
カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスの出会い
マーケットでの競争が激化するなか、成功しているビジネスリーダーは、価値の創出には体験から得られるリターンが不可欠であると認識しています。本レポートでは、顧客と従業員の体験に焦点を当てて企業がとるべき対応策を解説するとともに、日本企業に向けた示唆を紹介します。
2021-08-08
日本の製造現場はマスカスタマイゼーションやコネクテッド化などを背景に仕様や検査項目が増加し、生産工程の複雑性が増している。しかし、それを解決する人工知能(AI)などを活用した生産・工程管理システムの拡張・再構築を目指す「スマート工場化」は進んでいるとはいえない。
なぜなのか。まずIT(情報)部門と生産現場とのコミュニケーションの希薄さがある。また、現場がAIなどを特別なもの、現場で扱えないものと誤って認識していることもある。
ではどうすればよいのか。まずやってみて成功体験を積むことである。AIに代表されるテクノロジーは様々な形でパッケージ化されており、意外と簡単に利用できる。AI導入を目的とするのではなく、従来の品質管理手法の新しいツールの一つのように積極的に活用していくべきだ。
日本の工場のスマート化はどう進めたらよいのだろうか。まずデジタル化には4段階があることを認識すべきだ。「レベル1=QCD(品質・コスト・納期)の結果の見える化」「レベル2=QCD+4M(人・設備・材料・方法)による原因の見える化」「レベル3=QCDの予知・予測」「レベル4=デジタルツイン(サイバー空間内での実世界の再現)による企業内最適化」の4段階だ。AI活用によりそれぞれのレベルを効率化しつつ高精度に実現できる。
レベル1と2では、今まで収集が困難だったデータをAIを活用した画像処理などにより非常に簡単に素早く収集することが可能となった。人は五感で集める情報のうち87%を視覚が占めると言われており、AIの発達で視覚情報のデータ化が可能になってきたことは非常に大きい。
レベル3と4は、レベル1と2の取り組みで集めたビッグデータに対し、AIによる網羅的かつ多角的な分析が可能となった。人の知見の及ばない領域に対してもデータからの示唆を引き出すことができる。これを人が立てた仮説と整合しながら分析を繰り返すことで現場・現物・現実の三現主義を拡張する武器になるだろう。
闇雲なデジタル活用やプラットフォーム構築ではなく、結果と原因がひもづいたデータ化の活用が重要であり、ビッグデータ・AIと人が共存する世界を構築する必要がある。AIは人と対立するのではないことを理解してほしい。日本の工場現場には他国にはないノウハウの蓄積がある。そのデジタル化のスピードアップが、競争力強化の源になるのである。
そして、最後に忘れてならない最も大切なことが、この連載の目的の一つでもある経営層の認識の変革である。日本ではスマート工場化を1980年代のカイゼン活動と同レベルでしか認識していない経営陣がまだまだ多い。この取り組みは現場に丸投げして済む話ではなく、開発、設計、生産、サプライ、物流、販売、顧客の全てに関係し、その横串を通すのは経営層にしかできない。経営ビジョンの高度なシステム化がデジタル変革の根幹だと認識すべきである。
1.品質・コスト・納期(QCD)による結果の見える化=日本のレベル |
2.QCD+人・設備・材料・方法(4M)による原因の見える化 |
3.QCDの予知・予測=ドイツのレベル |
4.デジタルツインによる企業内最適化=目指すべき姿 |
※本稿は、日経産業新聞2021年4月7日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
※本記事は、日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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