~徹底した伴走でテレコム産業の未来を切り拓く~

第1回SX・GX領域の新規事業創出を支援

  • 2024-11-28

テレコム業界は、デジタル社会のインフラとして不可欠な存在です。とくに近年は、生成AIなどのAI活用、6G、Web3.0、メタバースといった最先端技術の浸透と実装を支える存在として重要性を増しています。一方で、業界全体では通信市場が飽和状態にあり、政府による通信料金引き下げの影響などもあって競争環境が激変しています。そのため、通信・インフラ大手事業者は、金融、コンテンツ、eコマース、エネルギー、ヘルスケアなどライフスタイル全般にまたがる非通信領域で付加価値を見いだし、新たな市場での事業開拓を加速させています。私たちPwCコンサルティングは、テレコム業界に特化した企業価値創造のチームを組織し、不確実性に直面しているクライアントを支援しています。大きく変わろうとしているテレコム企業における既存事業と新しい要素と掛け合わせの取り組みを「X」としてTransformationを推進するキーパーソンが、変革への挑戦について語りました。

PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
一杉 泰仁

聞き手(ナビゲーター)
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
岡田 太郎

サプライチェーンと産業の意識を変えていく

岡田:一杉さんは大手テレコム企業をクライアントに持ち、戦略立案や新規事業創出を支援しています。まずは自己紹介をはじめ、この分野に関わることとなった経緯を教えてください。

一杉:私は前職のIT系企業で10年ほどの間、法人営業、法人企画、経営企画、サービス開発、新規事業開発、人事などを渡り歩いてきました。その仕事内容は非常に充実していたのですが、1つの企業に所属しながら社会を変えていくのではなく、さまざまな企業の変革に関わりながら、産業規模で社会変革に大きなインパクトを与えたいと考えました。それがきっかけとなり、2022年にPwCコンサルティングにジョインしました。入社後は、これまでの経験を活かしつつ、戦略立案などの支援を通して、テレコム企業の社会インパクト拡大の一端をサポートしています。

岡田:通信業界の案件をいくつかご担当されたと思いますが、同業界にはどのような課題がありますか。特に一杉さんが取り組んでいるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)の領域はいかがでしょうか。

一杉:テレコム業界全体としては既存事業が頭打ちの傾向にあり、各社は非通信領域での新規事業の創出に課題を感じています。さまざまな事業検討を進める中で、例えば、SX、GXの取り組みも大きなテーマとなっています。そこには、業界特性としてデータセンターや通信設備の運用に大量のエネルギーを消費しGHG(温室効果ガス)を排出しているという背景があり、大手通信企業はその社会的責任を認識しているため、SX・GXの取り組みに積極的で、率先してリードしていかなければならないという意識を持っています。

岡田:SX・GXにおける課題意識は広がっていますか。

一杉:SX・GXの市場では、これまで大手企業を中心に取り組みが進んできました。しかし、2050年にカーボンニュートラルを目指すためには、サプライチェーン上のサプライヤーも含む中堅中小企業の取り組みの推進が不可欠となるのですが、現状ではまだ十分に広がっているとは言えません。

岡田:業界の中でも企業の規模や業種によって温度差があるわけですね。

一杉:大手企業や上場企業は、株主などステークホルダーの期待に応えていくためにSX・GX領域の取り組みが不可欠と考えています。一方で、その周辺の取引先やクライアントが持つ地域の顧客などに目を向けると、例えば、CO2排出量が多い製造業や運輸業は環境保全に対する意識が高いのですが、その他の業種の企業や非上場企業の中には、自分たちとは関係性が薄い、まだ時期尚早と考えている企業もあります。そのような意識を変え、覆していくのが現在のフェーズです。このトランスフォーメーションの主体となるのがクライアントであり、私たちはその活動を後ろから支える役割を担っています。

クライアントに深く入り込み勝ち筋を見抜く

岡田:一杉さんはクライアントの戦略立案や新規事業立ち上げに深く関わり、信頼を獲得しながらトランスフォーメーションを推進しています。SX・GXの提案や支援がクライアントに受け入れられるためには何が必要でしょうか。

一杉:これまでさまざまなクライアントの課題解決を支援する中で、あるクライアントは、SX・GXの新規ビジネス検討に課題を抱えていました。当時、クライアントから、「市場のリサーチやビジネスモデルの検討を行ったものの、机上のリサーチにとどまり、具体的にどうビジネスを立ち上げていけばよいかにまで至らず困っている」という相談を受けました。そこで、私たちPwCコンサルティングは、市場や競合分析を通じた戦略立案はもちろんのこと、単なる机上の事業検討にとどまらず、クライアントと一緒に数多くの顧客の声を拾いながらビジネスモデルやソリューションを立ち上げていく、顧客起点の新規事業開発の伴走支援を提案しました。そのような提案がクライアントに評価いただけたのだと思います。

岡田:新規事業の創出が「机上の空論」にとどまっていたというクライアントに対して、事業化に向けた具体策や進め方を提示したことに価値を感じていただいたのですね。

一杉:そう思います。私自身、前職のIT系企業でコンサルティングファームにサポートしてもらっていた際は、絵に描いた餅で終わらせず、具体的な社内実装や社会実装につなげるためにいかに踏み込んだ検討にしていけるか、という点に腐心していました。そのような経験から、クライアントやパートナー企業との商談や議論の場に参画し、社会を変えるビジネスを生み出していくチームメンバーの一人として、クライアント以上の当事者意識を持った伴走支援の徹底に取り組んでいます。その結果、クライアント自身が問題意識を持つようになり、支援した領域に加えて、さらに新たな領域へ支援範囲が拡大していきました。

