはそのようなメリットがあるのですね。
大野:
ただし、グローバルで業務やシステムを統一しようとすると時間と工数がかかります。そのため、本当に統一する必要があるのかメリット・デメリットを事前によく確認すべきでしょう。例えば、クライアントからよくいただく要望として、「グローバル横断で最新の情報を参照できるようにしたい」というものがあります。しかし実際には、誰がいつ何の目的で利用するのかまで決まっていないケースが散見されます。仮に要望を実現するのであれば、実際の業務・運用設計までしっかり落とし込む必要があるでしょう。
PwCコンサルティング合同会社 Enterprise Transformation - Technology Alliance ディレクター 大野 元嗣
大谷:
グローバルでのシステム標準化にはさまざまなメリットがあるものの、その成功は一筋縄ではいかないということを理解しました。グローバルITプロジェクトを成功させるために、私たちコンサルタントはどのような点を意識すべきでしょうか。
大野:
クライアントの要望を単純に実現するだけでなく、第三者視点でシステム標準化の是非をしっかりと精査することでしょう。そのうえで本当に必要な要件を計画に落とし込み、グローバル全体のチェンジマネジメントを含めた実行支援を行うのが私たちコンサルタントの役目であると考えています。
大谷:
グローバルでロールイン/ロールアウトすることが最終目的ではなく、しっかり使えるシステムになるよう落とし込むことが重要であるという指摘ですね。大野さんが支援を行う際には、その他にどのような点を意識していますか。
大野:
国内だけではなく海外のステークホルダーを特定し、プロジェクトの初期段階から信頼関係を構築して意見を吸い上げることを強く意識しています。特にプロジェクトが大規模であればあるほど、コミュニケーションプランはより綿密に練る必要があるというのが私の経験則です。
以前、ある日系グローバル製造業のクライアントから、あまり世の中に出回ってないシステムをつくりたいという依頼をいただいたことがあります。PwCが構想策定からグローバル展開まで伴走した、あしかけ3年の長期プロジェクトでした。
システムを展開する地域の順番を議論したところ、クライアントからは「欧米はすでに既存のシステムがある。まだシステムがないアジアの数カ国を優先したい」という要望が挙がりました。そのため私たちは日本でまず要件を定義し、アジアの要望を取り入れた後にグローバルのシステムをつくり、欧米にロールアウトするというプロセスを踏むことにしました。すると欧米に展開する際に「私たちの意見を初期段階から取り入れればより良いシステムつくれたはずだ」という意見が噴出して、システムの導入が難航したという事例があります。
大谷:
実際に欧米でハレーションを経験して、プロジェクト初期段階から海外のステークホルダーを巻き込む重要性について意識するようになったのですね。
大野:
はい。大谷さんがジョインしたグローバルプロジェクトでも、初期段階から欧米メンバーと一緒に計画を立てましたよね。
日系グローバル企業であっても、必ずしも海外拠点に対してガバナンスを効かせられているとは限りません。そのため、日本と海外のパワーバランスや、どの国の声が大きいかなど、事前に調べて最初にコミュニケーションプランを練ることが重要になるのです。事前にそれぞれの国のメンバー全員を訪問することが難しい場合、グローバルミーティングを実施するなどの方法も有効だと思います。
PwCコンサルティング合同会社 Enterprise Transformation - Technology Alliance アソシエイト 大谷 彩乃
大谷:
グローバルITプロジェクトを支援するために必要なケイパビリティやスキルについて、大野さんの考えを教えてください。
大野:
基本的には国内クライアントを支援するケースと同様で、必要なケイパビリティやスキルはそれほど変わりません。ただグローバルの場合、国によって商習慣やカルチャーが異なるという点は前もって意識すべきです。例えば、日本でのコミュニケーションは雰囲気や相手の考えを察することが重要ですが、海外では相手のことを理解する姿勢に加えて、自身の考えをしっかり言語化して伝えることが求められます。当然ですが、そのためには高い英語力を持っている方がよいでしょう。
