読み方:とりーてぃしょっぴんぐ
トリーティショッピング(条約漁り)とは、租税条約の濫用の代表例であり、本来租税条約の適用対象とならない第三国の居住者が、その租税条約の締約国に法人を設立することなどにより、その租税条約の特典を享受することをいいます。
例えば、A国の居住者である法人XがB国の居住者である法人Yに金銭の貸付けを行なう場合、A国とB国との間に租税条約が存在しないと、YがXに支払う貸付金利子については、B国の国内法に規定する税率(例えば20%)により源泉所得税が課されることになります。一方Xが、B国と租税条約を締結しているC国に子会社Sを設立し、Sを通じてYに貸付けを行なうと、YがSに支払う貸付金利子については、B国とC国との間の租税条約に規定する限度税率(例えば10%)が適用され、B国での課税が軽減されることとなります。また、A国とC国との間で締結されている租税条約の規定やA国またはC国の国内法の取り扱いも絡めて、Xは、その貸付けに係る所得についてトータルの税負担の軽減を図ることができます。
そこで、租税条約には、このようなトリーティショッピングを防止するための規定が置かれている場合があります。
日本が締結した租税条約についても、次のような規定が置かれているものが増えています。また、BEPS防止措置実施条約の適用によって、(2)の規定が、既存の租税条約の規定に代わって、または既存の租税条約の規定に加えて適用されているものがあります。
条約の適用を受けようとする者の属性および所得の内容の観点から、一定の基準により、租税条約の特典を付与される者を判定するもの
取引の目的に着目し、租税条約の特典を享受することがその仕組みまたは取引の主たる目的の1つであったと認められる場合には、その特典の付与を認めないこととするもの
配当、利子、使用料およびその他所得について、その所得を受領する相手国の居住者が、その所得と同種の所得を第三国居住者に支払うこととされているなど、いわゆる導管取引と認められる場合には、その相手国の居住者をその所得の受益者と取り扱わないことにより、租税条約の特典を付与しないこととするもの
本用語解説は2023年9月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。 また、本用語解説は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。
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