読み方:こうきゅうてきしせつ ぴーいー
恒久的施設とは事業を行う一定の場所等をいい、一般に「PE」(Permanent Establishment)と略称されています。恒久的施設は、非居住者および外国法人の課税関係を決める上での大きな指標となります。
非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内に恒久的施設を有していない場合には、その非居住者および外国法人の事業所得は日本で課税されることはありません。このような「恒久的施設なければ課税なし」という考え方が、事業所得課税の国際的なルールとなっています。
恒久的施設の範囲は、国内法、租税条約およびOECDモデル条約にそれぞれ規定があります(租税条約が国内法に優先します)。国内法においては次の3つに区分されています(法人税法2条1項十二の十九号、法人税法施行令4条の4、所得税法2条1項八の四号、所得税法施行令1条の2)。
上述のうち、物品または商品の保管・展示・引渡しのみを行う場所、保管・展示・引渡し用の在庫、他の者による加工用の在庫、購入のみを行う場所、情報収集のみを行う場所、他の活動のみを行う場所、これらを組み合わせた活動のみ行う場所は恒久的施設に含まれませんが、事業を行う一定の場所での活動の全体が補助的な性格のものである場合に限られます。また、各場所で行う事業上の活動が一体的な事業の一部として補完的な機能を果たす等の場合には、この取り扱いは適用されません。
恒久的施設の存在が認定された場合、国内法では、日本を源泉とする所得のすべてが課税対象となる「総合主義」に基づく課税が行なわれていました(支店PEの場合)が、外国法人等に対する課税原則について、2010年にOECDにおいて採用されたOECD承認アプローチ(Authorised OECD Approach: AOA)に沿った帰属主義に国内法が見直され、2016年4月1日以後開始事業年度より適用されています。
日本が締結している租税条約では、恒久的施設に帰属する国内源泉所得のみが課税対象となる「帰属主義」が採用されていますが、日英租税条約改正議定書において初めて本アプローチに沿った帰属主義が採用されています。
また、2018(平成30)年度税制改正において、BEPSプロジェクトの最終報告書(2015年)、これにより改訂されたOECDモデル租税条約(2017年)及びBEPS防止措置実施条約(2018年)等の規定を踏まえ、国内法におけるPEの規定について、これらの国際スタンダードに合わせる改正が行われています(2019(平成31)年1月1日以後開始事業年度から適用)。
本用語解説は2022年5月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。
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