大谷:
私は学生時代に海外留学経験があるのですが、言語に加えて文化の背景を理解することの重要性はとても身に染みています。今後も、ビジネスシーンで活用できる英語力を習得するため努力していきたいと思います。もし大野さんがコミュニケーションや文化理解を深めるために実践されていることがあれば、お聞きしてみたいです。
大野:
私の場合はプロジェクトの初期段階で先方を訪問し、対面でミーティングを行うことを実践しています。「百聞は一見にしかず」ではないですが、10回のオンラインミーティングよりも1回の対面ミーティングの方が距離を縮めるために効果的だと思っています。また海外拠点の方々と接する際は、日本にいる時よりも自分から積極的に話しかけるなど、機会を逃さないようコミュニケーションを取ることを意識的に心掛けています。
大谷:
これまでグローバルITプロジェクトに関する知見について共有いただきましたが、なかでもコミュニケーションの重要性については改めて認識させていただきました。では、大野さんは「PwCだからこそクライアントに提供できる価値」についてはどう捉えてらっしゃいますか。
大野:
PwCの強みはそのネットワークと知見・人材の豊富さです。151カ国におよぶグローバルネットワークと約36万人のスタッフを擁しており、高品質な監査・税務・アドバイザリーサービスを提供しています。また「Strategy Through Execution」というスローガンに則り、多様な分野や世界各国から得た知見と多才なスタッフを組み合わせ、計画の策定から実行までグローバルレベルで最適な支援を行えることも強みだと思います。
大谷:
グローバルITプロジェクトを進める際に、クライアントの海外拠点がある国のPwCメンバーと協業することもあるのでしょうか。
大野:
プロジェクトの期間や性質によってケースバイケースですが、支援の品質を高めるために最適な体制を構築しています。例えば、1カ国3カ月程度でシステムを展開していくようなプロジェクトでは、現地スタッフにスキルトランスファーする時間を使うことは効率的ではありません。そのため、日本のスタッフが出張ベースで対応します。一方、数年にわたるような長期プロジェクトであればグローバルメンバーをミックスして体制をつくり、日本と海外で同時に支援していきます。
大谷:
最後に若手メンバーに向けてアドバイスをいただきたいと思います。今後、新卒や中途でPwCコンサルティングに入社される方々も本対談をご覧になると思いますが、グローバルで活躍していくために若手が培うべき経験・能力について教えてください。
大野:
さきほど英語の重要性について言及しましたが、それに加えて専門性を強化していくことがグローバルな舞台で活躍するためには欠かせません。英語はあくまでツールの1つ。そもそも日本語で専門性を発揮できるケイパビリティがあってこそ、英語というツールの活用の幅も広がるでしょう。専門性に関しては「あるシステムに詳しい」「ある業界の業務に詳しい」など、どのようなものでも構いません。自分自身が自信を持てる武器を持つことで、活躍の機会はぐっと増えるはずです。
とはいえ、誰しも最初から高い専門性を発揮して仕事をこなすことは難しいでしょう。かくいう私自身も、英語には自信があったものの、若い頃は知見や経験が足りないがために、うまく期待に応えられず悔しい思いをしたことがたくさんあります。
PwCには常にグローバルプロジェクトが一定数あり、業務面でもテクノロジー面でも助言をくれる上司・先輩がたくさんいます。またグローバルにオフィスやネットワークがあるだけでなく、組織的にコラボレーションする文化が根付いており、専門外のことを相談すると国内外問わず多くのメンバーが情報提供をしてくれます。充実したサポート体制のなかでスキルを身に付けながら、グローバルプロジェクトにトライしてほしいですね。
大谷:
グローバルITプロジェクトを円滑に支援するためには、文化理解やコミュニケーションプランが重要である、また言語だけでなく専門性を洗練させていくべきという学びを、今後の仕事に生かしていきたいと思いました。本日はありがとうございました。
(左から)大谷 彩乃、大野 元嗣