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2015-10-19
PwCあらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
鳥生 哲也
借入コストに関する日本基準とIFRSの取り扱いの相違をまとめると以下の表に集約されます。
日本基準 |
IFRS |
原則として、借入コストは費用処理する。自家建設の固定資産、不動産開発事業支出金について支払利子の資産計上が容認されている。 |
適格資産の取得、建設または生産を直接の発生原因とする借入コストは、当該資産の取得原価の一部として資産計上する。 |
IFRS(国際財務報告基準)において借入コストはIAS第23号「借入コスト」で、一定の資産(適格資産)の取得、建設又は生産に関連する借入コストを当該資産の取得原価の一部として資産計上することを要求しています。日本基準においては、資産の取得にかかわる借入コストであっても原則費用処理する必要があります。ただし、固定資産を自家建設した場合には、建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、これを取得原価に算入することが例外的に認められています(連続意見書第三)。また不動産開発事業の支出金にかかる支払利子については、一定の要件のもと支払利息を原価に算入することが容認されています(業種別監査研究部会「不動産開発事業を行う場合の支払利子の監査上の取り扱いについて」)。
多くの企業は借入などの資金調達によって適格資産を取得している場合が多いため、IAS第23号は重要な基準となります。
以下、日本における下記IFRS適用企業60社(2015年8月7日時点)を調査対象として、借入コストの資産化についての事例を分析しました。
(企業数)
業種 |
企業数 |
借入コストについて |
借入コストについて |
製造業 |
33 |
18 |
15 |
商業 |
11 |
6 |
5 |
運輸・情報通信業 |
6 |
1 |
5 |
サービス業 |
5 |
0 |
5 |
金融・保険業 |
4 |
0 |
4 |
不動産業 |
1 |
1 |
0 |
合計 |
60 |
26 |
34 |
開示上で借入コストについて明確に記載している企業は60社中26社と半数弱となります。
記載内容の例示としては大きく2つの記載方法に分類されます。
記載例1 数値の記載を伴わない記載例
意図した使用または販売が可能となるまでに相当の期間を必要とするような資産に関して、その資産の取得、建設または製造に直接起因する借入費用は、当該資産の取得原価の一部として資産化しております。その他の借入費用は全て、発生した期間に純損益として認識しております。
記載例2 数値の記載を伴う記載例
借入費用は、重要性のある有形固定資産の建設プロジェクトに関して、資産の建設期間にかかる、当社グループの追加借入利息について資産化されます。資産化された借入費用は、関連する資産の経済的耐用年数にわたって減価償却されます。
当連結会計年度(2015年3月期)の機械装置・車両運搬具・器具工具備品の増加に含まれる借入費用の金額はXXX百万円(前連結会計年度(2014年3月期)XXX百万円)であります。当連結会計年度において資産化された借入費用にかかる平均利率はX.XX%(同X.XX%)であります。
IAS第23号は取得原価で測定された有形固定資産および投資不動産に対しては強制適用されるものの、公正価値で測定される有形固定資産および投資不動産に対してはIAS第23号の適用は任意となります。そこでIFRS適用企業の中から、有形固定資産および投資不動産に関して公正価値モデル(ないし再評価モデル)を採用している企業について見てみます。
(企業数)
業種 |
企業数 |
原価モデル |
公正価値モデル |
一部公正価値 |
製造業 |
33 |
26 |
0 |
7 |
商業 |
11 |
4 |
0 |
7 |
運輸・情報通信業 |
6 |
4 |
0 |
2 |
サービス業 |
5 |
4 |
0 |
1 |
金融・保険業 |
4 |
3 |
0 |
1 |
不動産業 |
1 |
1 |
0 |
0 |
合計 |
60 |
42 |
0 |
18 |
60社中、全ての有形固定資産および投資不動産に対して公正価値モデル(ないし再評価モデル)を採用した企業は0社になりますが、一部に対して公正価値モデルを採用した企業が18社となります。
企業がIFRSの初度適用を行う場合のために、借入コストの資産化に関する免除規定が設けられています。初度適用企業は、資産化の開始日が、2009年1月1日またはIFRS移行日のいずれか遅い方の日以降となる適格資産にかかる借入コストから資産化を行うことが認められており、遡及適用を行わないことが可能となっています。
そこで初度適用の状況を見てみます。
(企業数)
業種 |
企業数 |
免除規定を |
製造業 |
33 |
4 |
商業 |
11 |
1 |
運輸・情報通信業 |
6 |
0 |
サービス業 |
5 |
0 |
金融・保険業 |
4 |
0 |
不動産業 |
1 |
0 |
合計 |
60 |
5 |
60社中5社が、借入コストの免除規定を採用した旨を記載しています。
当社グループは移行日以降に建設を開始した適格資産について借入費用を資産化しております。また、移行日より前に開始した建設プロジェクトに対する借入費用については、選択適用が可能であるIFRS第1号の免除規定を採用し、費用処理を継続しております。
借入コストに関しては以下の開示が求められています。
そこでIFRS適用企業60社について上記(1)、(2)の開示の状況についても見てみます。
(企業数)
業種 |
企業数 |
借入コストの金額・ |
製造業 |
33 |
2 |
商業 |
11 |
0 |
運輸・情報通信業 |
6 |
1 |
サービス業 |
5 |
0 |
金融・保険業 |
4 |
0 |
不動産業 |
1 |
0 |
合計 |
60 |
3 |
借入コストの金額・借入コストの算定に使用した資産化率について数値で開示している会社は60社中3社と少ないですが、重要性の観点から資産化率を開示していない例もあります。
借入費用の資産化に際しては、有形固定資産の取得に個別に紐つく借入がある場合には、当該借入についての借入費用を資産化しています。また、一般目的の借入で有形固定資産を取得した場合には、借入費用をその取得に使用した範囲で資産化しています。前連結会計年度および当連結会計年度において資産化された借入費用に重要性はありません。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。