
カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスの出会い
マーケットでの競争が激化するなか、成功しているビジネスリーダーは、価値の創出には体験から得られるリターンが不可欠であると認識しています。本レポートでは、顧客と従業員の体験に焦点を当てて企業がとるべき対応策を解説するとともに、日本企業に向けた示唆を紹介します。
2021-07-30
自社の人工知能(AI)プロジェクトの成果発表で「70%の予測精度」と報告を受けたとする。この数値どう捉えるだろうか。「70%正解」と「30%不正解」の2つの考え方があるが、日本では後者に注目する企業が少なくない。しかし、AI活用で利益をあげている企業は前者に着目している。精度が完璧でなくても、AIを活用しない場合と比較して精度が上がっている事実に注目するのだ。
例えば購入見込み客を70%の精度で判定できるAIを考えてみる。AIがないと見込み客がわからず、網羅的に営業しなければならない。一方、精度が完璧でなくてもAIで見込み客の一部でもわかれば、営業効率を上げられる。1回あたりは小さな効果でも累積することで大きな差となり得る。
逆に予測精度が高くても、実用に耐えないこともある。例えば、1000個に1個の割合で不良品が生じる製造ラインで不良品を判定するAIを考えてみる。どんな部品も良品と判定するでたらめなAIを開発しても精度は99.9%となってしまう。1個の不良品を見逃しても残る999個は良品のため、計算上の精度はこの値になるのだ。
こうした例からわかるように、AIの精度に対して正しい評価をし、ビジネスで効果的に活用するには、数値の大小だけに捉われず適切な指標を理解し、用途における数字の意味を踏まえた判断が重要となる。当然のようにも聞こえるが、実際は絶対的な数値が高くないと評価されない向きもある。個別の事情もあるが、2つの大きな傾向がみられる。
1つ目はAIに対する期待が高すぎる点である。人間ではなくわざわざAIに予測させるのだから、高水準な精度でほぼ確実に当てることを期待してしまう。
2つ目は日本企業の「腹落ち」を重視し、リスク回避を優先する文化が影響していることだ。AIの予測結果に説明を強く求める風潮も少なからずここに起因している。もちろん活用する用途によっては説明が重要なこともある。だが、最近のAIは予測結果の理由を説明するのが難しい場合があり、全てにおいて過度に説明性・信頼性を要求すれば、AIの適用可能性を大幅に狭めてしまう。
こうした事態を避けるには、AIへの過度な期待、リスクや腹落ちを重視する風潮を変えなくてはならない。それは現場の取り組みだけでは無理で、新しい企業文化を経営層自らが作り上げていくことが重要になるだろう。
AIの精度(正解率)どこに着目? |
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「70%の正解」に着目すると |
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「30%の不正解」に着目すると |
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藤田 和聖
マネージャー, PwCコンサルティング合同会社
※本稿は、日経産業新聞2021年3月25日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
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※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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