第2の柱の法令案を公表(スイス)

2022-11-10

2022年8月17日、スイス連邦議会は、スイスにおける第2の柱の実施に係る重要な側面を規定する法令に関するパブリックコンサルテーションを開始した(2022年11月17日まで意見募集)。

要旨

  • 本法令案は、2024年1月1日からの移行期間中での、スイスにおける第2の柱の導入の主要な側面を規定している。OECD準拠のGloBEルール(すなわち、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)、所得合算ルール(IIR)および軽課税支払ルール(UTPR))を導入予定である。
  • 本法令案には、GloBEモデルルールとそのコメンタリー、それに続く実施フレームワークへの直接の言及が含まれている。さらに、グループの様々なスイス法人/支店(異なるカントンに所在する場合も含む)へのトップアップ税額の配分を扱うなど、スイス固有の規則が追加されている。
  • 本法令案は2022年11月17日まで意見公募が行われており、今後修正の可能性がある。
  • 本法令案は、スイス連邦議会が公表すると見込まれる法令案の第一弾である。第二弾では、本法令案より詳細になることが見込まれており、手続き面を扱うことになる。第二弾では、トップアップ税額を課すカントン、トップアップ税額の納税が求められる事業体、スイス連邦税務当局による監督などの側面を含むことになろう。
  • 本法令案の発効日は2024年1月1日とされている。しかし、本法令案では、国際的に実施が遅れた場合、スイス連邦議会にその実施日を延期する裁量権を与えている(注)。

その他の検討事項

  • 全体として、第2の柱に関連する実施課題に取り組むスイスのアプローチは、モデルルールおよび関連するコメンタリーとの整合性を確保することである(スイスのルールがOECDに準拠しており、国際的に受け入れられることを納税者に示す)。
  • スイスのQDMTTは、最終親事業体(UPE)の年間売上高が7億5千万ユーロ以上の場合、スイスの税務上の居住者である法人や支店に適用される。しかし、国外UPEの国・地域が、第2の柱の適用閾値を低く設定している場合、当該国・地域のUPEが最終的に保有するスイスの事業体に係るスイスのQDMTTにも、その低い閾値が適用されよう。
  • グループが様々なカントンにスイスの税務上の居住者である法人や支店を持つ場合、QDMTTからの税収は因果関係の原則(causality principle)に従ってそれらの事業体間で配分される(トップアップ税額に「貢献」した特定の法人/支店に配分)。
  • IIRは、スイス国外の税務上居住者である法人および支店の株主/本店がスイスのUPEまたはスイスの中間親事業体(IPE)で国外UPEの年間売上高が7億5千万ユーロ以上である場合に適用される。IIRはGloBEルールに従って、それぞれスイスのUPE/IPEに配分されよう。
  • スイスは、軽課税の子会社/支店を持つグループに対して、当該グループにスイスの税務上の居住者である法人または支店があり、当該軽課税所得がIIRの適用対象でない場合に限り、UTPRを適用する。複数のスイス法人/支店がある場合、GloBEルールに準じた配分方法でUTPRが配分されよう。
  • スイスは、国際的な活動の初期段階にある法人に対して、最大5年間UTPRを免除することを計画している(GloBEモデルルールで予定・定義の通り)。ただし、スイスがいわゆる基準国・地域(Reference Jurisdiction)として認定されるような場合、つまり、スイスの税務上の居住者である法人/支店が、グループが最初にGloBEルールの適用範囲となる事業年度において、グループが活動する他の国・地域と比較して、合算ベースで最も高い有形資産価値を有する場合、この免除は適用されない。
  • UTPRを含む全てのGloBEルールは、2024年1月1日から実施される予定である(QDMTT/IIRとUTPR間での実施に遅れは生じない)。

(注)2022年8月15日、香港の金融サービス・財務局(FSTB)は、様々な利害関係者に向けた文書を公表し、GloBEルールの実施を2024年に延期することを示唆した。香港税制の競争力保持の観点から、特に、IIRの実施は早くて2024年(当初計画では2023年にIIR実施)に延期、UTPRとQDMTTの実施時期は「他国・地域を参考に検討・決定する」としている。また、FSTBは、政府が2022年末までにパブリックコンサルテーション(公開協議)を開始する意向を示している。その際、「OECD実施フレームワークの恩恵を受けることができる」とした。(Source: PwC, Latest digital tax byte)

出典:PwC Switzerland website
「月刊 国際税務」2022年10月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修