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2015-01-14
あらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
木村 繁
IFRS(国際財務報告基準)における有形固定資産の減価償却方法は、資産の将来の経済的便益を企業が消費すると予想されるパターンを反映するものでなければならない(IAS第16号第60項)とされています。
他方、日本の会計実務では、当初の減価償却方法選択時においては選択理由に特段の制約は設けられていないため、税務メリットを考慮して定率法を採用するケースが多く見受けられます。しかしながら、近年の日本の会計実務においても、減価償却方法を定率法から定額法へ変更する事例が多く見られるようになりました。
以下では、日本におけるIFRS適用開示済企業(以下、IFRS適用企業)38社(2014年12月2日時点)を調査対象として、IFRS適用企業の有形固定資産の減価償却方法の変更事例について分析を行いました。
IFRS適用企業(2014年12月2日時点)
業種 |
企業数 |
卸売業 |
7 |
医薬品 |
7 |
電気機器 |
5 |
情報・通信業 |
4 |
サービス業 |
4 |
ガラス・土石製品 |
2 |
証券・商品先物取引業 |
2 |
小売業 |
2 |
化学/食料品/精密機器/輸送用機器/不動産業(各業種1社) |
5 |
合計 |
38 |
また、日本のIFRS適用企業が採用する減価償却方法では、以下のとおり定額法が採用されている事例が多く見られます。
IFRS適用企業が採用する減価償却方法
減価償却方法 |
企業数 |
定額法 |
23 |
主として定額法 |
10 |
主として定額法、生産高比例法 |
4 |
主として定額法、生産高比例法、機械装置は定額法または定率法 |
1 |
合計 |
38 |
IFRS適用企業における減価償却方法の変更(定率法から定額法)のタイミングは次のとおりです。
定率法から定額法へ減価償却方法の変更タイミング別企業数
変更タイミング |
企業数 |
IFRS適用年度 |
20 |
IFRS適用直前年度 |
8 |
IFRS移行日の前年度 |
3 |
それ以前 |
5 |
その他 |
2 |
合計 |
38 |
IFRS適用年度に定率法から定額法へ減価償却方法を変更した業種別企業数
業種 |
企業数 |
卸売業 |
4 |
医薬品 |
4 |
電気機器 |
2 |
情報・通信業 |
2 |
サービス業 |
2 |
ガラス・土石製品 |
0 |
証券・商品先物取引業 |
2 |
小売業 |
1 |
その他 |
3 |
合計 |
20 |
(注)IFRS、および日本基準または米国基準の有価証券報告書の開示文言上、定率法から定額法への変更事実が明確に判明するに企業に限定。(IFRS適用前の会計基準では「主として定額法」であったものが、IFRSでは「定額法」というように、単に「主として」の文言記載がなくなったものは、上記集計企業数から除外。)
また、残りの18社(38社中)は、開示上、IFRS適用前の会計基準(日本基準または米国基準)でもIFRS適用時と類似する減価償却方法を採用していることがうかがえます。さらに、18社のうち16社はIFRS適用前に(すなわち日本基準または米国基準において)減価償却方法の変更(定率法から定額法への変更)の開示を行っています。
上記の結果から、大部分のIFRS適用企業(約9割:36社/38社中)は、IFRS適用年度もしくはそれ以前に、定率法から定額法へ減価償却方法が変更されています。
減価償却方法の変更に関して、IFRS適用企業の初度適用時における開示上の取り扱いをまとめました。
IFRS初度適用の調整表の注記にて、「減価償却方法の変更・見直し」に関する記載がある企業
業種 |
企業数 |
卸売業 |
0 |
医薬品 |
6 |
電気機器 |
2 |
情報・通信業 |
4 |
サービス業 |
2 |
ガラス・土石製品 |
0 |
証券・商品先物取引業 |
2 |
小売業 |
1 |
その他 |
2 |
合計 |
19 |
減価償却方法の変更・見直しの時期 |
企業数 |
IFRS適用年度から定額法を採用 |
14 |
IFRS適用年度より前に定額法へ変更 |
5 |
合計 |
19 |
(注)調査対象となる母集団は、初度適用に該当しない日本電波工業およびトーセイの2社を除いた36社。
上記調査の結果、IFRS適用企業のうち19社(初度適用該当企業36社中)が、IFRS初度適用の調整表の注記にて、減価償却方法の変更・見直しを会計基準間差異として開示していました。
(a)「IFRS適用年度」から定額法を採用し、かつ、IFRS初度適用の調整表の開示を行っている企業(14社)
「IFRS適用年度」から定額法を採用し、かつ、その内容をIFRS初度適用の調整表の注記として開示を行っている企業は14社ありました。
初度適用の調整上の注記としては、「IFRS適用に伴い、減価償却方法の見直しを行っている」、「日本基準において有形固定資産の減価償却方法について、主として定率法を採用していたが、IFRSでは定額法を採用している」等の内容を記載し、減価償却方法の変更・見直しが会計基準間差異に該当することを説明しています。
(例:武田薬品工業、ヤフー、アンリツ、ディー・エヌ・エー、すかいらーく 等)。
(b)「IFRS適用年度より前」に定率法から定額法へ変更し、かつ、IFRS初度適用の調整表の開示を行っている企業(5社)
この場合の初度適用の調整表上の注記内容も、上記(a)と類似した内容の記載となっています。
例えば、アステラス製薬やセイコーエプソンの場合は、IFRS適用前年度に変更しているため、その影響がIFRS移行時点でも減価償却方法の会計基準間差異に重要性があることから開示していると推察されます(アステラス製薬/移行日:2012年4月1日、定額法への変更時期:2013年3月期第1四半期、IFRS適用年度:2014年3月期末、セイコーエプソン/移行日:2012年4月1日、定額法への変更時期:2014年3月期第1四半期、IFRS適用年度:2015年3月期第1四半期)。
また、エーザイのように、IFRS初度適用の調整表の注記にて「日本基準においては、有形固定資産の減価償却方法として定額法を採用しておりますが、2008年3月31日に終了する連結会計年度までは当社および国内連結子会社は主に定率法を採用しておりました。IFRSにおいては当初取得時から定額法を採用しております。」と、IFRS適用に当たって定額法を遡及適用している旨の開示をしている事例もあります。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。