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2016-01-20
PwCあらた監査法人
今回は、IFRS適用に際して日本基準との差異が連結の範囲に与える影響を、IFRS適用済企業の開示内容から分析します。
IFRS第10号「連結財務諸表」では、一部の例外を除き親会社に連結財務諸表の作成を要求しており、投資先を連結しなければならないかどうかの識別には支配についての原則を適用しています。日本基準も支配力の概念に基づき連結の範囲を決定する点では考え方のベースに差異はありませんが、IFRSにおいては潜在的議決権の考慮が明記されている点、ないしは、日本基準においては支配が一時的であると認められる子会社の場合や利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れのある子会社の場合の例外規定が存在する点、などが連結の範囲に差異を生じさせうると考えられています。
それでは実際にIFRSを適用した日本企業が移行初年度に開示した有価証券報告書の内容から、当該基準差異が与えたと考えられる影響を分析します。
企業内容等の開示に関する内閣府令は、提出会社の関係会社について、親会社、子会社、関連会社およびその他の関係会社に分けて、その名称、住所、資本金または出資金、主要な事業の内容、議決権に対する提出会社の所有割合および提出会社と関係会社との関係内容を記載することを求めています。一方で、重要性の乏しい関係会社については、その社数のみの記載に留めることを容認しています。
関係会社の状況にて開示された子会社数の変動は下表の傾向があります。
子会社数の変動 |
企業数(全58社) |
増加 |
37社 |
変動なし |
5社 |
減少 |
16社 |
また、持分法適用会社の記載社数を比較すると下表となります。
持分法適用会社数の変動 |
企業数(全58社) |
増加 |
22社 |
変動なし |
15社 |
減少 |
10社 |
N/A |
11社 |
上表はあくまでIFRS移行年度と直前年度の比較であり該当年度の投資変動等は加味していないため、基準差異に起因する変動のみを正確に示すものではありません。しかしながら連結子会社および持分法適用会社がともに増加した企業が多い傾向から考えると、基準差異の内容から推察されるとおりIFRS適用により連結の範囲が広がった企業が多いことが推察されます。
また、連結の範囲に関する経理の状況上での記載方法について、下表のとおり分類しました。
経理の状況の記載方法 |
企業数 |
関係会社の状況と同一内容での記載 |
3社 |
重要な子会社等の別掲分のみ記載 |
24社 |
関係会社の状況を参照の旨記載/記載なし |
31社 |
当該記載については各社それぞれの要因を加味して開示の内容、範囲、方法等を決定しているものと考えますが、半数超の企業が関係会社の状況と同様の内容を再度記載していないことが分かりました。それら企業の中にはIFRS開示初年度に記載方法を変更した企業もあり、IFRS導入に際して開示情報の重複や開示間の整合といった実務負担をあらためて考慮していることも推察されます。負担増のみにフォーカスしないIFRS適用の在り方を考えるティップになるかもしれません。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。