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2022-06-09
企業を取り巻くビジネス環境は急激に変化しています。新型コロナウイルス感染症の拡大や地政学的リスクなどの影響もあり、ビジネスに必要な「人・モノ・資金」の調達は不安定な状況が続いています。そのような状況下であっても、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには最新のテクノロジー動向にアンテナを張り、自社に必要なものを取り込んで柔軟かつ盤石なITシステム基盤を構築しなければなりません。その際に重要になるのが「テクノロジーアライアンス」です。本稿では入社3年目の渡邉元気が、20年以上にわたりテクノロジーアライアンスを手掛けてきたパートナーの町田彰宏に、PwCが考える「テクノロジーアライアンスのあり方」とその必要性、テクノロジーアライアンスから生まれる具体的なソリューションのトレンドついて聞きました。
登場者
町田 彰宏
PwCコンサルティング合同会社
パートナー
テクノロジーアライアンス統括責任者
渡邉 元気
PwCコンサルティング合同会社
アソシエイト
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
(左から)町田 彰宏、渡邉 元気
渡邉:最初にPwCが考える「テクノロジーアライアンス」について教えてください。なぜ、PwCにはテクノロジーアライアンスが必要なのでしょうか。
町田:急速な技術革新と不安定な社会情勢が続く中で、企業が事業を継続的に成長させるためには、現状を常に把握できるデータドリブン経営の実践が不可欠です。それを実現するためには、環境変化に対して柔軟かつ迅速に対応できるITシステム基盤を構築することが求められます。
PwCではクライアントのITシステム基盤を構築する際、「戦略からエグゼキューション(実行)まで」網羅的に支援しています。コンサルティング会社によっては上流の戦略立案だけ、またはシステム構築だけを支援するケースも少なくありませんが、PwCではクライアントのビジネス環境に最適なITシステム基盤のデザインから運用まで支援する体制を整えています。ですから、PwCはITシステムの根幹を支えるテクノロジーを提供するベンダーとアライアンスを組む必要があるのです。
渡邉:企業がデジタル化を推進する上で、テクノロジーアライアンスはどのような役割を果たすのでしょうか。
町田:ビジネスの環境変化に耐え得るITシステム基盤は、クラウドを意識した次世代のデジタルアーキテクチャが必要になります。例えば、AIなどの最新テクノロジーをいち早く取り込み、いつでも・どこでも・どのようなデバイスからでも安全かつ安定的にアクセスできるITシステム基盤は、クラウド抜きには考えられませんよね。こうした最新テクノロジーを柔軟に組み合わせ、クライアントにとって最適なITシステム基盤を構築することが、テクノロジーアライアンスが果たす役割です。
また、テクノロジーアライアンスのメリットとして挙げられるのが、「不要になったらいつでも捨てられる」ことです。
PwCは業界ごとに次世代デジタルアーキテクチャを考えています。例えば、ある業界では継続的に新規事業を立ち上げることが求められています。そのためには迅速にITシステム基盤を構築でき、収益が見込めないと判断した時にはその事業を停止し、構築したITシステム基盤をすぐに手放せる環境を整備しなければなりません。こうした基盤の“部品”を提供しているのがテクノロジーアライアンスベンダーです。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー テクノロジーアライアンス統括責任者 町田 彰宏
渡邉:PwCでは業界ごとに次世代デジタルアーキテクチャのあり方を考えているとのことですが、具体的にどのようなアーキテクチャでしょうか。私の理解では「経営判断や事業継続を下支えするデータを中心としたアーキテクチャのこと」ですが、その考え方で間違っていませんでしょうか。
町田:そうですね。データドリブン経営を実現するには、データアーキテクチャを中心にITシステム基盤を考える必要があります。PwCでは図1の5つのレイヤー(アーキテクチャ)にフォーカスし、レイヤーごとに適切なテクノロジーアライアンスベンダーを選択することでクライアントのシステム構築を支援しています。
データアーキテクチャではITシステム基盤全体の中で、どのデータがどこに格納されるべきかを検討します。その上で迅速かつ的確にデータ活用ができるアプリケーションやテクノロジーを選択します。
