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2020-05-21
2020年5月21日
PwCあらた有限責任監査法人
財務報告アドバイザリー部
本村 憲二
IFRS第16号「リース」(以下、IFRS16)が2019年1月1日以後開始の年次報告期間から強制適用されました。IFRS16は、従来のIAS第17号「リース」(以下、IAS17)を置き換える基準であり、IFRS16の適用による最大の変更点は、借手の会計処理といえます。従来のIAS17では、借手のリースをファイナンス・リース(オンバランス)とオペレーティング・リース(オフバランス)に分類し、それぞれ会計処理していましたが、IFRS16では、そのような分類を行わずに原則として全てのリース契約について使用権資産とリース負債を財政状態計算書に認識することが求められます。そのため、特に、IAS17でオペレーティング・リースに分類していたリース契約について、資産および負債の計上額が大きく増加する結果となり、財政状態計算書において大きな影響が生じることとなります。
また、IFRS16はリースについて会計処理を変更するとともに、借手については、リースが借手の財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を提供するために、貸手についてはリースの残存価値リスクなどリスク・エクスポージャーに関する開示を改善するために、借手・貸手の双方の表示・開示の要求事項が拡充されています。(リースに関する表示・開示の詳細に関して、借手についてはIFRS16第47項から第60項、貸手については同第88項から第97項を参照)。
今回は、IFRS16の適用により大きな影響を受ける借手のリースに関する表示・開示に着目し、IFRS16適用後の2019年12月期の有価証券報告書を提出している会社のうち、2019年12月末時点の使用権資産の計上額が100億円以上の会社25社を対象として、各社の会計方針の選択などによりその表示・開示が異なる以下の3点について調査を行いました。
1.財政状態計算書における使用権資産・リース負債の表示
2.短期リース・原資産が少額のリースの免除規定の適用
3.リース負債の満期分析
IFRS16は、借手の財政状態計算書において使用権資産およびリース負債を区分表示する、またはどの表示項目に含まれているかを注記することにより区分表示しない、のいずれかを選択できる規定となっています(IFRS16 第47項)。各社の当該科目の表示は、表1のとおりです。
表1から、使用権資産およびリース負債を区分表示しないことを選択している会社の方が多数であることが分かります。
なお、IFRS16では、使用権資産についてIAS第16号「有形固定資産」(以下、IAS16)第73項で開示が要求されている期首および期末の帳簿価額の調整表(以下、増減表)の開示は要求されていません。しかし、財政状態計算書において使用権資産を有形固定資産に含めて区分表示していない上記18社のうち、8社は、有形固定資産注記の増減表において使用権資産を他の有形固定資産と区分して開示し、当該8社以外の会社も、有形固定資産注記の増減表に使用権資産を含めている旨の開示を行っています。
また、財政状態計算書に使用権資産を区分表示している7社についても、使用権資産についてIAS16の増減表の形式の開示を行っている会社もあり、財政状態計算書において使用権資産を区分表示しているかどうかにかかわらず、各社が使用権資産の増減表を開示できる体制を構築していると考えられます。
IFRS16は、原則として借手のリースを全てオンバランスすることを要求していますが、借手は、短期リース(リース期間が12カ月以内のリース)または原資産が少額であるリース(少額の目安は新品時の価額が5千米ドル以下)についてオンバランスせずに、リース料をリース期間にわたり費用として認識することができる免除規定があります(IFRS16第6項、BC100項)。ただし、この免除規定を適用した場合には、当該免除規定を適用している旨、および当該オンバランス対象外のリースに係る費用を短期リース・原資産が少額であるリースごとに開示することを要求しています(IFRS16第53項、第60項)。
当該免除規定適用に関する各社の開示は、表2のとおりです。
表2から、多くの会社が短期リースおよび原資産が少額であるリースに関して、免除規定を適用していることが分かります。また、短期・少額ともに免除規定を適用している旨を開示している上記22社の多くは、短期リースに係る費用と原資産が少額であるリースに係る費用をそれぞれ区分して開示しており、オンバランス対象外であっても短期リースと原資産が少額であるリースに係る費用を区分して集計できる仕組みを構築していると考えられます。
表3のとおり、財政状態計算書に計上される借手のリース負債の満期分析の開示について、従前の基準では要求事項に開示すべき年限が含まれていました。一方でIFRS16においては、IFRS第7号「金融商品:開示」第39項および年限の例示がある同号第B11項を参照するものの、要求事項に開示すべき年限は含まれていません。そのため、どのような年限で開示するかは各社の判断に委ねられています。
各社のリース負債の満期分析の年限は、表4のとおりです。
表4から、従来の基準と同一の年限を開示している会社よりも、1年超から5年以内を各年別に開示している会社の方が多く、開示がより詳細になっていることが分かります。この点、IFRS16では貸手のリース料債権の満期分析として、第94項で「少なくとも今後5年間については各年度の金額、残りの年数に関してはその合計金額で示さなければならない」と規定しているため、当該開示要求をリース負債の満期分析で参照したとも考えられます。また、多くの会社は5年超の期間をまとめて開示していますが、5年超から20年以内の返済額について5年ごとに開示している会社もあり、従来よりも各社のリース取引の実態に合った開示がなされていると考えられます。
以上、IFRS16適用後のリースに関する年度の表示・開示の一部を分析しました。上記のとおり、IFRS16ではリースに関する表示・開示の拡充が要求され、表示・開示をどのように行うかについての検討、および追加的に開示が求められることになった定量・定性情報の収集体制の構築が必要になると考えられます。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。