岡田:なるほど、一杉さんはクライアント支援ではどのようなことを心掛けていますか。

一杉:強く意識しているのは、市場や競合との競争の中で、クライアントのビジネスの成功の要諦や勝ち筋を見抜くことです。クライアントの声、クライアントのお客さまの声、競合の動向、さまざまな外部環境の事象などから成功パターンと失敗パターンを読み解き、それらの情報からクライアントが勝つためのビジネスモデルや戦い方を考え、実装するまで伴走します。

案件化の先にある展開

岡田:既存事業の延長ではなく新しく事業を生み出すゼロからの取り組みでは、早期に実績を出すことも重要ですね。

一杉:はい。あるクライアントのケースでは、支援から約半年間で複数の実案件を生み出すような実績を挙げることができました。こうしたクイック・ウインでの成果は私たちの支援が机上の空論ではないことの証左であり、クライアントからの信頼獲得にもつながったと感じます。

岡田:実績ができたことでクライアントの評価や期待はどう変わりましたか。

一杉:支援開始当初は、社会的にもSX・GXはCSRのイメージが強く、実際にビジネスに結びつくのかクライアントも半信半疑でした。しかし、こうした実案件を積み上げていったことで社内での評価も変わり、その価値が認識されるようになりました。今では、クライアント社内で、SX・GX領域の事業が収益拡大の1つの柱として位置付けられるようになり、私たちに対しては、事業をよりスケールさせていくための支援への期待が大きくなっています。

岡田:冒頭にも話したとおり、取り巻く環境の変化も大きいですね。今後はどのような未来像をイメージしていますか。

一杉:私にとって、1つ1つのプロジェクトを点と捉えると、今はいろいろな業界や領域における変革の点を増やしている状態です。テレコム業界はあらゆる産業とのつながりを持ち、ITの力で世の中の変革をリードしていく土台となる業界です。そのため、将来的には、さまざまな産業で起こっている変革の点をつないでいきながら、産業構造や社会のトランスフォーメーションを牽引していく取り組みを目指していきたいと思っています。

専門家との連携で提供価値を高める

岡田:私たちの支援の提供価値を高めるためは、SX・GX領域において複数の観点で専門的な知見が必要です。どのようなチーム体制で支援しているのですか。

一杉:現場でクライアントを伴走支援するメンバーはだいたい3~4人くらいです。また、SX・GXの専門家として高度な知見を提供していくための後方支援として、サステナビリティに特化したCoEチームや、PwC Japanグループ全体でさまざまなプロフェッショナルのメンバーをそろえています。もちろん、グローバルのPwCのメンバーファームとも連携を取りながら、支援の質を高めています。

岡田:サステナビリティや脱炭素を取り巻く環境を見ると日々状況や価値基準が変わります。私としても1つの情報を盲信してはいけないと感じています。とはいえ、グローバルでのルールづくりが進み、日本企業も通信業界もその動向を踏まえなければなりません。

一杉:そうですね。PwCコンサルティングには、業界(インダストリー)別にコンサルティング・ユニットがあり私たちもその1つです。一方で、SX・GXなどにフォーカスした専門組織があり、規制の内容や動向については彼らが最新情報を持っています。

岡田:PwCでは、さまざまな専門性を持つチームがグループ内で部門や組織の壁を越えて協働することを積極的に推進し、多様な社会や企業の課題解決における重要な考え方の1つに位置付けています。高度な専門性を組み合わせてワンチームで支援提供できることが私たちの価値ですね。

一杉:はい。支援の過程では、AI、データサイエンス、サイバーセキュリティといったIT分野の知見のみならず、会計監査、情報開示、税務など企業運営に必要な知識が求められることもあります。これらを網羅して提供できることは私たちの強みです。私たちは自分のケイパビリティを広げるとともに、国内ネットワークや、海外にも拠点を持つPwCグローバルネットワークのプロフェッショナルと連携し、より大きな価値を提供していくことを常に意識しています。

社会課題を解決したいと思うWillが大事

岡田:今後のテレコム業界の変革を推進するコンサルタントとしてクライアントへの提供価値を高めていく上で、どのような資質が重要だと思いますか。

一杉:世の中にインパクトを起こしていくコンサルタントになるためには、クライアントと一緒に社会をどう変えていきたいかという強いWill(意志)が不可欠だと考えています。私は自分の仕事をコンサルタントとしてだけでなく事業家と位置付け、クライアント以上に社会を変えていく事業を生み出す当事者意識を持って、取り組んでいます。そして、社内の知見を結集することで、戦略立案から社会実装にまでコミットした伴走支援ができることが、PwCコンサルティングの特徴でもあります。

岡田:自分が持つスキル、知見、経験をXとして、「掛け合わせによって世の中を変えていきたい」と強く思うWill(意志)が重要ですね。

一杉:はい。自分が何を成し遂げたいのかを考え、世の中のため、自己実現のためにPwC Japanグループが持つさまざまな要素を使い倒す姿勢でいます。その結果、PwC内のさまざまな専門チームとの連携につながり、ひいては顧客への提供価値の向上に寄与すると考えています。

岡田:通信事業が通信だけでは成立しなくなっている社会変化の中では、別の何かとの掛け合わせがなければ、業界・企業も、業界を支援している私たちも生き残れません。言い換えると、掛け合わせる「X」によって成長するポテンシャルは大きくもなり、そのレバレッジが効くところが通信業界の魅力です。今後も、Telecom transformationでは、激変するテレコム業界で、これまでのテレコム業界では足りないパーツとしてのケイパビリティや経験を持つコンサルタントの実体験をコラム形式でご紹介していきます。

主要メンバー

岡田 太郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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