2022年度連邦予算案(カナダ)

2022-07-07

2022年4月7日、クリスティア・フリーランド副首相兼財務大臣は、政府の予算案を公表した。法人税率の変更はない。本予算案には、以下の法人および国際税務の提案が含まれる。

  • 銀行、生命保険会社およびこれらの関連金融機関(所得税法[ITA]パートVI)グループに対する1回限りの15%の新税(CRD: Canada Recovery Dividend)を公表(2021年終了課税年度の法人課税所得に基づき計算。グループメンバー間で10億カナダドルの課税所得免除を割り当て可。2022課税年度に適用、5年均等払い)。同グループに対する追加の1.5%の税も提案(CRDと同一課税ベース。グループメンバー間で1億カナダドルの課税所得免除を割り当て可。2022年4月7日後終了課税年度に適用(2022年4月7日を含む課税年度は日割り計算))
  • CCPC(最終的にカナダ居住個人が支配権を有する非上場企業)のステータスを利用したとみられるタックスプランニングに対処するため、実質的なCCPC(非居住者および公開企業が、その株式の取得権を保有)によって稼得・分配される投資所得に係る課税について、CCPCの課税規定(投資所得に38⅔%の連邦税、分配時30⅔%還付など)に合わせる改正を提案(原則、2022年4月7日以後終了課税年度に適用)。CCPC(および実質的CCPC)の被支配外国関連会社(CFA)の投資所得に係る国外発生財産所得(FAPI)につき、外国税額控除を制限(控除額: FAPI外税×4(法人の係数)→1.9(個人の係数)に合わせる)。CCPC(および実質的CCPC)の投資所得に係る個人・法人税の統合(法人に最高統合個人所得税率で課税、個人株主に資本配当勘定(CDA)から非課税配当)も提案(2022年4月7日以後開始課税年度に適用)
  • 生命保険会社のミニマム税に係る改正 - IFRS第17号(保険契約)への移行による課税ベース浸食を回避するため、契約上のサービスマージン(CSM)およびその他の包括利益の累計額をミニマム課税ベースに包含等
  • 金融機関グループ内等における特定のアグレッシブなタックスプランニング取決めへの対応(一定のヘッジ・空売りを伴う人為的な受取配当控除の否認、および配当補償支払いの全額控除)(2022年4月7日以後の支払い/未払い配当・配当補償支払いに適用(同日前の関連取決めは、2022年9月後に適用))。また、アグレッシブな租税回避を制限するため、タックスヘイブンの企業ストラクチャーを使用する連邦規制金融機関に対し、金融取引承認プロセスの変更を検討)
  • 一般的租税回避防止規定(GAAR)を改正し、未だ税計算に関連していない税属性にも適用(従前の連邦控訴審判決を転換)(2022年4月7日以後の取引および決定通知に適用)。また、GAARのコンサルテーションを2022年夏まで実施、2022年末前までに法案化見込み
  • 大規模な多国籍企業にグローバルミニマム税(第2の柱)を導入するOECDモデルルールのカナダでの実施に関するパブリックコンサルテーションを公表(期限:2022年7月7日)。所得合算ルール(IIR)、および国内ミニマムトップアップ税を2023年(適用時期未定)、軽課税利得ルール(UTPR)を2024年以後導入予定(実施法案もコンサルテーションのために公表予定)。一方、第1の柱は、多国間合意を受け、国内法導入予定(2024年1月1日までに発効しない場合、デジタルサービス税(DST)を2022年1月1日に遡及適用)

以上のほか、デジタルエコノミープラットフォームの売り手に関する税務情報の交換(OECDモデルルールの実施)、ストリップス債に係る利子源泉税(税率軽減となる取決めについて、元本・利札の分離がなかったものとみなす)改正もある。

なお、政府公表予定のハイブリッドミスマッチ防止規定案について、本予算案では、法案(第一段階は、2022年7月1日発効予定)に関するアップデート(実施時期)は示されていない(注)。

(注) 2022年4月29日、政府(財務省)は、ハイブリッドミスマッチ取決めの租税回避スキームに対処するための法案を公表した。本法案は、OECD/G20 BEPSプロジェクト行動2の報告書の勧告を実施することを目的としている。なお、これらのルールで控除否認となる支払利子を源泉税目的で配当とみなす、また、みなし利子控除などの取決めにこのルールを適用するといった、カナダ特有の項目もある。2022年6月30日まで、コメントを募集している。今回は、本報告書の第1章(ハイブリッド金融商品ルール)と第2章(金融商品の税務上の取扱いに関する特定勧告)を実施するものであり、一般的にハイブリッド金融商品を対象としている(二重非課税に対処)。これらの提案は、2022年7月1日から適用される。残る勧告の実施に係る法案(カナダに関連する範囲で)は、後日、利害関係者のコメントのために公表され、2023年以後に適用見込みである。

出典:Government of Canada website / PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年6月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修