{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.title}}
{{item.text}}
2020-12-11
政府主導のコーポレートガバナンス改革、株主アクティビズムの活発化、世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)への問題意識の高まりなどにより、多くの企業にとってコーポレートガバナンス・グループガバナンスの見直しや構築は重要な課題となっています。さらには、国内市場の縮小、デジタル技術の進化をはじめとした事業環境の変化により、事業経済性の変革や新規ドメインの立ち上げといった戦略の転換に迫られるなか、戦略の実行という観点においてもその重要性が高まっています。本稿では、経営の透明性・効率性の担保はさることながら、戦略の実現やその手段となるM&A・アライアンスの成功においてもガバナンスの高度化が重要という考えをもとに、特にグループ経営における実効的なガバナンスの在り方であるグループガバナンスに焦点を当てたアプローチを紹介します。
なお、本稿における「ガバナンス」とは、「戦略実現にかかる統治のあらゆる体制・プロセス」を指すものであり、一般的に想起される「監督と執行の在り方」や「不正防止・法令遵守」との観点に留まらない広範な概念として扱います。
ガバナンス構築の重要性がますます高まる一方で、グループガバナンスの実態はどのようになっているでしょうか。多くの企業ではコーポレートガバナンス・コードに対応するなど外形的な整備は進んでいるものの、実効性が十分に伴ってないという評価も少なくありません。一般的に、日本企業は旧来から存在する暗黙の了解やルールに基づき組織運営がなされている傾向にあり、新規ドメインの立ち上げ、M&Aにおける対象会社の経営統合(PMI)など、組織を拡大・拡張することについて大いに課題があるといえます。こういった状況から、以下のような事象が発生する傾向にあります。
上記事象の結果として、企業価値向上を阻害する以下のような課題につながります。
これらの課題を解決するグループガバナンス構築のアプローチを以下に示します。
グループガバナンス構築にあたっての課題を克服し、戦略の実行を実現する体制を作り上げるためには、司令塔たるグループ本社の機能を最適化し、傘下の事業・子会社に対する本社の関与方針を明確にすることが必要です(図表2)。
グループガバナンス構築において、まずはグループ経営の司令塔たるグループ本社の機能の最適化は不可欠です。「グループ本社はレポーティングや目標・期待値ばかり要求・提示してフィードバックは何もない」「グループ本社は現場の論理を理解していない」という傘下の事業・子会社からの声を耳にすることは少なくありません。しかしながら、コーポレートガバナンス・コードでもうたわれている資本効率性を意識した経営を推進するためには、グループ本社は事業ポートフォリオの見極め・事業再編の断行といった全社最適の観点に基づいた行動が求められ、現場の論理に傾注する取りまとめ役に留まることは許されません。また、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる昨今のような事業環境にあるからこそ、グループ本社はグループ全体を牽引する司令塔として、もう一つのVUCA(Vision:グループビジョンの設定・展開、Understanding:傘下の事業の本質理解と戦略仮説・フィードバックの提示、Clarity:グループ本社の明確な役割・関与方針、 Agility:機動的な意思決定と実行)を果たすことがこれまで以上に求められています。
なお、ここで注意が必要なのは、「グループ本社機能の最適化」とは、グループ本社が強権を振るって傘下の事業・子会社を抑えつけることではないということです。後述の「事業・子会社に対する関与方針の明確化」や「規程類などの整備と変革の実行」を通じて、事業や子会社の状況・特性に応じた機能発揮の最適化を図っていくことこそが重要です。
グループ本社が保有するべき機能として、代表的なものとしては「戦略策定機能」「事業ポートフォリオ管理機能」「シナジー発揮・推進機能」「リスクマネジメント機能」が挙げられますが、グループ本社各部門の役割・業務の現状を調査・分析したうえで、中長期的な全社戦略や業界・事業の特性などを踏まえ、適切に設計することが求められます。
次に、傘下の事業・子会社に対するグループ本社の関与方針の明確化が求められます。企業が抱える事業・子会社は、議決権比率、事業規模、事業フェーズ、展開地域数がそれぞれ異なっていることが一般的であり、これらを十把一絡げに同じレベルで関与することは得策とはいえません。グループ本社が提供できるリソースが限られることからも、戦略上の重要度や内在リスクの高低に基づいてメリハリをつけて関与することが求められます。
そのためには、事業・子会社を複数の要素(例:議決権比率、売上高規模、展開地域)で評価・分類し、その分類に応じて関与(いわゆる、ハンズオン・ハンズオフ)の方針を決定することが有効です。前述のグループ本社機能と連動させることで、機能発揮をコントロールすることが可能となります。
事業・子会社の分類と関与方針を設定することは、M&A・アライアンスの対応力向上にもつながります。例えば、経営統合(PMI)の段階になってからの場当たり的な議論・意思決定を排除し、前後のM&A・アライアンスとの一貫性がとれた、明確な統合方針や中長期のロードマップの作成が可能となります。
「グループ本社機能の最適化」「事業・子会社に対する関与方針の明確化」を行ったら、これらの内容を、決裁権限規程をはじめとする各種規程類へ反映します。グループ本社が傘下の各事業・子会社にメリハリを持って関与するためには、事業・子会社におけるM&A、IT投資に関する決裁権限の設定や事前協議の設定を考慮する必要があります。規程類の整備の他、人材の派遣、コミュニケーションルール、業務プロセスなども関与方針の具現化に有効です(図表3)。
実効性のあるグループガバナンスの構築に向けたプロセスは、一度策定したからといって、それで終わるものではありません。継続的な見直しを行うことで、自社のグループガバナンスの型(=グループガバナンスモデル)を作り、事業環境の変化や全社戦略の転換に合わせて調整していくことが求められます。また、グループガバナンスの実効性をさらに高めるには、論点に示した事業ポートフォリオ管理やグループ人材管理の体制・業務プロセスを構想し、グループ全体に展開していくことも重要です。
PwCコンサルティングはコーポレートガバナンス・グループガバナンスの構築支援に関する豊富な経験をもとに、広範な論点に関する課題への対応、企業価値向上を実現するガバナンス構築をワンストップで支援します。
大手食品会社に対して、長期ビジョンの実現に向けた、グループ本社機能の最適化、事業・子会社への関与方針の明確化、事業計画策定・モニタリングの規律強化に向けた体制・仕組み構築の支援を実施しました。
大手サービス会社に対して、当社の新たな組織・ガバナンス体制立上げに際するグループガバナンス構想に向けた、コーポレート機能の現状調査やグループ本社の将来像の策定を支援しました。