
データ駆動型DevOpsの具体的アプローチと成功のポイント 市場変化への迅速な対応
市場環境やビジネス要求が絶え間なく変化するなか、企業が迅速な対応と高い柔軟性を獲得するには、DevOpsとデータ駆動型アプローチの融合が有効です。本レポートでは、国内外の成功事例を参照し、データ駆動型DevOpsを実現するための具体的なアプローチを紹介します。
2021-10-01
「モノが売れない時代」と言われて久しいですが、売れない要因の1つには、消費者のモノに対する意識の変化が挙げられます。消費者の視点はモノの「所有」から、プロダクトやサービスを通して得られる「体験価値」へと急速にシフトしています。企業はこれらのニーズに対し、迅速に対応しなければなりません。このような状況下で注目されているのが、「サブスクリプションビジネスモデル」です。本稿ではPwCコンサルティング入社3年目でアソシエイトの松浦理史が、PwCコンサルティングでサブスクリプションビジネスの支援を手掛けるパートナーの福田健に、サブスクリプションビジネスの基本からその将来性、PwCが提供するサブスクリプションビジネス支援ソリューションの詳細まで、多岐にわたって話を聞きました。
登場者
PwCコンサルティング合同会社
パートナー
福田 健
PwCコンサルティング合同会社
アソシエイト
松浦 理史
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
(左から)福田 健、松浦 理史
松浦:「なるべくモノを持ちたくないから“サブスク”にする」という声を最近よく聞きます。最初に基本的な質問ですが、なぜ、さまざまな業界がサブスクリプション(以下、サブスク)に注目しているのでしょうか。
福田:1つはビジネスモデルの変化です。
サブスクと言えば、音楽や動画の配信サービスが有名です。これに加えて、最近では洋服や食品、自動車など、これまで「モノ(製品)を売って利益を得る」というビジネスモデルで発展してきた業界が、「モノがもたらすサービス(コト消費)を提供する」というサブスクビジネスに参入するケースが増えてきました。
もう1つは、サブスク市場の高い成長性です。サブスクでサービスを提供している企業のうち、20~30%の企業はコロナ禍においても収益を伸ばしています。もちろん、減収となった企業もありますが、その下げ幅は「モノ売り」だけを手掛けている企業よりも小さいという統計が出ています。
出典:Subscription Impact Report:COVID-19 Edition(Zuora)
松浦:これも基本的な質問なのですが、サブスクは以前からある「リース」のビジネスモデルと「モノを所有しない」という意味で、同じに見えるのですが何が違うのでしょうか。
福田:サブスクとリースのビジネスモデルの大きな違いは、契約の性質です。サブスクは「料金を支払うことにより、一定期間サービスを受けられる」ビジネスモデルを指します。一方、リースは「モノを持っている所有者と契約し、期間を決めて借りる」ビジネスモデルです。ですから「モノを所有しない」という意味では同じですが、「サブスクはサービスを利用するためにお金を払う」ものであり、「リースはモノを借りるためにお金を払う」という違いがあります。
また、「サブスク=定額課金のサービス」と捉えられがちですが、これはサブスクビジネスの一側面に過ぎません。実は、サブスクビジネス最大の狙いどころは、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を高めることなのです。
松浦:LTV向上とサブスクビジネスモデルにはどのような関係性があるのでしょうか。
福田:「モノ売り」のビジネスモデルは、「いくらのモノが何個売れたか」が重要です。一方、サブスクビジネスモデルは、「どれだけ長く、製品やサービスを利用してもらえるか」が重要になります。
顧客に長期間サービスを利用してもらうためには、常に付加価値の高いサービスを提供し、LTVを向上させる必要があります。また、解約抑止を目的にした休眠または復活プログラムを用意して「顧客との関係を長く持続させる」といった工夫も必要です。
松浦:しかし、サブスクに新規参入したからといって、顧客との関係性を長期間維持するというのはなかなか難しそうな印象を受けます。
福田:サブスクビジネスの成功事例を紹介しましょう。米国のギター会社です。その会社のビジネスモデルは、これまでギターを販売する典型的な「モノ売り」だったのですが、ある時、ギター購入者に一定の月額料金で、「オンラインギター演奏レッスン」が受けられるサブスクサービスの提供を始めました。
実は、ギターを購入する人の半分は初心者で、その多くは3カ月程度で挫折してしまう傾向がありました。それまで同社は楽器店を通じてギターを販売していたため、顧客との直接の接点はなかったのですが、サブスクサービスによってユーザーとの接点が生まれ、顧客データ(好みのジャンル、アーティスト、レベル、所有モデルなど)を得られるようになりました。これにより、顧客にパーソナライズしたサービスやコンテンツを強化し、3年で数十万人の有料会員を獲得。さらに、継続率95%という驚異的な数値を記録したのです。
松浦:確かに独学でギター演奏をマスターすることは難しいですが、定額で継続的にレッスンが受けられるのであれば、「やってみよう」という気になります。顧客と直接つながることで、そのニーズを的確につかむことが関係性の維持には重要なのですね。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー 福田 健
松浦:これまで「モノ売り」をしていた企業のサブスクビジネスへの参入が増えてきましたが、サブスクサービスを提供するにあたっては課題も多いのではないでしょうか。
福田:サブスクビジネスを実現するうえで取り組むべき課題は3点あります。
