
カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスの出会い
マーケットでの競争が激化するなか、成功しているビジネスリーダーは、価値の創出には体験から得られるリターンが不可欠であると認識しています。本レポートでは、顧客と従業員の体験に焦点を当てて企業がとるべき対応策を解説するとともに、日本企業に向けた示唆を紹介します。
2021-08-01
日本は人工知能(AI)後進国なのではないかと危惧する声は多い。AI開発の投資額や基礎研究も米国や中国に比べると見劣りし、人材も不足している。しかし日本には、AI活用において競争優位に立てる可能性がある。
日本企業の強みの一つとして、現場主義がある。特に製造現場では生産性を高めるための熟練工のノウハウが蓄積され企業を支えてきた。実はこのノウハウが、AI活用において重要な情報なのだ。
現状、匠(たくみ)の技は暗黙知として継承され、データ化されていないことが多い。局所的なノウハウに特化し、組織全体に生かすような取り組みがなされていないことが往々に見られる。
しかし、AIは過去の複数のデータから共通する特徴や関連性を見つけ、普遍的な法則を導き出せる。匠によって蓄積された大量データを学習することで複雑に絡み合っている事象間のパターンを導出・再現できる。これにより一部の人間・組織にのみ蓄積されていた膨大なノウハウが、短い期間でAIによって再現され、集合知化できる可能性がある。
AIが効果を発揮するにはデータの「量」と「質」が重要だが、質の高いノウハウは日本の現場に大量に眠っているはずである。まさにAIにとって宝の山だ。
AIで具体的にできることは何であろうか。1つ目は、匠の技を再現して業務に組み込むことで、AIをさらに磨きあげ、様々な領域で生産性向上に寄与することだろう。2つ目は、他業務への応用や国際展開の可能性だ。匠の技は言語の壁もあり海外展開が難しかったが、AI化されることで他の業務やグローバル展開も容易になることが見込まれる。
AIに匠のノウハウを学習させるには、匠からデータを収集する仕組みと、それを蓄積するデータ基盤を整えることが必要だ。最終的に集合知とし、全社的に活用することを想定すると、一部門だけでなく経営層が主導し、全社横断で活用可能なデータ基盤を構築し、管理・活用できる体制、仕組みを整えることが求められる。
少子高齢化で現場の匠は次々と引退しており、残された時間は少ない。「現場実績のデータ化」「データ学習による匠ノウハウのAI化」「全社横断データ基盤の構築と整備」。技を伝承し、AIの活用で日本が優位に立つためにも、この3点を経営層のリーダーシップの下、早急に進めることが日本企業の喫緊の課題だ。
※本稿は、日経産業新聞2021年3月29日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
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