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2016-06-01
PwCあらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
福島 幸恵
今回は耐用年数を確定できない無形資産に関する事例を分析します。
耐用年数を確定できない無形資産に関する日本基準とIFRS(国際財務報告基準)の取り扱いの主な相違は以下の通りです。
項目 |
日本基準 |
IFRS |
識別と償却 |
耐用年数を確定できない無形資産の概念はない。 |
耐用年数を確定できるか否かを判断し、耐用年数を確定できないと判断した無形資産は償却しない。 |
減損テストの頻度 |
耐用年数を確定できない無形資産の概念はない。 |
耐用年数を確定できない無形資産は、減損の兆候の有無にかかわらず、毎期減損テストを実施しなければならない。 |
耐用年数を確定できない無形資産に関する開示についても、日本基準上は耐用年数を確定できない無形資産という概念が存在しないため特別な規定が存在しません。一方IFRSではIAS第38号「無形資産」において、耐用年数を確定できない無形資産の帳簿価額や耐用年数を確定できないという判定の根拠となる理由などの開示が要求されています。
そこで、IFRSでの有価証券報告書公表企業62社(2016年2月末現在)を調査対象として、耐用年数を確定できない無形資産の事例を分析しました。
業種 |
耐用年数を確定できない無形資産の帳簿価額を開示している企業数 |
耐用年数を確定できない無形資産の帳簿価額を開示していない企業数 |
合計 |
卸売業 |
4 |
4 |
8 |
情報・通信業 |
2 |
3 |
5 |
電気機器 |
1 |
8 |
9 |
サービス業 |
1 |
5 |
6 |
小売業 |
1 |
2 |
3 |
証券、商品先物取引業 |
1 |
1 |
2 |
ガラス・土石製品 |
1 |
1 |
2 |
鉄鋼 |
1 |
‐ |
1 |
その他 |
‐ |
26 |
26 |
合計 |
12 |
50 |
62 |
耐用年数を確定できない無形資産を保有していることを、期末の帳簿価額を開示することにより明確に記載している企業は62社中12社であり、全体の約2割を占めています。また、当該資産を保有している企業を業種別に見ると総合商社を中心とする「卸売業」が最も多くなっています。
以下では、耐用年数を確定できない無形資産の帳簿価額を開示している企業の開示内容について、(1)耐用年数を確定できない無形資産の主な内容、(2)耐用年数を確定できないという判定の根拠となる主な理由、(3)耐用年数を確定できない無形資産の総資産に占める割合、について分析を行いました。
業種 |
主な種類 |
開示企業数 |
||
商標権やブランド |
取引所会員権 |
営業権や借地権 |
||
卸売業 |
3 |
‐ |
1 |
4 |
証券、商品先物取引業 |
‐ |
1 |
‐ |
1 |
サービス業 |
1 |
‐ |
‐ |
1 |
ガラス・土石製品 |
1 |
‐ |
‐ |
1 |
情報・通信業 |
2 |
‐ |
‐ |
2 |
小売業 |
1 |
‐ |
‐ |
1 |
電気機器 |
1 |
‐ |
‐ |
1 |
鉄鋼 |
1 |
‐ |
‐ |
1 |
合計 |
10 |
1 |
1 |
12 |
耐用年数を確定できない無形資産として最も多く開示されていたものは、商標権やブランドであり、全体の約8割を占めています。
耐用年数を確定できないという判定の根拠 |
商標権や |
取引所 |
営業権や |
開示企業数合計 |
(1) 事業が継続する限り基本的に存続する |
8 |
1 |
‐ |
9 |
(2) 上記(1)以外の理由を記載している |
2 |
‐ |
1 |
3 |
合計 |
10 |
1 |
1 |
12 |
耐用年数を確定できないという判定の根拠となる理由の開示で最も多かった内容は、事業が継続する限り基本的に存続する(永続的にキャッシュ・フローを創出する)ことのみを理由として開示するものでした。それ以外の開示例としては、最低限ないし少額のコストで無形資産の価値を維持できることや、経営陣が予見可能な将来にわたって無形資産の活用を計画していることを単独または併せて理由として開示しているケースがありました。このことから、事業が継続する限り無形資産も存続すると考える理由や背景についてまで踏み込んだ開示は少数派であり、定型的な表現を使った簡潔な開示が主流になっていると考えられます。
耐用年数を確定できない無形資産の残高が総資産に占める割合(*) |
開示企業数 |
0% |
5 |
1% |
3 |
2% |
1 |
4% |
1 |
5% |
1 |
24% |
1 |
合計 |
12 |
(*)小数点以下は四捨五入
耐用年数を確定できない無形資産の残高が総資産に占める割合が1%に満たない場合であっても開示している企業は5社存在し、全体の4割近くを占めています。このことから、企業は金額的重要性が無いことを理由にIAS第38号の開示要求を一律省略することはしていないと考えられます。
耐用年数を確定できない無形資産の残高が総資産に占める割合が24%と高い比率である企業は1社存在します。当該企業は情報・通信業に属する企業であり、事業が継続する限り法的に継続使用できること(基本的に存続すること)のみならず、最低限のコストで無形資産の価値を維持できること等も理由とし、耐用年数を確定できない無形資産として商標権などを計上しています。耐用年数を確定できない無形資産は償却されないため、その残高が巨額であるほど耐用年数を確定できない理由を具体的に開示することを意識した対応と考えられます。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。