1つ目は「サブスクビジネスの戦略やサービス設計の策定」です。製品ポートフォリオをサブスク化することで、事業の収益性をどのように上げていくか検討する必要があります。将来の成長性や収益化のポテンシャルを考えて、サービス設計しなければなりません。
2つ目は「業務プロセスの実現」です。「モノ売り」一辺倒のビジネスをしてきた企業がサブスクビジネスに転換するには、既存の業務プロセスや会計処理を大幅に変更しなければなりません。たとえば、課金契約管理や課金請求といった会計処理のプロセスを再設計し、運用する必要があります。国際財務報告基準である「IFRS(International Financial Reporting Standards)15号」の収益認識にも対応しなければなりません。
3つ目は「LTV向上施策の実行」です。先述したとおり、ユーザーが「継続して利用したい」と思う魅力的なサービスを提供し続けるためには、最適なタイミングで契約継続プランを提案し、高い顧客満足度を維持しなければなりません。
松浦:これらの課題を解決するには、既存のビジネスモデルを大幅に見直す必要があるのではないでしょうか。たとえば、営業のアプローチや取引会社との関係も変わってきますよね。
福田:そうですね。「モノ売り」から「コト売り」へのビジネスモデルの転換は、企業にとって大きなチャレンジです。
PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 松浦 理史
松浦:ここまではサブスクビジネスを実現するうえで、克服すべき課題を伺いました。では、PwCはサブスクビジネスへの参入を目指す企業に対し、どのような支援を実施しているのでしょうか。
福田:PwCではこのような企業に対する支援サービスとしてXaaS(Anything as a Service)ソリューションを提供しています。
このソリューションはサブスクビジネスを始める企業に対し、製品ポートフォリオ戦略から、価格戦略、ビジネスモデル設計のほか、サブスクビジネス全体を支えるプラットフォームの構築を支援するものです。そして、サブスクサービスの利用によって取得したデータを定期的に分析し、新規顧客獲得、既存顧客へのアップセル・クロスセルの強化、さらに解約の削減による収益向上と業務の効率化などを支援します。
松浦:つまりXaaSソリューションとは、サブスクビジネスを包括的に支援するものですね。どのような特長があるのでしょうか。
福田:大きく分けて3つの特長があります。
1つ目は、構想の策定から実行まで一貫して支援できる体制が整っていることです。サブスクビジネスを開始するには、サービス利用者のカスタマージャーニーを設計し、「何を」「どのタイミングで」「どのように」提供するか、といった戦略を立て、それに合わせて業務プロセスや会計処理を変更しなければなりません。
2つ目はPwCコンサルティング内のさまざまなチームはもちろんのこと、また、PwCあらた有限責任監査法人などのチームと連携して支援できる体制が整っていることです。XaaSソリューションではPwC Japanグループが擁するさまざまな専門家の知見を連携して支援します。
3つ目はPwCグローバルネットワークの各国メンバーファームと連携していることです。サブスクビジネスは米国が先行しており、PwC米国はさまざまな業界におけるサブスクビジネスについての知見を豊富に有しています。また、日本発のサブスクビジネスモデルがグローバルで展開されることもあります。下図の通り、PwCではXaaSソリューションをインテグレーテッドソリューションとしてグローバル展開しています。
松浦:クライアントがどのような業種であっても、一貫した支援ができるのがPwCの強みなのですね。下図の中にある「L2Cオペレーション」とは何でしょうか。
福田:L2Cとは「Lead to Cash」の略で、見込み顧客の発掘から請求管理(売掛金回収)までの業務プロセスを指します。サブスクビジネスのL2Cは既存のそれとは異なり、商品構成、契約、見積、注文が非常に複雑です。XaaSソリューションの一環として提供するL2Cは、自動化機能でこれらのプロセスを効率化し、より迅速なサービスフローを実現します。
例えば、「見積もりを提出して契約を締結し、その契約内容に応じた課金請求を行って、会計処理に回す」という一連のプロセスがありますよね。PwCのL2Cでは個々のプロセスで「何を決定し、次のプロセスに移行すべきか」といったことを提示し、意思決定を支援します。こうした機能はサブスクビジネスを開始したいクライアントの課題を短期間で解決できると考えています。
松浦:こうした仕組みを構築するにはITやビジネス、財務などを含む総合的な知見が必要であることがよくわかりました。最後にXaaSソリューションの今後の展望を聞かせてください。
福田:サブスクビジネスの成功に貢献すべく、XaaSソリューションをグローバル共通のソリューションとしてさらに発展させていきたいと考えています。
これまでは技術チームが中心となり、XaaSソリューションを整備してきました。現在は複数の業界から相談をいただいており、PwC Japanグループの中で連携して支援をしています。今後はXaaSソリューションをPwC Japanグループ全体のコアソリューションとして、あらゆるクライアントに提供できる体制を構築したいと考えています。
松浦:今後、サブスクビジネスが普及することを考えると、XaaSソリューションは必須ですね。
市場環境やビジネス要求が絶え間なく変化するなか、企業が迅速な対応と高い柔軟性を獲得するには、DevOpsとデータ駆動型アプローチの融合が有効です。本レポートでは、国内外の成功事例を参照し、データ駆動型DevOpsを実現するための具体的なアプローチを紹介します。
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