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2016-02-08
PwCあらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
髙田 武司
今回は、国際財務報告基準(以下、「IFRS」)を適用し、有価証券報告書を開示する企業が、適用初年度に決算短信に適用する基準について分析していきます。
有価証券上場規程(東京証券取引所)第404条において、「上場企業は、事業年度若しくは連結会計年度に係る決算の内容が定まった場合は、決算短信により、直ちにその内容を開示しなければならない」と規定されています。
決算内容の具体的な開示時期について、決算短信作成要領(東京証券取引所)では、遅くとも決算期末後45日以内に決算短信を公表すること、また、IFRSよりも先に移行前の基準(日本基準、米国基準)で決算内容が確定した場合は、移行前の基準で決算短信を公表し、その後IFRSの決算内容が確定後速やかにIFRSによる決算短信を開示することが要請されています。
IFRS適用企業の中で、適用初年度に決算期末後45日以内にIFRSによる決算が確定できない、また、IFRSによる決算内容よりも先に移行前の基準で決算内容が確定していたなどの状況により、上記関連規程および作成要領に従い、一度移行前の基準で決算短信を公表(以下、「初回公表」という)し、その後IFRSで決算短信を追加として開示する企業が存在します。
下記(1)では、IFRS適用企業68社(2015年12月24日現在)のうち、IFRSに基づいて作成した有価証券報告書を提出済みの企業58社(IFRSを適用した後に上場した企業2社を除く)を対象とし、IFRS適用初年度における初回公表の決算短信に適用した基準について、分析していきます。また、(2)では、期末に移行前の基準で一度決算短信を公表し、その後IFRSで決算短信を開示している企業(27社)を対象に、初回公表日からIFRSによる決算短信公表日までの日数について分析していきます。
2015年12月24日現在IFRSで作成した有価証券報告書を提出した企業58社が、初回公表の決算短信に適用している基準の内訳は下記【表1】のとおりです。移行前の基準による決算短信の初回公表を選択した企業は、27社(日本基準18社、米国基準9社)あり、対象企業全体(58社)の約47%を占めています。また、当該27社の全ての企業は、その後IFRSによる決算短信を開示しています。
【表1】決算短信(初回公表)に適用した基準別企業数
適用基準 |
企業数 |
IFRS |
31 |
日本基準 |
18 |
米国基準 |
9 |
合計 |
58 |
次に決算短信適用基準ごとに業種別企業数について分析します(下記【表2】)。初回公表に日本基準を適用した企業18社の中では、「輸送用機器」5社、「電気機器」3社、「卸売業」3社が多い業種と言えます。そのうち「輸送用機器」5社、「電気機器」3社は、全て2015年3月期よりIFRSを適用した企業で、「輸送用機器」、「電気機器」で企業数が増加していると言えます。また、初回公表に米国基準を適用した企業としては、「卸売業」が5社となります。
【表2】業種別企業数
業種 |
日本基準適用 |
米国基準適用 |
IFRS適用 |
合計 |
輸送用機器 |
5 |
1 |
1 |
7 |
卸売業 |
3 |
5 |
- |
8 |
電気機器 |
3 |
2 |
4 |
9 |
機械 |
2 |
- |
- |
2 |
医薬品 |
1 |
- |
7 |
8 |
鉄鋼 |
1 |
- |
- |
1 |
陸運業 |
1 |
- |
- |
1 |
化学 |
1 |
- |
1 |
2 |
その他金融業 |
1 |
- |
1 |
2 |
小売業 |
- |
- |
2 |
2 |
サービス業 |
- |
- |
4 |
4 |
情報・通信業 |
- |
1 |
4 |
5 |
証券、商品先物取引業 |
- |
- |
2 |
2 |
不動産業 |
- |
- |
1 |
1 |
ガラス・土石製品 |
- |
- |
2 |
2 |
食料品 |
- |
- |
1 |
1 |
精密機器 |
- |
- |
1 |
1 |
合計 |
18 |
9 |
31 |
58 |
IFRS移行前の基準により決算短信を初回公表した企業が、何日後にIFRSによる決算短信を開示しているのかを初回公表適用基準別、業種別に見ていきます。
初回決算適用基準別の分析(下記【表3】)からは、「期末後初回短信公表日までの日数」に日本基準適用企業、米国基準適用企業間で0.3日と大きな差異はありませんが、「初回短信公表日からIFRS短信公表日までの日数」については、米国基準適用企業が日本基準適用企業と比較すると7.3日、日数を多く要する傾向にあると言えます。
また、業種別の分析(下記【表4】)からは、業種別で顕著な差異は見られませんが、卸売業(8社)の「期末後IFRS短信公表日までの日数」が、90.4日と他の業種、全体平均(86.8日)と比較するとやや日数を要する傾向にあることが読み取れます。
【表3】初回決算適用基準別の日数分析
初回決算適用基準 |
期末後初回短信 |
初回短信公表日から |
期末後IFRS短信 |
日本基準(18社)(1) |
35.0日 |
49.3日 |
84.3日 |
米国基準(9社)(2) |
35.3日 |
56.6日 |
91.9日 |
日数差異(2)-(1) |
0.3日 |
7.3日 |
7.6日 |
【表4】業種別の日数分析
業種 |
期末後初回短信 |
初回短信公表日から |
期末後IFRS短信 |
卸売業(8社) |
36.0日 |
54.4日 |
90.4日 |
輸送用機器(6社) |
29.3日 |
55.7日 |
85.0日 |
電気機器(5社) |
36.2日 |
49.6日 |
85.8日 |
機械(2社) |
34.0日 |
53.0日 |
87.0日 |
その他(6社)※ |
39.2日 |
45.7日 |
84.9日 |
全体平均(27社) |
35.1日 |
51.7日 |
86.8日 |
※1社のみの業種は、その他にまとめました。
また、最後に初回公表の決算短信に移行前の基準を適用した27社が、何日後にIFRSによる決算短信を開示しているのかを適用期別にまとめました(下記【表5】)。適用期別に見ると2013年からIFRS適用企業数が大きく増加しています(2013年:10社、2014年:12社、2015年:30社)が、2013年から2015年にかけて「初回短信公表日からIFRS短信公表日までの日数」が、2013年が64.5日、2014年が52.0日、2015年が50.6日と徐々に短縮していることが分かります。
【表5】適用期別の日数分析
適用期 |
短信IFRS |
初回短信 |
期末後初回 |
初回短信公表 |
期末後IFRS |
2010年3月期 |
1社 |
- |
- |
- |
- |
2011年3月期 |
1社 |
1社 |
39.0日 |
46.0日 |
85.0日 |
2012年3/12月期 |
3社 |
- |
- |
- |
- |
2013年3/11/12月期 |
8社 |
2社 |
43.0日 |
64.5日 |
107.5日 |
2014年3/8月期 |
6社 |
6社 |
34.0日 |
52.0日 |
86.0日 |
2015年3月期 |
12社 |
18社 |
34.4日 |
50.6日 |
85.0日 |
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。