テクノロジーおよびアプリケーションアーキテクチャを選択するにあたってのポイントは、「ビジネス変化に応じて着脱・統合が可能である」ことと「経営の俊敏性に寄与する」という2つの観点を考えることです。なぜなら複数の事業を手掛けている企業が特定の事業を売却する場合でも、両アーキテクチャを自在に切り離して統合できるからです。
そして忘れてはならないのが、セキュリティアーキテクチャです。外部からのサイバー脅威に対する防御はもちろん、内部不正防止やガバナンス強化の観点を盛り込み、ITシステム基盤全体をセキュアに構築しなければなりません。セキュリティアーキテクチャを疎かにした結果、データ漏洩が発生してしまうと、ビジネスに深刻なダメージを与えてかねません。
渡邉:テクノロジーアライアンスベンダーを選択する際のポイントはありますか。
町田:それぞれのベンダーが提供している製品の特徴を把握し、クライアントの事業内容を踏まえて製品の長所、短所を理解する必要があります。
特にクラウドは新機能の追加や既存機能のアップデートを頻繁に実施します。ですから選択する側としてはPoC(概念実証)を充実させ、同じ製品でも繰り返し検証することが求められます。例えて言うならPwCは、お料理に合ったワインを提供するソムリエのように、知見と経験を活かしてクライアントに満足してもらえる提案をしなければなりません。
渡邉:ソムリエとは、言い得て妙ですね。私も一流の“ソムリエ”になれるよう頑張ります。
PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 渡邉 元気
渡邉:クライアント支援の具体的なアプローチについて教えてください。PwCは多岐にわたる業種・業界のクライアントを支援していますが、業種・業界ごとにテクノロジーアライアンスのメソドロジー(方法論)は変わってくるのでしょうか。
町田:どの業種・業界のクライアントにも共通しているのは、PwCはテクノロジーアライアンスベンダーが提供する製品から最適なものを「ベスト・オブ・ブリード」で選択していることです。その上でベンダーが提供するテクノロジーソリューションをPwCが考えるマネジメントソリューションに融合させ、クライアントのビジネスケースに応じて最適なITシステムを構築していきます。
渡邉:「マネジメントソリューション」の融合とは具体的にどのようなものですか。
町田:マネジメントソリューションとは、ビジネス変革支援や仮説検証型プロダクト開発、コスト管理、ガバナンス管理、セキュリティ策定、災害対策などです。言い換えれば、「特定のビジネス課題を解決するソリューション」です。
ビジネス課題は業界によって大きく異なります。例えば、小売業は取り扱うデータが多く、その種類は多岐にわたります。金融業界でも膨大なトランザクションが発生しますが、データの種類は小売業と異なります。また、製造業ではBOM(Bill Of Materials)と呼ばれる部品表のデータ管理が複雑ですから、ITシステムもそれに対応したものでなければなりません。マネジメントソリューションを構築するには、そうした状況を踏まえながら、業界動向や最新事例にアンテナを張って情報を収集する必要があります。
渡邉:マネジメントソリューション構築のメソドロジーを教えてください。
町田:具体的には以下の4段階に大別できます。
第1段階では業界の将来を見据えてITシステム基盤のあり方をデザインします。従来の事業継続と新規事業の立ち上げにフォーカスするだけでよいのかなどを考え、最新事例を考慮に入れながら最適なITシステム基盤の「To beモデル」を構築し、仮説検証を行います。また、この段階でビジネスでの規制や法制度を確認しながらクライアントに提案していきます。
PwCの強みはグループ内に「アシュアランスチーム」があり、法規制ならびのその対応法を熟知しているプロフェッショナルがいることです。例えば、デジタル改革関連法やDX投資促進税制などへの対応は、法律や制度の中身を熟知していなければ、ITシステムに反映させられません。
第2段階では事業環境を調査・分析し、施策を策定したり、実行計画を準備したりします。新規事業を立ち上げる際にはKPI(重要業績評価指標)や損益分岐点を設定しますよね。ここではそうした数値をいち早く確認できるような仕組み作りを検討します。
第3段階でようやくアーキテクチャデザインに移ります。具体的には先述した5つのレイヤーを検討しながら、クライアントの事業運営モデルやビジネスケース構想書を作成します。
第4段階では実際にシステムを構築します。開発手法をアジャイルにするか、アジャイルとウォーターフォールのハイブリッドにするのかを選択し、最適な方法を選択して運用・メンテナンスを検討します。
