試験研究費の税額控除

読み方:しけんけんきゅうひのぜいがくこうじょ

定義

法人税法上、税額控除の対象となる試験研究費とは、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する費用、または、対価を得て提供する新たな役務の開発(サービス開発)に係る試験研究として政令で定めるもののために要する費用で、次に掲げるものをいいます(租税特別措置法第42条の4 第19項)、同施行令第27条の4 第5~7項)。

  1. その試験研究を行なうために要する原材料費、人件費(専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る)および経費
  2. 他の者に委託して試験研究を行なう法人のその試験研究のためにその委託を受けた者に対して支払う費用
  3. 技術研究組合法第9条第1項の規定により賦課される費用

上述の試験研究費に関して税額控除を認める制度として具体的に次の4つがあります。

  1. 試験研究費の総額に係る税額控除制度
    本制度は、青色申告書を提出する法人の各事業年度において、所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、当該事業年度の法人税の額から試験研究費の額の一定割合の金額を控除することを認めるものです(ただし法人税額の25%(一定のベンチャー企業は40%)相当額が上限となります)。ここでいう一定割合(税額控除割合)は、試験研究費の増減に応じて2~14%(2021年4月1日~2023年3月31日までの間に開始する各事業年度)です。
  2. 特別試験研究に係る税額控除制度
    本制度は、試験研究費の額のうちに特別試験研究費がある場合に、上述の1.に加えて、この金額の一定割合を税額控除として認めるものです。ここでいう特別試験研究費とは、国の試験研究機関や大学などと共同して行なう試験研究、国の試験研究機関や大学などに委託する試験研究、中小企業者から知的財産権の設定または許諾を受けて行う試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究などに係る試験研究費をいいます。
    本制度における税額控除割合は、国の試験研究機関や大学などとの共同研究およびこれらに対する委託研究は30%、他の者との共同研究およびこれらに対する委託研究で、革新的なものまたは国立研究開発法人などにおける研究開発成果を実用化するための試験研究は25%、それ以外は20%になります(ただし、上述の1.とは別枠で、法人税額の10%相当額が上限となります)。
  3. 中小企業技術基盤強化税制
    本制度は、青色申告書を提出する中小企業者等の各事業年度において、所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、上述の.1の適用がある場合を除き、当該事業年度の法人税の額から試験研究費の額の12%(2021年4月1日~2023年3月31日までの間に開始する各事業年度で、増減試験研究費割合(前3事業年度の平均からの試験研究費の増減割合)が9.4%超の場合、最大17%)相当額の控除を認めるものです(ただし法人税額の25%(2021年4月1日~2023年3月31日までの間に開始する各事業年度で、増減試験研究費割合が9.4%超の場合、35%)相当額が上限となります)。
  4. 上乗せ措置
    上述の制度に加え、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する各事業年度について、試験研究費割合(適用年度と前3事業年度の平均売上に対する試験研究費の割合)が10%超の場合には、法人税額の10%相当額を上限とした上乗せ措置(上述 3.(法人税額の35%相当額の上限)の規定の適用を受ける事業年度を除きます)があり、また、基準年度(2021年2月1日前に最後に終了した事業年度)比で2%以上の売上減少にもかかわらず試験研究費が増加している場合(上述のベンチャー企業は除きます)には、法人税額の5%の上乗せ措置があります。

なお、大企業(中小企業者等以外)が、2018年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度において次の要件のいずれにも該当しない場合には、その事業年度については、本制度を含む、一定の税額控除は適用できません。但し、所得の金額(調整後の繰越欠損控除前所得)が前期の所得の金額以下の一定の事業年度は対象外とされます。

(要件)
① 継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額(前年度)を超えること(2022年度税制改正により、2022年4月1日以後開始事業年度については、資本金10 億円以上、従業員数1,000人以上で、前年度所得がある企業について、継続雇用者給与等支給額が、前年度比で1%(2022年4月1日から2023年3月31日までの開始事業年度は0.5%)以上増加していることが求められます)

② 国内設備投資額が減価償却費の総額の30%を超えること中小企業者等が試験研究を行う場合、道府県民税、市町村税(法人税割)の課税標準は、試験研究費に係る税額控除後の法人税額をもとに計算されます。

中小企業者等が試験研究を行う場合、道府県民税、市町村税(法人税割)の課税標準は、試験研究費に係る税額控除後の法人税額をもとに計算されます。

本用語解説は2022年5月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。