過少資本税制



読み方:かしょうしほんぜいせい

定義

過少資本税制とは、内国法人が海外の関連会社から資金提供を受ける際に、出資に代えて過大な貸付けを受け入れることにより税負担を軽減しようとする企業の租税回避を防止するために、出資と貸付けの比率が一定割合を超える場合に、その超える部分に対応する支払利子の損金算入を認めない制度です。

具体的には、内国法人が国外支配株主等または資金供与者等に負債の利子等を支払う場合において、その国外支配株主等および資金供与者等に対する負債に係る平均負債残高が国外支配株主等の資本持分の3倍に相当する金額を超えるときは、当該事業年度において国外支配株主等および資金供与者等に支払う負債の利子等の額のうち、その超える部分に対応する金額は、損金の額に算入できないものとされます(租税特別措置法第66条の5第1項、「国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例」)。

ここで「国外支配株主等」とは、非居住者または外国法人で、内国法人との間に、当該内国法人の発行済株式等の50%以上を直接または間接に保有する関係その他の政令で定める関係を有するものをいい(租税特別措置法第66条の5第5項一、同施行令第39条の13第12項)、「資金供与者等」とは、内国法人に資金を供与する者および当該資金の供与に関係のある者として政令で定める者をいいます(租税特別措置法第66条の5第5項二、同施行令第39条の13第14項)。また、「負債の利子等」には、通常の借入れに伴う支払利子に加えて、金銭債務に係る償還差損益等や、一定の費用(債務の保証料など)も含まれますが、これらの支払を受ける者の課税対象所得に含まれるものなどは除かれます(租税特別措置法第66条の5第5項三、同施行令第39条の13第15、16項、17項)。

なお、本制度に基づく規制は、当該内国法人の当該事業年度の総負債に係る平均負債残高が当該内国法人の自己資本の額の3倍に相当する金額以下となる場合には適用がありません(租税特別措置法第66条の5第1項ただし書、いわゆる「セーフハーバールール」)。ここで平均負債残高とは、当該事業年度の負債の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額をいいます(租税特別措置法施行令第39条の13第19項)。また自己資本の額は、総資産から総負債を控除した残額をいいますが、これが資本金等の額に満たない場合は、当該資本金等の額(当該資本金等の額が資本金の額に満たない場合は、当該資本金の額)となります。

過少資本税制による規制の適用の有無を検討するにあたっては、まずこのセーフハーバールールの適用があるか否かを検討し、この適用がないと判断された場合に、上述の規制の対象となる負債利子等の検討を行なうことになります。

なお、過少資本税制の適用上、債券現先取引などに係る負債・利子等を除外すること(上述の「3倍」は「2倍」になります)や、類似内国法人の負債資本比率を用いることもできます(租税特別措置法第66条の5第2項、3項)。

法人のその事業年度に係る支払利子等について、本制度と過大支払利子税制の双方が適用となる場合には、利子等の損金不算入額のうちいずれか大きい金額に係る制度が適用されます。

2014年度税制改正で、「恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債利子の損金不算入」(法人税法142条の4)が導入されたこと(2016年4月1日以後開始事業年度から適用)に伴い、外国法人の恒久的施設に対しては、過少資本税制が適用されないことになっています。

本用語解説は2022年6月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。