渡邉:なるほど。最初にお話しいただいた「戦略からエグゼキューションまで」包括的に支援するという考え方を具現化しているのですね。このメソドロジーに則って構築したマネジメントソリューションにはどのようなものがありますか。
町田:顧客接点の早期拡張と強化を目的とした次世代CRM(顧客関係管理)やクラウドを活用したECサイトのチャットボットなどです。コールセンター業務の流れを意識したフロント系システムの構築を短期間で実現し、顧客の行動を分析しながら顧客接点を強化していくアプローチです。
このソリューションの特徴は、ゼロから開発する「テーラーメイド型」ではなく、テクノロジーベンダーが提供するテンプレートなどを活用した「セミオーダーメイド型」のアプローチで、短期での構築を可能にしています。
PwCにはコールセンター(システム構築)のプロフェッショナルもいれば、チャットボットの領域を深掘りし続けているプロフェッショナルもいます。わかりやすくて美しいECサイトのフロントデザインに全力投球しているチームなどもあります。このような“その道のプロ”がクライアントのITシステム基盤にマッチするテクノロジーを見つけ出し、そのビジネスに最適な形に整えて提供しています。
渡邉:データアーキテクチャ部分のテクノロジーアライアンスについて聞かせてください。先ほど「データドリブン経営は不可欠」とおっしゃいましたが、データ分析を次の施策に活かす取り組みにはさまざまなものがありますよね。
例えば、リアル店舗を改修する際にIoTから収集したデータを分析することで人流や顧客行動を予測して店舗を最適化したという事例や、基幹業務系データとフロント系データを統合して分析することでリアルタイムに売上状況を把握できる経営ダッシュボードを開発したという事例があります。こうしたデータ活用には複数のテクノロジーが不可欠ですが、ほかの業界で先進的なデータ活用事例はありますか。
町田:興味深い事例としては「スポーツ選手の育成」があります。あるドイツの大手ITベンダーはサッカーの国内下部リーグに所属していたクラブチームを買収し、選手一人ひとりに合ったトレーニング方法をデータ分析により生み出すことで強化を進めました。具体的には、各選手の体格や筋肉量などの詳細データを収集し、「どのようなトレーニングをすれば」「どの部分の筋肉量が」「どのくらい増加し」「どのくらいキック力が向上するのか」をデータから割り出すなどしてトレーニングメニューを作成しています。実際、このプロサッカークラブの強化は順調に進み、最終的には1部リーグへの昇格を果たしています。
(左から)町田 彰宏、渡邉 元気
渡邉:これまでのお話を通じて、テクノロジーアライアンスに対するPwCの考え方が理解できました。とはいえ、ほかのコンサルティング会社も各ベンダーと連携していますよね。その中でPwCの強みとは何でしょうか。
町田:先述したとおり、PwCは「ビジネス戦略立案だけ」「技術支援だけ」ではなく、クライアントのビジネスを鳥瞰し、将来的な視点に立脚しながら、最適で使い勝手がよいIT基盤システムの構築を支援できることを一番の強みとしています。
もう1つが「クライアントの体験までを付加価値として提供していること」です。PwCには「BXT(Business eXperience Technology)」という独自の概念があります。これは、ビジネスとテクノロジー、そしてエクスペリエンス(体験)を三位一体としてクライアントのビジネスを支援するという考え方であり、常に「クライアントの体験向上」という視点からシステム構築を考えるというものです。
また、PwCにはグローバルのネットワークがあり、あらゆる業界における数千社のクライアントに対する支援実績を有しています。そうした支援の中で培った知見を活かし、個々のクライアントに最適なソリューションを提案しています。加えて、クライアントの業務内容やITの最新技術、各業界の専門知識を持った人材を数多く擁していることも大きな優位性です。
渡邉:ありがとうございます。最後に今後のテクノロジーアライアンス動向について見解を聞かせてください。
町田:IT業界はテックジャイアントと呼ばれる大手ベンダーだけでなく、スタートアップ企業からもユニークな技術がリリースされています。例えば、ペタバイト級のデータを分析できるソリューションや、ビジネスの改善を提案できるAIを備えたBI(Business Intelligence)などを手掛けるスタートアップが続々と台頭しています。
私たちはこうした動向にアンテナを張り、業界ごとにアライアンスを組むベンダーを考えていく必要があります。
渡邉:クライアントに最適なテクノロジーを提供するためには、コンサルタント自身が学び続けることが最も大切なのですね。本日はありがとうございました。
(左から)町田 彰宏、渡邉 元気
町田 彰宏
パートナー, PwCコンサルティング合同会社