
IFRSを開示で読み解く(第44回) IFRS第16号の適用から見る日本の新リース基準の財務的な影響
ASBJは、日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、2023年5月2日付で新リース会計基準案を公表しました。過去のIFRS16適用時の影響から現行日本基準を適用している企業が新リース会計基準案を適用した際の財務的な影響を考察します。
2015-03-16
あらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
2014年7月に国際会計基準審議会(IASB)は、国際会計基準(IAS)第39号のガイダンスを置き換える国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」の完全版を公表しました。IFRS第9号は下記【表1】の段階を経て最終化されましたが、2009年、2010年ならびに2013年公表のIFRS第9号の早期適用が、その適用開始日が2015年2月1日より前であることを条件に容認されています。早期適用した場合は、2018年1月1日までは完成版を適用する必要はありません。よって、下記のとおり、完全版の強制適用日である2018年1月1日までは、IFRS適用企業間で異なる会計基準に準拠して財務報告が行われる状況が継続します。
IAS第39号、IFRS第9号(2009年版、2010年版、2013年版ならびに2014年版)
【表1】IFRS第9号最終化までの経緯
公表日 |
主な内容 |
強制適用日 |
2009年 |
金融資産の分類および測定に係るガイダンスの改訂
IFRS第9号
|
2015年1月1日以後開始する事業年度(完全版の公表により削除) |
2010年 |
金融負債の分類および測定
|
2015年1月1日以後開始する事業年度(完全版の公表により削除) |
2013年 |
ヘッジ会計適用の要求事項を緩和
|
強制適用日は設定しない |
2014年 |
金融資産の分類および測定に関する規定を修正
減損の適用モデルの変更
|
2018年1月1日以後開始する事業年度 |
以下では、日本におけるIFRS適用企業38社(2015年1月31日現在)のIFRS第9号早期適用状況を示しています。
【表2】IFRS第9号の早期適用(2009年度版、2010年度版)の業種別企業数(単位:社)
業種 |
IAS第39号 |
IFRS第9号 |
合計 |
ガラス・土石製品 |
1 |
1 |
2 |
サービス業 |
2 |
2 |
4 |
医薬品 |
5 |
2 |
7 |
卸売業 |
0 |
7 |
7 |
化学 |
0 |
1 |
1 |
小売業 |
2 |
0 |
2 |
証券・商品先物取引業 |
1 |
1 |
2 |
情報・通信業 |
2 |
2 |
4 |
食料品 |
0 |
1 |
1 |
精密機器 |
1 |
0 |
1 |
電気機器 |
3 |
2 |
5 |
不動産業 |
1 |
0 |
1 |
輸送用機器 |
0 |
1 |
1 |
合計 |
18 |
20 |
38 |
【表2】から以下の3点が読み取れます。
なお、現状(2015年1月31日)において、「卸売業」の1社(3月決算)が2013年版のIFRS第9号(ヘッジ会計)を早期適用している旨が四半期報告書にて開示されています。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。
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