独立企業原則との整合性を求める新たな移転価格ルールを公表(ブラジル)

2023-04-10

2022年12月29日、ブラジル政府は、OECD移転価格ガイドラインに基づき、独立企業原則(ALP)との整合性を求める暫定措置(MP)1.152/22を公表した(なお、ブラジルはOECD未加盟)。本MPは、連邦法の効力を持ち、直ちに発効する。効力を維持するためには、公表日から60日以内に議会が本MPを批准し、一般法に置き換える必要がある(議会休会期間を差し引くと、当初の期限は2023年4月)。この期限は、さらに60日間(2023年6月まで)延長できる。

本MPは、ブラジルの移転価格制度の全面的な見直しを意味し、2024年1月1日から納税者に義務付けられる予定である(納税者は、2023年1月1日から遡及して新ルールを適用できる)。本MPは、ブラジル税務当局が2022年2月から9月にかけて実施した公開協議で公表した条項に沿っており、納税者からのフィードバック等を反映している。本新法は広範であるが、ほとんどが原則ベースのものであり、連邦歳入庁(Receita Federal do Brasil:RFB)が公表する規則に実質的な権限を委任している。本規定は、OECD移転価格ガイドラインの一般的な規定に従ったものである(移転価格算定方法について、利益法(取引単位営業利益法(TNMM)や利益分割法)なども可能になるほか、ロイヤルティーも移転価格税制の対象に加わる、など)。詳細は規則で具体化されるが、ブラジル特有の取扱いが含まれる可能性がある(関連者について、(支配ではなく)影響力の観点から経済アプローチで判定(国際基準より広範)、軽課税国(法人税率17%(従前20%)未満)の居住事業体や優遇税制の恩典を受ける事業体との取引を含める、など)。なお、受領国側で軽課税制度の恩典を受ける場合のロイヤルティーやサービスの控除を制限する特定の租税回避防止規定(SAAR)(注)など、特定の論点や条項については、今後公表される規則を待つことになる。また、ブラジルの新法人税制が、米国の外国税額控除(FTC)規則が参照する独立企業原則に準拠しているとみなされるかどうか(すなわち、ブラジルの法人関係税(IRPJおよびCSLL)が、米国FTCの対象になるか)も論点となる可能性がある。

(注) 軽課税や優遇税制の基準に加え、関連者への二重非課税となる支払いも新たな基準に加わる。米国のFDII(国外源泉無形資産関連所得)制度が優遇税制とみなされるか、また二重非課税になる他のケースなど、現時点では明確でない。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修